大阪中之島美術館

Katsuhiko Endo
6. 12月 2021
All photos Neoplus Sixten Inc.

遠藤克彦建築研究所による「大阪中之島美術館」。2016年〜17年のコンペ(大阪新美術館 公募型設計競技)にて最優秀案選定。シンプルだが存在感のある黒いボリュームに、中は大きくくり抜かれた大空間が広がる。中之島の街と一体となる人と美術が触れあう新しい動線をつくった。[Nakanoshima Museum of Art, Osaka / Endo Architect and Associates] 

再開発が進む中之島の中央よりやや下流側に位置する。1983年の大阪市制100周年記念事業基本構想の一つとして近代美術館建設の構想がスタート。その後、大阪大学医学部跡地であるこの敷地が選定されたが、1996年に埋蔵文化財調査を実施したところ、広島藩蔵屋敷の船入遺構の石垣が確認された。
船入とは屋敷の中に直接船が出入りできる造りで、その歴史を引き継ぎ、人や車が直接建物に引き込まれるような構成で、建物は1階と2階を自由に通行できるパブリックな空間とし、その上に展示室などのボリュームが載るような格好だ。
このカットは東隣のダイビル本館横にある、中之島四季の丘と呼ばれる広場と美術館を直接繋ぐ歩行者デッキから。
最寄り駅である京阪中之島線・渡辺橋駅からは徒歩2〜3分、敷地の北側から。基壇を2階高さまで上げ、河原で自然に生える草木をイメージしたスロープを散策しながらアクセスできるランドスケープは、スタジオテラが担当した。
基壇(2階)へ上がると一面に芝生が広がり、いずれ家族連れがピクニックシートを広げて過ごす姿が見られることだろう。この下は駐車場になっている。取材時既に設置されていたのアートはヤノベケンジの〈SHIP'S CAT (Muse)〉。
建物の1辺は63mで正方形の平面を持つ。2階は軒をぐるりと回したテラスが広がる。建物には決まった正面エントランスというものがなく、1階・2階の複数のエントランスから入館できる。床面右に見えるラインは免震の境。
黒い外壁の拡大。黒い顔料を混入したコンクリートに、岩手産玄昌石の砕石と京都宇治産の砕砂を混ぜ打設した後、深めに(5mm程)洗い出し、その上に顔料混入の含浸シリカコーティングを施したオリジナルのパネル。
光が当たるとキラキラと黒い艶が反射するが、光が当たらない側は真っ黒に見える。約600枚のパネルの “黒” をコントロールするのは非常に困難だったそうだ。
一度1階へ降りて東側エントランスへ。大階段とその手前にスペースが取ってあり、レクチャーやツアーイベントなどに使えるようにした。
エントランスの左右にレストランやショップが入る予定。
中へ入って気づくのが高精度に施工された壁・天井を覆うルーバーだ。
設備や扉、シャッターなど、可能な限り丁寧に納め、その存在が感じられないようにされている。
ルーバーは一般的なMバーをベースにしたルーバーだが、特色のシルバーで製作され、目地部分のストリンガーは赤黄味のあるグレーにすることで、少し温かい雰囲気となっている。
ルーバーの幅は45mmでピッチは17.5mm。この寸法に落ち着くまでに0.25mm刻みで20パターン近くを、全ての壁や天井に当てはめシミュレーションを重ねたという。また他の部材や床のタイルとも合わせるために、ストリンガーの幅は僅か5%以内のサイズ調整で合うように施工するという徹底ぶりだ。
横一面のルーバー。このルーバーによって、非常に高密度な空間を演出している。
大階段の裏は蹴込みの明かりが透過し、照明と意匠を兼ねている。
階段下に置かれているのは藤森泰司さんがデザインしたオリジナルベンチのプロトタイプ。今後オリジナルのソファーやチェアなども館内各所に設置される。
大阪中之島美術館では建物を貫く通路や空間を「パッサージュ」と呼び、そこを横断するように階段やエスカレーターが配置されている。
パッサージュを進むと中央にぽっかりと空いた空間が現れる。柱に巻き付くように浮いているのはチケットカウンター。
