"U-35" 35歳以下の若手建築家による建築の展覧会2020

19. 10月 2020
All photos by Neoplus Sixten Inc.

10月16日から開催の「35歳以下の若手建築家による建築の展覧会2020」。これからの活躍が期待される若手建築家に発表の機会を与え、日本の建築の可能性を提示し、建築文化の今と未来を知る舞台。(10月26日まで)
Under 35 Architects exhibition 2020

会場は大阪駅前・うめきたシップホール2階。
公募と、選考委員による推薦、前年度のゴールドメダル授賞者1組、隔年で伊東賞受賞者1組の、計7組が出展。審査によりGold Medal賞 、伊東豊雄によるToyo Ito Prize(伊東賞)が選ばれる。
Gold Medal
2020の出展者は、秋吉浩気/VUILD、松井さやか/SAYAKA MATSUI ARCHITECTS、神谷勇机+石川翔一/1-1Architects、山道拓人+千葉元生+西川日満里/ツバメアーキテクツ、
葛島隆之/葛島隆之建築設計事務所、山田紗子/山田紗子建築設計事務所、和田徹/Atelier Toru Wada の7組だ。
松井さやか/SAYAKA MATSUI ARCHITECTS
〈digging〉
親族の暮らす谷戸の敷地に、増築のかたちで建てる自邸の計画。
鎌倉特有の山(崖)に囲まれた荒々しい敷地。まずその荒々しさに負けない、力強い建築であるべきだと考えている。
母屋に接続しながら、1.2mの段差をもつエリアを利用する。検討を進めるうちに3つの重要な視点が見えてきた。まず地形を見る視点、(崖地に)必要不可欠である擁壁をどう立てるかという視点、そしてどう住むか・何を足すかという視点。それらの視点の重なり方を理解し、考えを巡らすことで、機能だけで生まれた住宅とは違う、用途に囚われない場がたくさんある、豊かな環境をもった住宅ができるのではと期待している。
松井さやかさん。
神谷勇机+石川翔一/1-1Architects
3作品を出展しており、それぞれ「慣習から建築を考える」というテーマで設計を進めている。世の中には、いつの間にか我々を縛っている慣習があると考え、それを少し変えてあげることで、より良いものがうまれるのではという提案。
〈HC3 – Harare Child Care Center〉
神谷さんが2014年から2年間、青年海外協力隊として暮らしていたジンバブエで生まれたプロジェクト。2000年代にハイパーインフレに襲われた同国では、一度自国通貨が崩壊したため、人々は今もお金に対して信用がなく、貯金をするという概念がない。そのため現金を価値の変わりにくいレンガや石鹸、布などのモノにすぐに交換し、貯蓄するという。
街中至る所に貯蓄のために無造作に山積みされるレンガ(重くかさばるので盗まれない)を、貯蓄と実用を兼ねるべく建築化し、孤児のためシェルターとする計画。使用する予定のレンガ3万個を、実際模型でも3万個積み重ねて検討している。
「レンガを貯蓄する」という慣習に着目した。

