玉造幼稚園

Naoki Hashimoto Architects
1. 11月 2022
All photos by Masao Nishikawa
建物は小高い丘の上にあり、鬱蒼とした森を一部切り開いた敷地。縄文遺跡や古墳時代の周溝などが出土する歴史のある土地だ。
前面道路からは、既存樹を極力保存した荒々しいランドスケープの背後にひっそりとたたずむ幼稚園の姿が見える。
アプローチの階段を登り切ると、特徴的なアーチの造形がこの幼稚園を訪れる人を迎える。
(幼稚園240人、保育園57人を定員とする幼保連携型認定こども園。)
園庭からの全景。当初敷地は森が奥深く広がり畏れを感じるほどであったという。この環境にこどもたちの居場所をつくるため、まず何より守られた場所が必要と考えた。一方でランドスケープとしてうまく環境を制御すれば、周囲の環境は素晴らしい財産でもある。
園から建築について具体的な要望はなかったが、教育方針にとてもこだわりがあったため、実際に設計メンバーも現場の保育を経験したり、園の方針を肌で感じた上で設計に入った。
そこから大きな一枚のスケッチを共有し、基本的な方針を確かめ、敷地の特性を生かした遊具のない園とすることとなった。森の中の木立に向きがないように、森と連続した場所を作りたかったため、向きや表裏のヒエラルキーのない楕円の平面とした。
(Copyright: 橋本尚樹建築設計事務所)
一歩足を踏み入れると、周りの森に対して守られるような安心感を抱かせるアーチのピロティ。
森に開きつつ、森から閉じるという相反する二つを内在した回廊空間を目指した。
1階の教室はアーチ下のピロティに直接接している。
ピロティは周囲の自然環境と程よい距離感を保った一体空間となる。
長期的には木々の中に埋まるように建つことを意識し、巨大なスダジイやケヤキを残したランドスケープ。
竹林もある。
屋外回廊をRC造、屋内は鉄骨造で計画。RCのアーチで地震力を担保することで、屋内の鉄骨は限りなくシンプルに計画することができ、将来の改変も見越して構造から自由なプランニングが可能となる。
園舎内へ。玄関を抜けるとまずはじめに大きな遊戯室が現れる。
天井からスラブを吊る構造とすることで、2階へ続く円弧状の階段や踊り場には柱が存在しない。1階で園児の自由な動きを妨げないようにするためだ。
遊戯室はこの幼稚園の中心的な空間であり、普段の遊びや体育の授業で使用するほか、入学式などの式典やお遊戯会等のイベントスペースとしての利用される。
中心にある遊戯室から園児たちは直接各教室にアクセスする。階段の踊り場をおおらかに広げることで、第二のステージのように使えるように工夫。また総じて廊下のない平面計画とした。
遊戯室には天窓が設けられており、その時々の天気や雲の動きによって明るさが変わり、まるで森の中にいるような場所となっている。
屋外廊下から遊戯室の様子を覗く園児たち。
屋外廊下は園舎の北側に半周掛けられており、避難経路としても機能する。一部西日を避けるためテント膜を張り、大きなロゴとマークが園児を迎える。
アーチによってかたどられた外の風景は各教室によって異なる。
園児たちは授業が終わった後、明るい大きな遊戯室を通って外に飛び出していく。
屋内プールも完備。
明かりがぼんやりと浮かび上がる園舎の夕景。
成田のまちを一望できる場所に建ち、森の木々に覆われるように建つ自然豊かな幼稚園だ。
時間をかけて森に埋もれていくようにと、現況のレベルや樹木を最大限に残しつつ、広大な敷地の地面レベルを詳細にコントロールした。
実は24あるアーチのスパンは均等ではなく、平面計画とすり合わせながら、外観、構造、用途の必要面積など様々な要件を同時に解いていく必要があったという。
橋本尚樹さん。
「はじめてこの森を訪れた時に、あまり感じたことのない畏れのようなものを感じました。ただそれはとても魅力的な森でもありました。この森を極力そのままに、安心して遊び尽くしてほしいと思い、子どもを森から守る囲いのような建築を考えました。囲われているけれども、飛び出したくなるような囲いとは、どんなものか考えました。竣工したばかりの現在はまだランドスケープとの関係が浅く、これから関係が育まれていきます。10年、20年、50年と時間をかけて、建築が工事前のような畏れの森に埋(うず)まるように隠れた時、初めて完成といえるのだと思います。」
【玉造幼稚園】
設計・監理:橋本尚樹建築設計事務所(橋本尚樹, 桑原秀彰, 増崎陽介, 布村恵利子, 鈴木将典)
構造設計:MOF
設備設計:明野設備研究所
ランドスケープ:上條福島都市設計事務所、松崎喬
照明計画・飯塚千恵里照明設計事務所
サイン:JAKUETS、日本デザインセンター三澤デザイン研究室
サイン施工:鎚絵
保育監修:JAKUETS
施工:北野建設
建築主:浅野学園 玉造幼稚園
写真:西川公朗写真事務所
構造:S造+RC造
規模:地上2階建、敷地面積 9436.79 ㎡、建築面積 1372.04 ㎡、延床面積 1863.41 ㎡

玉造幼稚園:tamatsukuri.ed.jp

Posted by Neoplus Sixten Inc.

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