ナリワイと住み開きでまちと繋がるアパート

vita passo 楓の樹, 欅の音 terrace

Tsubamesya, Studio DEN-DEN
25. 7月 2022
All photos: Neoplus Sixten Inc.
既存は1989年竣工のRC造の賃貸アパートであった。
(Photo: つばめ舎建築設計)
改修後、バルコニーの腰壁を全て撤去し、前庭を開放しテラスに。そして階段をタスキのように架け、1階から3階までを分かりやすく街に接続させた。
(Photo: Akira Nakamura)
敷地向かいは小学校で登下校の児童が前を通る。改修後子どもたちがすぐ入っきたそうだ。設計側の意図がダイレクトに伝わる表現となっている証だろう。
本件は「ナリ間ノワプロジェクト」と呼ばれ、「ナリワイ」と「暮らし」が一緒にある、かつての日本の町家のような “様式” で、前でナリワイ、後ろで暮らすスタイルを集合住宅で実現し、作り手(売り手)と買い手、地域と人の間をつなげるというプロジェクトの一環だ。
4年前、プロジェクト第1弾の「欅の音 terrace」が隣に稼働しており、既に地域に認知されている。記事の後半で紹介する。
(Photo: Akira Nakamura)
住み手はここを実店舗として何かしらの小商い、住み開きをすることが入居条件だ。
店が持てるのに家賃は近隣相場の賃貸住宅とさほど変わらないのが魅力だが、アパート全体で開催するマルシェに積極的に参加したり、当番制で共用部の掃除や、簡単なメンテなど自治に参加することも求められる。つまりここを全体で盛り上げていくモチベーションが必要なのだ。
(Photo: Akira Nakamura)
12住戸、各50㎡。ファサード側に土間があり、奥或いは横に個室が配されるが、階ごとに土間と個室の比率が異なってくる。
1階は言わば路面店である「しっかりナリワイ」タイプ。店舗となる土間が広い。例えば花屋、パン屋、カフェなどが向いているだろうか。
土間の奥にはラーチ合板で造作されたプライベート空間がある。DIYがOKなので、粗いラーチにすることで比較的気兼ねなく釘などが打てる。
水回り。
そして寝室。
2階へ。各住戸にインターホンが付いている通り、こちらの元バルコニー側が玄関となる。
(Photo: Akira Nakamura)
建物の裏側はほぼ既存まま。本来バルコニーに設置されるエアコンの室外機がこちらの元玄関側で壁付けとなっている。元玄関は勝手口という扱いだ。
奥に見えるのはこのアパートの別棟で、そちらは従来通りの賃貸アパート。
2階「Weekend ナリワイ」タイプ。本業が別にあり週末だけ子どもと一緒に作ったお菓子を売りたい、などといった住人向けだが、もちろん毎日営業しても良い。キッチンは奥に配されたり、このように土間側に出てきたり使い勝手で選ぶことが出来る。
普段は店舗スペースとダイニングが曖昧な使い方になるかもしれない。
個室に開口を設け、お客さんが来たときに分かる。逆に店舗に出ているときに小さな子どもの様子が見えるように配慮した。
同じ2階でも廊下の端側の住戸は、プライベート空間と土間の振り分けプランもある。
2階の反対側の端の住戸はさらにプライベート空間が多い。
使い方は自由だが、多彩なプランで借り手にとって選択肢が多い。
キッチン奥から。
3階へ。階段の傾斜はかなり緩く、ゆったりと上り下りできる。
3階は「ちょこっとナリワイ」タイプ。1階・2階に比べさらにプライベート感を高め、この12号室には引戸の間仕切りが付く。この間仕切りでパブリックとプラベートを調整できる。
自分の仕事や特技、趣味を人とシェアして地域と繋がりたい、といった方におすすめのタイプ。
住宅としても使い勝手が広がりそうだ。
そして隣の「欅の音terrace」。こちらは2018年に完成し、2019年グッドデザイン・ベスト100にも選出された。
(Photo: 井出貴久)
1980年竣工の鉄骨アパートをリノベーションした。
これら老朽化した賃貸アパートは解体され次々と新築されるのが常であるが、ここは駅からさほど近くないこともあり、オーナーは大きな資金を必要とする建て替えはせずに、他と差別化した個性的なアパートによる再生を求めたそうだ。
(Photo: つばめ舎建築設計)
またこの地に長年住んでいるオーナーは、地域に持続的な価値と文化をもたらしたいという思いもあり、昨今の働き方の多様化、副業兼業可能な時代に対応する、住まいながら商いのできる "ナリワイ型賃貸集合住宅" を計画した。
同時に集まって住む価値を再考したときに、住民同士のコミュニケーションが活発となることで防災面からも重要となる住民自治を促すことも要望された。
これらの基本的考えは「楓の樹」と共通だ。
「楓の樹」同様、1階が「しっかりナリワイ」タイプで、2階が「ちょこっとナリワイ」タイプ。いずれの住戸も37㎡ほどで、前側が土間の店舗スペースで、その奥が居室となっている。敷地は第一種低層住居専用地域であるため店舗面積の制限があるそうだ。
現在入居している方のナリワイは自転車屋、カレー屋、カフェ、雑貨屋、こども教室などであるが本業の仕事が別にあるため、主に土日に営業するそうだ。
2階は1階ほどオープンではない「ちょこっとナリワイ」タイプだが、マルシェ開催時は何かしらのかたちで住み開きしてもらうことになっている。
今後は「欅の樹」と合同で益々賑やかになっていくことだろう。
裏は共同菜園もある緑豊かな庭が広がっている。
つばめ舎建築設計 共同代表の永井雅子さん。
「現代は『働く場所』と『住む場所』に二極化されてきましたが、副業や兼業が認められ、そしてコロナ禍によってさらに場のもつ意味合いや使い方を限定しない空間が求められていることを感じ、新しいライフスタイルの一つとしてナリワイ賃貸住宅を考えました。ここは同時にまちに開く、地域とつながれる場所にもなります。特に今回の『vita passo 楓の樹』 は、住宅街にある中で、既成の堅牢な賃貸住宅をいかに開いてまちと繋がれるのか挑戦したリノベーションになります。」
「vita passo 楓の樹」平面図 → PDFダウンロード
【vita passo 楓の樹】
企画+基本設計:つばめ舎建築設計+スタジオ伝伝
設計・監理:つばめ舎建築設計
施工:セキグチホームテック
主要用途:共同住宅 
構造・規模:鉄筋コンクリート造地上3階
工事種別:リノベーション
敷地面積:1412.66 m²
建築面積:546.33 m² (内 200.2 m²) 
延床面積:1410.60 m² (内 600.6 m²)

【欅の音 terrace】
企画+基本設計:つばめ舎建築設計+スタジオ伝伝
設計・監理:つばめ舎建築設計
施工:セキグチホームテック
主要用途:共同住宅 
構造・規模:鉄骨造地上2階
工事種別:リノベーション
敷地面積:674.24 m² 
建築面積:336.19 m² 
延床面積:600.87 m²

Posted by Neoplus Sixten Inc.
 

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