ここで見上げると、5層吹き抜けに沿って仕上げられたルーバーによって生み出される光の滝を見ることができる。
モジュール化され、ピッチも目地も全て徹底的にコントロールした成果といえる。
1階には300人収容可能なホールがある。後方の扉は全開にしてパッサージュと連続した使い方ができる。
大階段から2階へ。
2階へ上がると目の前に現れるのが迫力のこの光景。
南側を見る。水平方向の全面開口から明るい外光、4階に穿たれた縦・横の坑から光が静かに差し込むこの大空間は、フリースペースなので誰でも入ることができ、隣の国立国際美術館や大阪市立科学館と動線が連続する予定。
交錯するエスカレーターが大空間をさらに強調する。そして建築関係者なら、設備や点検口、ダクトなどがルーバーによって丁寧に隠蔽されていることに気付くだろう。
これだけ整えると「次から次に気になるところばかり見えて苦労した。」と遠藤さん。
2階南側のエントランスより見る。右手は作品展示やイベントなどを行うことができる多目的スペースとなる。
北側エントランスへ。このあたりにミュージアムショップが置かれる。
北から南へパッサージュを見通す。
1周して大階段へ戻る。1・2階に自由な空間を設け、中之島の地形の一部、回遊動線の一部として存在させている。そして3階より上に四角いボリュームが乗り、そこに開く大きな吹き抜けで人々を招き入れる、そんなイメージだ。
エスカレーターで4階展示室へ。
サイバーな雰囲気のエスカレーターは単なる移動装置ではなく、この建築を水平方向から垂直方向へ空間体験させてくれる。
大谷石の地下採石場、或いはエドゥアルド・チリーダの彫刻を拡大したようなイメージで、外観はシンプルでありながら中は複雑な空間にしたかったそうだ。
明るい4階パッサージュ。ここでも縦横に走る動線が豊かな空間体験を演出してくれる。
先に5階へ。
5階にも南北を貫くパッサージュ。東側に展示室が2つあり、3つに分割して使用することもできる。
天井は2700〜5300ケルビンまで色温度が調整可能な面照明だ。
北側の大開口。大阪の街並みが取り込まれる。
外観でガラス面が建物上部まであるようにするため、背の高い屋上パラペットは内側にセットバックさせたような格好になっている。
5階展示室はオーソドックスなホワイトキューブで天高6m。可動間仕切りで自由にレイアウト変更ができる。
4階へは階段かエレベーターで降りる。
踊り場からは、ある大型作品が見られるそうだ。
西側の大開口。
4階展示室。日本画などの展示に適した室。
4階のもう一つの展示室。大阪ゆかりの前衛美術グループ「具体美術協会」が1960年代に拠点とした「グタイピナコテカ」の内装を思わせる黒い壁の区画も作品展示に活用していく。
そして4階パッサージュに戻る。
パッサージュから吹き抜けを望む。
そもそも美術館にトップライトは不向きと言われているが、この明る過ぎないトップライトは、光源というよりも、空間構成に大きな影響を与えるものとなっている。
4階パッサージュからは2階、1階のパッサージュを重層的に見ることができる。
2本のエスカレーターはそれぞれ上り下り専用。下りの中腹からはこのような眺めとなる。
遠藤克彦さん。「美術館を楽しむというだけでなく、中之島という文化ゾーン、そして都市空間としての体験を楽しむことができる美術館です。」
【大阪中之島美術館】
設計監理:遠藤克彦建築研究所
設計協力:東畑建築事務所
構造設計:佐藤淳構造設計事務所
設備設計:東畑建築事務所
ランドスケープ:スタジオテラ
施工:錢高・大鉄・藤木特定建設工事JV

主要用途:美術館
所在地:大阪府大阪市北区中之島4-3-1
建主:大阪市長

構造:鉄骨造、基礎免震
階数:地上5階建
敷地面積:12,870.54㎡
建築面積:6,680.56㎡
延床面積:20,012.43㎡

公式サイト:nakka-art.jp
大阪中之島美術館開館記念:2022.2.2〜「Hello! Super Collection 超コレクション展 ―99のものがたり―


Posted by NeoplusSixten Inc.
 

このカテゴリ内の他の記事