YMK

Takeshi Hirobe
4. 5月 2023
All photos by Neoplus Sixten Inc.
軽井沢の中でも別荘と本宅が混ざり合う地域。施主は都内のマンション住まいであったがコロナ禍でリモートでも仕事に支障がないことが分かり、ここに移住を決めた。
敷地は西から東に緩やかに傾斜。建物の西側はコンクリート基礎が凍結深度まで掘り下げられており、傾斜に従って東側は高床になっている。
敷地面積は1,800㎡以上ある。前のオーナーが植えたカエデが立派に育っており、それを切り倒してまでフットプリント大きくすることはないだろうと、施主と廣部さんの考えは一致した。そのためデッキを一部カエデに合わせて削ることもしている。
南に向いた大きなドーマー状のボリュームが、寒い冬場に日光を室内の奥まで導くような恰好だ。
玄関を入ると廊下が延び奥に階段が見える。ここでは「狭さ」を感じるが、この先への助走空間となる。
廊下を進むと左右に空間が開けていき、、
80cm上がったところで一気に大空間が現れる。
建物の中央でアイコンとなっているのはトラスに組まれた耐力壁だ。
ハイサイドライトは南向きだけでなく北向きにも設けられ、北側は黒系で空間を大きく二つにゾーニングしている。その他にも多様な開口が設けられ様々に視線が抜けていく。
東から南東方向は小川がつくる谷があり、小川なりに森がずっと続く遠景が望めるため、敷地を訪れた当初からこの位置に大開口があるべきだろうと考えたそうだ。
この開口に向かって、観客席のように段を成すソファーとDKを配置した。
見返して、耐力壁の横はデザイナーのご夫婦の仕事場。下にはビリヤード台のある趣味室が見える。
2階建てを6つのフロアレベルで連続させる構成で、左奥の玄関から①廊下を進み、150cm下がった半地下(1階)に②趣味室、80cm上がって③DK、そこから40cm下がって④リビング。DKから70cm上がって2階となり、⑤仕事場やプライベートルームへの廊下。廊下に面して個室やWIC、廊下の奥でさらに1m上がって⑥水回りと続く。
玄関から浴室まで高低差2.5mを一筆書きでいつの間にか巡っているような感覚だ。
特徴的な耐力壁について。ウッドショック真っ只中の計画で、構造用の流通材の確保が難しい状況だったため、構造にはあまり使わないサイズの材を使うチャレンジをした。見付け寸法60mm、45mm、30mmと細い材で組み上げたが、構造設計の荒木美香さんと、構造として効きながらインテリアとして存在するようなデザインを沢山出しながら、施主も交えて決めていったという。
趣味室へ。
寒冷地である軽井沢では凍結深度まで基礎を掘り下げなくてはならないが、その部分を半地下として活用するために法規で必要とされる以上に掘り下げ、床下に蓄熱層を備え、趣味室のほか、客間、ミニキッチン、トイレが配置される。
右手廊下の下は全て収納になっている。
 
ここにはビリヤード台を置くため柱を立てられない。大スパンとするため、耐力壁と一体となる大きなトラス梁が通っている。
右側はゲストルームとしても使えるよう、引戸で間仕切ることもできる。
最後にこの家の一番高い場所の浴室へ。南と西に開口を設け、十和田石の浴槽に浸かりながら軽井沢の四季を眺められる。

「生活を支えるそれぞれの空間や構成要素は、クライアントとの綿密な積み上げによってつくりあげられました。出来上がった空間をあらためてみていると、ふとご家族のポートレートのように感じる瞬間があります。」と廣部剛司さん。
【YMK】
設計・監理:廣部剛司建築研究所/廣部剛司、牧野里咲
構造設計:荒木美香構造設計事務所
施工:ハピアデザイン

用途:専用住宅
構造規模:木造 地上2階建
敷地面積:1841.74㎡
建築面積:133.43㎡
延床面積:205.53㎡

Posted by Neoplus Sixten Inc.

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