松原市民松原図書館

MARU。 architecture, KONOIKE
17. 3月 2020
All photos by Neoplus Sixten Inc.

高野洋平+森田祥子/MARU。 architecture, 鴻池組による「松原市民松原図書館」。溜め池の一角に浮かぶように建つことで街のシンボルとなりながら、智のシェルターとして市民の財産を守る建ち姿となっている。
[Matsubara City Library, Osaka Japan]

2017年の設計及び施工者選定プロポーザルによって、MARU。 architectureと鴻池組JVが最優秀提案者に選定された。
松原市は文化保全活動が盛んで、多くの図書館を有しいるが、隣地の既存中核図書館の老朽化により、この図書館を新しい中核図書館として整備した。設計にあたって、新図書館は松原市の智の集積拠点として時代を超えて立ち続ける必要があると考え、同じく周辺に点在する古墳のごとく建築を超えた土木的アプローチで、力強く、ある種自然物のように永年を受け止めることができる建築を目指したという。
力強く、塊感のあるボリュームはともすれば周辺に威圧感をもたらしかねないため、上部に向かってテーパーをつけボリューム感を低減。色味も周辺のコンテクストに馴染むよう、ピンク味のある暖色系のコンクリート(色粉混入)を用いた。
色粉を混ぜたコンクリートを用いる場合JISの強度実験が別途必要になるが、今回設計・施工一体だったため、設計と同時に鴻池組で実証実験を行い、確認申請を出すことができ実現した。
当初、市からの設計要綱では溜め池の一部を埋め立てた上で建設するとしていたが、鴻池組の土木サイドでの検討により、埋め立てよりも、一部止水した上で池の底に建てた方がコスト的にも工期的にも有利になるということを提示し、水の中に建つという象徴的デザインが実現した。
建物周囲の水が外部との接触を遮断する “堀” として作用してしまわないように、複数の開口からバルコニーが突き出し、地域への親和性を物理的に表現している。
搬入口とエントランスに対して橋が架かりアプローチとなる。図書館の愛称は「読書の森」だ。
エントランスホール。天井は低めに抑えられ、左にサービスカウンターやバックヤード。右はスロープ。
エントランスホールを進むと一気に気積が大きくなり、一般開架が見渡せる。
書架の並ぶフロアレベルはエントランスホールより1mほど下げることで、見渡すことができたのだ。
見渡せることで、目的の本がどの辺りにあるか視認できる。書架はこの建築を意識した形と存在感にデザインしたそうで、既製の書棚に樹脂モルタルを塗装したコンクリートのような側板を取り付けた。
図書室を奥に進むと天高約7mの吹き抜けが現れた。階段の裏面は発光するように照明デザインがなされ、空間の象徴として効いている。
アングルを変えるとこのようになる。緩急のある天井高と “図書館は整然とすべき” という既成概念を覆すような構成だ。
一見無秩序に見える書架は、手前のエントランスホールから左奥に放射状に並んでいるのが分かる。少しずれることで先に何の書架があるのかが分かりやすい。彷徨うように迷いながら探しているうちに、思いがけない本との出会いが生まれるかも知れない。
また、左奥の開口からは溜め池を通った涼風が、手前上に流れていくのを妨げない為にもこのような書架配置となっている。
奥に進むと水面の揺らぎを透過させる大開口部と対面。
建物の構造は、RCで外壁のみを耐震壁として殻のように造り、スラブは鉄骨造によって大スパンに対応し、RC壁とはピン接合で鉛直荷重のみを支持している。
外観正面から見えた開口の内側はRC建築の力強さを内部に意図的に現している。実際外壁の厚さは600mmから上階でも510mmと物理的にも重厚で、これにより内外の熱を遮断し、断熱材を不要にした内側もコンクリート現しとした。閲覧机の脚も床から立ち上がったRC造だ。
