TFM

Makoto Yokomizo
4. 7月 2023
All photos by Neoplus Sixten Inc.
建物名称は「グランデュオ富ヶ谷3」、17住戸からなる賃貸マンション。
敷地は2面接道の傾斜地で、正面ファサードが西向き。様々な大きさ、且つ凹みのあるなしの開口が街に対して単調な表情とならないようにしつつ、内部では性格の異なる住戸デザインがされていることを想像させる。
1階の白く開いている箇所が駐輪場への入り口で(渋谷区の条例で駐輪場は隠蔽しなくてはならない)、1階住戸へもアクセスできるがメインエントランスではない。
北面の左手、ほぼ2階レベルまで上がった所がメインエントランスとなる。
ファサードはエイジングされたような仕上げとなっていて、これは、普通合板型枠で打たれたコンクリートに、フッ素樹脂塗装下地用パテを重ね、その上に黒を少し混ぜたクリアを塗ることでこのようなムラができるそうだ。
素材感の演出であると同時に、つるつるの大きなコンクリートボリュームが、落ち着いた住宅地に立ち現れないような配慮だ。
エントランスへ。内側に中庭が覗く。
外構の植栽はGAヤマザキが担当した。
エントランスの鉄扉をくぐると3層吹き抜けの “コモンスクエア” と呼ぶ中庭が現れる。1階にはさらに坪庭があり、シンボルツリーとして植えたカクレミノが成長してくることで徐々に雰囲気が変わってくるだろう。
アクセントとしてsixinchiのスツールを設置。
当初デベロッパーでは、片廊下に細長い住戸を積み上げるシンプルな形式も想定されていたが、ヨコミゾさんからはコモンスクエアを設けた “ロの字” 形の平面で、開放的な共用部の創出と、殆どの住戸で2方向或いは3方向の開口を設けることができる構成を提案した。
コモンスクエアは建蔽・容積を使い切った上での空間となっている。
まずは1階へ降りようとして目には入った壁の塗り残し。綺麗に、そして整える仕上げだけではなく、こちらの壁や右奥に少し見えるエレベーターの乗り口に見えるように、敢えて塗り残すことで、アイキャッチを作り空間に変化をもたらしている。
こういった仕上げの違い、不揃い、さらにはカモフラージュなど様々な試みが各住戸にも散りばめられている。
101号室。今回各住戸に透明アクリルの引戸で間仕切った小空間をつくり、1Rでありながら1LDKのような、或いは1LDKでありながら2LDKのような使い方ができるようになっている。
不揃いの天井や壁面。上階床スラブは100mmふかし床を張っているが、上下水管等が通る箇所は懐を取っているため下階の天井に100mm下げた状態で現れている。このズレを良しとして意匠化し、家具などの配置を決めていった。また、柱と家具も無理に面を合わせず、ズレを空間の抑揚として利用している。
再び2階へ。
202号室。外観で見えたFIX窓はピクチャーウィンドウとして借景の緑を狙っていた。
周辺は緑が多く、抜けもあるのでなるべく大きな開口を意識したという。
202号室は中央に間仕切りがあり、片側にアクリル引戸スペースが付く部屋。内側はクローゼットでも、ワークスペースとしてでも使い方は自由。そのため空気が回るように一番上にはアクリル板が嵌められていない。
正面の梁や、左の透明引戸上に垂れ壁があるが、実はコンクリートのように見える造作だ。エアコンの配管を隠しつつ手前から延びる梁と連続感を演出し、まるでRCラーメン構造かのように空間を引き締めている。
造作部はコンクリートに見えるよう手描きで型枠の目地まで描かれている。右は本物のコンクリート梁。
「カモフラージュではあるが、配管隠しをこのように別なものに見立てたり、階段室の塗り残しの壁など、ちょっとした不思議さに住む人が気づき、楽しんでもらうのもいいのでは。」とヨコミゾさん。
205号室は1階と2階のメゾネット。メゾネットは2住戸あるが2層吹き抜けはこちらのみ。
玄関から右を見ると個室へ。左手の造り付け家具の足下は開いているので、吹き抜けの上に家具が浮いているような恰好だ。
下は1階だが傾斜地奥のため地下の様相で、キッチン横はドライエリアとなる。キッチンの上は中空のバルコニーになっており、メインエントランスの脇からオートバイなども入れることができる。そしてガラス引戸を開けてキャットウオークを伝って入って来られるというアクロバティックな動線を持つ。
吹き抜け空間に回り階段、久しぶりに新築で見ると新鮮な構成だ。
1階奥は水回りともう一つの個室。南北に19m近くある細長い住戸だが、南北両側にドライエリア、そしてコモンスクエアに穿たれた坪庭にも面しているので、十分な自然光を確保している。
「かつてデザイナーズマンションのはしりの頃に良く見られた、この回り階段と吹き抜けの構成はリーシングに少し不安があった。」と話すヨコミゾさんだが、募集後最初に入居が決まったのがこの住戸だそうだ。
3階へ。
305号室は先の205号室の上にあたり。205号室で調整した天井高がこの段々になって現れている。
少し掘り込まれたような床になるので、それを活かして周囲が居場所や棚になるよう設えた。
細長いプランの住戸がいくつもあるが、それらの住戸では2面以上から採光できるので暗いトンネルのような空間にはならない。
301号室。このFIX窓はかなり象徴的に借景の緑を切り取るフレームに。
見返すと、キッチンをはさんで水回りと個室へ続く。ダークに塗り分けられた面がレイヤー状に重なり、奥行き感を演出している。
水回り前の廊下は広めで、開口も取り居場所になるようにした。
302号室。こちらはアクリル引戸のスペースが完全に振り分けられている。
4階から。屋上に塔屋が突き出しているが、住民の屋上利用は想定されてなくメンテナンス用だそうだ。
401号室。北側斜線を利用したスペースに専用ルーフバルコニーが付く住戸。
アクリル引戸スペースがコア状で回遊式の動線になっており、裏を寝室スペースとしている。
4階の北側に “コモンテラス” を設けた。植栽は重量や動かしやすさの面からバックサックプランターを採用した。
テラスは今後、住人同士で、あるいは住人と管理者で使われ方が模索されていくだろう。
ヨコミゾマコトさんと、担当の伊藤幹さん。
「富ヶ谷の歴史を調べると、敷地周辺は昭和初期には牧場でした。生活様式の西欧化が進み、新鮮な牛乳を都心に供給するための生産地だったのです。その後宅地化が進み、緩やかな傾斜地は、区画も広く緑豊かな邸宅街になりました。そのコンテクストを意識して、高低差や視線の抜けなど周辺との応答関係を探りながら設計を進めました。」とヨコミゾさん。
平面図 >> PDFダウンロード
【TFM】
設計・監理:aat+ヨコミゾマコト建築設計事務所、フェイスネットワーク
構造設計:小西泰孝建築構造設計
設備設計:加藤設備設計事務所
施工:フェイスネットワーク
外構設計 : GAヤマザキ

主要用途:賃貸集合住宅(17戸 28.09 ㎡〜73.18 ㎡)
構造・規模:杭基礎、RC造、地下1階 地上3階 塔屋1階
敷地面積: 409.56 ㎡
建築面積: 316.19 ㎡
延床面積: 967.47㎡

Posted by Neoplus Sixten Inc.

このカテゴリ内の他の記事

ZONE
1 month ago
i-Ap
2 month ago
霰窓の家
2 month ago