なお、なぜシェルター建設かというと、ジンバブエでは、親がエイズや犯罪に巻き込まれて死亡するケースが多く、孤児も多い。そのため孤児は親族が引き取らねばならないという法律があるが、必ずしも喜んで孤児を引き取っているわけではなく、そこでは子どもが度々暴力を受けることもあるという。そんな子供たちが一時的に避難できるための施設だ。
ハイパーインフレで生まれた実際の100兆ジンバブエドル。当時0.3円ほどの価値しかなかった。今は使えないが大量にあるのでお土産で買えるそうだ。
〈House NI – 裏とオモテと境界〉
〈House OS – 3つ屋根の下〉
神谷勇机さんと、石川翔一さん。
葛島隆之/葛島隆之建築設計事務所
〈A house〉
市街化調整区域、細長い三角形、かつ行政区域境の敷地に建つ住宅。三角形の左面を境に隣の市になり、用途地域の違いで左側も所有地でありながら建築してはいけない地域。
住宅は敷地なりの緩やかな傾斜を利用しながら、居室部分はフラットに、廊下部分をスロープにして繋ぐ。
奥にある既存建物は親世帯の住居と、施主が受け継いだ歯科医院がある。左の野原を整備し、医院に訪れた方も自由に使えるようにした。
4つの性格の異なる庭を交互に配し、蛇行しながら室内が連続する。庭は外に向かって広がるような角度をつけ、外部を積極的に取り込んでいる。
模型で見えるように、梁が庭の中心から放射状に組まれているのが分かる。梁は現しのため、この梁組により蛇行する一続きの空間を強調でき、庭に向かって意識が向きやすくなる工夫をした。
葛島隆之さん。
山田紗子/山田紗子建築設計事務所
建築作品一つをピックアップしての展示ではなく、「Vernacular」という考え方を展示。
いわゆるヴァナキュラー建築ということではなく、食べ物、踊り、音楽、習慣、衣服などの世界中に散らばるヴァナキュラー(土着文化)をリサーチし抽出した。それを言語化して、自分たちが目の前にしている建築のプロジェクトに投げ込んでみると、その世界観や概念のエキスを引き受けながら、新しいかたちに変わっていくのはないかという試み。
〈house G〉
東京の典型的な旗竿敷地。生活の時間が少しずつ異なる家族、秘密基地のような住宅にして欲しいと依頼。
ここに当てはめたのはアイルランドの "オシーン" という民話で、事が済むと主人公が300歳の老人になる話。このような浦島太郎に似た話は様々な国にあり、私たちの暮らす世界には複数の世界が同時に存在しているのではと思わせる。1つの建築空間にも、少しずつずれた、または切り離された、パラレルワールドを埋め込むことができるのではないだろうか。
各室を外壁と切り離し宙に浮かせ、1階をオープンなプランに。柱、階段、どれを空間の切れ目と認識するかによって形や大きさが自在に変わる。そこにいくつものパラレルワールドが生まれることを想像した。
〈daita2019〉
山田さんの自邸兼オフィス。この住宅を訪れた人が「ポリフォニーだ」と言ったことがきっかけでヴァナキュラーリサーチを始めたそうだ。
あてはめたのがマサイ族の音楽で、これがまさにポリフォニー(各旋律が独立)の形。それぞれの旋律が自由にふるまい、交わり、また変わり続ける音の同時的なあり方がこの住宅にあてはまる。
山田紗子さん。
※10月17日のシンポジウム1にて、2020 Gold Medalを受賞した。
今年の審査委員長である谷尻誠は「未確定な部分の多さ、つまり未知への希望がえるという点から最優秀を選びました。」とコメント
和田徹/Atelier Toru Wada
スイスのバーゼルをベースとする和田さんは、東京生まれで幼少よりスイス育ち。ヘルツォーグ&ドムーロンとニッセン&ウェンツラフで経験を積んだ。建築家であると同時に5ヶ国語と多言語文化での経験を駆使し、「建築×言語」をコンセプトに、建築と人、建築と文化などを繋ぎ、新しい建築の在り方・建築家の働き方を模索している。
図のように建築デザインに留まらず、会場構成、建築ガイド、コーディネート、翻訳、学生支援、利酒などが多様に絡み合いながら活動を展開している。
例えば、SANAAも携わったヴィトラ・キャンパスを日本企業の視察団向けに、コーディネートや、アテンド、ガイドも行う。
書道家の武田双雲のスイスでの個展を、コーディネート、そして会場構成なども行う、日本とヨーロッパの架け橋として活躍。
和田徹さん。
秋吉浩気/VUILD
〈学ぶ、学び舎〉
5軸加工機を用い、CLTの厚板を3次元加工することで生まれる工法を考案。デジタル加工されたCLTを捨て型枠として利用し、その型枠に掘られた葉脈状の溝に最小限のRC梁を打設する工法。
建築の内部には製作に用いた加工機が導入され、時間が経つと同時に建屋が増えていく計画。建築が建築を生み、場と共に学び進化し続ける建築を目指している。
山道拓人+千葉元生+西川日満里/ツバメアーキテクツ
〈下北沢線路街 BONUS TRACK〉
地下化された小田急線の路線跡地に、個人が小商を始めやすい環境を生み出すことで、下北沢の自然発生的な街並みを引き継ぐ新築の商店街をつくる計画。
職住近接、外部空間の活用を目指したこの施設では、パンデミックによる全面閉鎖という形はとらずに店舗ごとの判断で徐々にオープンする事ができた。また散歩がてらに近隣住民がふらっと訪れる光景も度々目にした。パンデミック後には今までの都市空間は見直され転換が迫られる。BONUS TRACKはその転換の方向性の一つとしての可能性を秘めていると考える。
筆者が訪問した初日のイブニングレクチャーには藤本壮介が登壇。日替わりで一つ上の世代が自身の、幼少から大学卒業くらいまでのU-35時代を話す。
藤本さんは北海道の大自然の中で自身の原風景が形作られ、"優秀であった"、少年、青年期を経て、大学卒業後就職せずぶらぶらしながらコンペに出す生活を続けていた話を披露した。
写真は最近家族で訪れた北海道の実家の様子。畑だった土地にお父さんが数十年前に植えた木々が森のようになっている。
審査員の1人である藤本壮介さんと、本展オーガナイザーの平沼孝啓さん。
【35歳以下の若手建築家による建築の展覧会2020】
会期:2020年10月16日~26日、12:00~20:00
入場:最終入場19:30、最終日は16:30最終入場、17:00閉館
入場料:¥1,000
会場:大阪駅・中央北口前 うめきたシップホール
   大阪市北区大深町4-1うめきた広場
詳細:https://u35.aaf.ac/(そのほかイベント多数有)


Posted by Neoplus Sixten Inc.
 

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