花重リノベーション

Yohei Takano + Sachiko Morita
3. 8月 2023
All photos by Neoplus Sixten Inc.
花重(はなじゅう)は台東区の徳川慶喜の墓所などもある谷中霊園の入り口にある老舗花屋。不動産開発や飲食事業を展開する山陽エージェンシーが新しいオーナーとなり、リニューアルの設計をMARUに依頼。谷中の雰囲気をかたち作る建物の一つとして残しながら、カフェ併設の花屋「花重谷中茶屋」として2023年7月22日にオープンした。(取材時はオープン前)
花屋の運営は以前のオーナー家族がそまま引き継ぎ、カフェの運営は新オーナー主導で行う。
店舗建物は登録有形文化財でもあり、保存調査を担当した、たいとう歴史都市研究会によると、建物の一部は江戸時代からあり、昭和までに大きく4段階の増改築を経ているという。
様々な人が関わりながら議論し、文化財としての価値を残しつつ現代の使い方に合わせた保存・改修を進めた。
既存状態の外観。棟や軒が歪んでいるのが分かる。
(photo: MARU。architecture)
花屋スペースのオリジナルは明治10年。増改築の痕跡が残っており、2階は住居でもあった。架構は傷みや、外観からも分かるほど歪みがあったので、ジャッキアップし、痛んだ柱を根継ぎしたり新しい柱を追加などした後、内装をやり替えながらも従前の雰囲気を残した。

そのまま奥はカフェにも通じているが、一度外に出て新たなカフェ動線を辿ってみる。
店舗隣は別棟の作業場兼倉庫であった。この部分は江戸時代の長屋だったそうで、架構も当時の物が残っている。
右手カフェ厨房部分や、左手の壁を耐震壁として一体で補強し、漆喰で仕上げた半屋外のスペースとし、地面には敷地にあった石を使ってコンクリート洗い出しの路地もつくった。
テイクアウトカウンターも設け、街に開き、通りを行く人を迎え入れる構え。
半屋外スペースの門型木架構が、新設の鉄骨架構になってそのまま敷地の奥へ連続し、ひとを誘導するような恰好だ。
右手にカフェのエントランスが見える。
中は2層吹き抜けのイートインスペースとなる。
この棟は大正末期〜昭和初期のもの。
花屋側からカフェを見る。左手がカフェの厨房。
メニューはコーヒーのほか、ラテ、フラッペ、ビール、フレンチトーストやソフトクリームなど。
花屋側から見た工事中の様子。下に花を保管する室があり、今回の改修では上面にガラスを張り中が見えるようにした。
改修後に大きな耐力壁で補強されていることが分かる。
(Photo: MARU。architecture)
内外のシルバーのテーブルは藤森泰司アトリエが担当した。花卉が納まるようにデザインされている。
左手に見える階段で2階へ。
2階はバーカウンターを設け、時間帯によって酒も提供できるようにしている。
木架構はそのままに壁面で補強し、屋根は張り替え、断熱した上で野地板も張り替えた。
工事中の様子。
(Photo: MARU。architecture)
吹き抜けの見下ろし。
外にバルコニー席が見える。
1階から裏庭に出ると立体的なテラスが現れる。
表通りに面した江戸・明治時代の建物から、時代と共に更新されてきた木造が、現代的な鉄骨造として姿へ変え150年の時を繋ぐ。
オーナーはここを街に開かれたパブリック的なスペースとして、地域の人や、学生などが活用していって欲しいと望んでおり、そのため明確にプログラムが分かるような姿にはしなかった。
テラスの辺りに昭和35年の住居棟と、手前に同時期の社員寮の2棟があった。
この鉄骨架構はそれら既存建物の形をトレースした訳ではなく、残された建物をリスペクトしながら現在から未来に向けて形作られた。
昭和35年の二棟が解体された後の様子。
(Photo: MARU。architecture)
鉄骨は屋内の木造よりも細い無垢60角、かつ誤差±0.1mmという高精度の金属加工技術を用いた削り出しの仕口で、ボルト留による軸組とした。木造の軸組から、敷地の奥では最先端の技術で加工された抽象的な軸組によって現代性を表した。
屋内席や半屋外席にあったシルバーのテーブルが外部に飛び出して舞い上がり、バルコニーの床になっているようなイメージ。
中央に見える捻れた鉄パイプは、地面から伸びそのまま手摺りに可変していく。
ランドスケープのコンセプトとして、人の居場所だけでなく、"植物の居場所でもあるように" としていることから、捻れた鉄パイプに植物が絡んで葉を開き、それが日陰を作りまた人の居場所になる。さらに隣接する谷中霊園から鳥もやってくるようになる。そんな、人だけでなく植物や動物にとっても豊かな裏庭になることを期待している。
減築した断面は全面開口に。豊かな裏庭をたっぷりと屋内に還元する。
バルコニー席はカフェがオープンした現在はタープが掛けられている。周囲の木々も徐々に大きくなり木陰も出来てくるだろう。
左から高野洋平さん、森田祥子さん、担当の諸星佑香さん。

「谷中霊園の入り口にある歴史ある老舗の花重さんを未来に繋いでいく、大切な計画に関わらせていただけて、とても光栄です。きっかけは、山陽エージェンシーさんが、上野桜木にある私達の事務所に飛び込みで来てくださったことからでした。この計画では、江戸〜明治〜昭和〜令和と、時代毎の建物が一体的に繋がること、そして、谷中のまちに繋がっていくことを大切に考えました。地域の建築に関わることは、私達にとっても意義深く、今後も谷中エリアのまちづくりに、ずっと携わっていけたらと思います。」と高野さん

「土地に開く。上野桜木でまちに開いた事務所を構えて2年にも満たない頃に始まったこの花重プロジェクトでは、緑多く風情ある街並みや文化を将来へ繋いでいく試みに強く共感し、谷中の環境に溶けていくような場を構想しました。これからの土地の価値は、単に稼げる床の量でなく、空間性によって高まるという花重の道標は、地域のまちづくりを超えて生物多様性を包容するインクルーシブな社会へと向かっています。何よりも訪れる多くの人々にとって、豊かで楽しい場所であることを願っています。」と森田さん
平面図 >>ダウンロード
断面図 >>ダウンロード
【花重リノベーション】
設計・監理:マル・アーキテクチャ/高野洋平、森田祥子、諸星佑香
構造設計:(既存部)川端建築計画
      (新設部)東京藝術大学、テクトニカ
照明設計:加藤久樹デザイン事務所 
家具:藤森泰司アトリエ
外構:SfG landscape architects
施⼯:(既存部)ヤマムラ
   (鉄骨)雄建工業
   (機械加工)紀陽工作所
   (テラス、階段、手すり)ビーファクトリー
   (外構)アゴラ造園
保存:たいとう歴史都市研究会
建築主:山陽エージェンシー

主要用途:花屋、カフェ
所在地:東京都台東区谷中7-5-27
URL:www.instagram.com/hanaju_yanaka_chaya

構造:(既存部)木造+(新設部)鉄骨造
規模:地上2階、一部地下1階、敷地⾯積329.58㎡、建築⾯積134.97㎡、延床⾯積193.11㎡

Posted by Neoplus Sixten Inc.
 

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