西側に面したこの図書館のアイコンともいえる開口。水面が間近にある閲覧コーナー。ちなみに池は農業用の溜め池で、対岸の隅にオーバーフローが設けられているため、水位はもう20~30cmまでしか上がらない。万が一排水できずに水位が上がっても、桟はグラウンドレベルより上なので浸水することはない。床面と水面が大体同じレベルだ。
スキップフロアで上がった閲覧コーナーも。
水辺の閲覧席はもう一箇所。北側で光が落ち着いているためか人気の席だそうだ。
2階は雑誌や新聞の閲覧スペース。
2階にはスキップしながら3つのフロアがあり、スラブの鉄骨が確認できる。
1階と2階は一つの大きな空間として感じられる構成だ。
外観で見えた開口は、複数のバルコニーを伴い半屋外の居場所をつくっている。殻に包まれた外観に見えたが、中に入ると意外にも外部に連続する場所が幾つもある。
スキップして上がるのはラウンジや自習室。もう一つ右に上がるのは閉架書庫。開架は8万冊だが、閉架に18万冊ある。通常閉架は目に触れない図書館が多いが、ここでは市民の財産を可視化することとした。
3階への階段も建築の一部として外壁と共に力強さを見せている。
2階のスキップフロア。閲覧コーナーと、右手に飲食コーナー、そしてバルコニー。飲食コーナーの上は吹き抜けており、1階を通った溜め池からの涼風をここから3階へ導く。
こちらは整然とした自習室。隣の室と合わせて70席以上ある。
3階へ。
3階児童開架。ワンフロア約900m2に4万冊の児童図書室。フロアの手前は絵本コーナーで、オリジナルの書架は天板に展示ができるようにデザインされている。
一角にはカーペット敷きのくつろぎスペース。左奥は引戸で仕切れる読み聞かせコーナーも。
2階に見えた吹き抜け周りを利用して作った狭いスペースも大切だ。
こちらの書架も建築のように立ち上がるデザイン。奥に向かって少しずつ高くなっている。
こちらの書架は建物自体のデザインを模している。
1階の一般開架同様、抑えた天井から大きな気積へと変化させた。南側(右)から直接光と、北側はハイサイドからの間接光でとても明るい。ハイサイドからは排熱も担う。
南側の開口には卵形の閲覧コーナーが表のバルコニーと連続しており木が植わる。もちろん机はコンクリートで、建築の一部として存在している。
籠もるような閲覧コーナーも用意した。
その先はバルコニー。
保護者向けのコーナー。
屋上。図書館に公園のような屋上は珍しいのではないだろうか。遠くに生駒山の山並みが見える。
森田祥子さんと、高野洋平さん。
「心地良い空気が館内を巡るように流れていき、人も同じように建築を巡るような動線とし、お気に入りの本と居場所を探し、そして見つけてもらえるようにしました。 
今回、設計・施工一体のプロポーザルだったこともあり、施工費用とデザインを同時に提案したプロジェクトで、施工入札がないため事業者選定から2年で竣工しました。設計は鴻池組の設計担当や、施工担当とコストや施工方法について常に相談しながら合理的に進めることで、短い工期に対応しながらプロジェクトを実現しました。設計と施工の新しい協働のかたちを実現できたのではと思います。」
【松原市民松原図書館】
設計・監理 
 建築:MARU。architecture + 鴻池組
 構造:Arup+鴻池組
 設備:Arup+鴻池組
 照明:Arup
 植栽:GA ヤマザキ
 サイン:MARUYAMA DESIGN
 図書:アカデミック・リソース・ガイド 

施工:鴻池組

用途区域:近隣商業地域 
防火地域:準防火地域 
用 途 :図書館 
規 模 :地下 1 階、地上 3 階 
敷地面積:1,643.57 ㎡ 
建築面積:1,043.24 ㎡ 
延床面積:2,987.33 ㎡ 
構 造 :RC造、一部鉄骨造

一般開架: 8万冊 
閉架書庫:18万冊 
児童開架: 4万冊

Posted by Neoplus Sixten Inc.

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