能作文徳+常山未央展:都市菌(としきのこ)― 複数種の網目としての建築」

Fuminori Nosaku + Mio Tsuneyama
21. gennaio 2024
All photos by Neoplus Sixten Inc.
【展覧会コンセプト】

都市菌(としきのこ)― 複数種の網目としての建築

都市は朽ち始めている
生活はインフラとサービスに依存し、自分の力で修復できない
地表は建物とアスファルトに覆われ、呼吸ができない
乾いた土では食べ物は育たず、水は浄化されない
毎日大量のゴミが捨てられる
建物やインフラを新品に保つ力は衰えている
それでも、賞味期限切れの都市の生命活動は続いていく

いま私たちは野生を取り戻さなくてはいけない
土を嗅ぎ
雨を聴き
風を読み
陽を感じ
心地よい居場所をつくれるように
伝統を知り
技術を学び
小さな負荷でここに暮らせるように

私たちは、建築を大きな網目の中で捉えている
建物は、資源から廃棄までの一時的な結節点だ

都市ではゴミも材料になる
アスファルトを剥がせば、土壌が小さな生産地と分解地になる
太陽熱を使えば、調理が台所から飛び出す
建物を持ち上げれば、そこが生き物の棲家となる
そうやって身の回りの資源、太陽、土、ゴミと生活が絡み合い
複数種の居住域が築かれる

菌(きのこ)が腐敗と再生産の網目に生きるように
能作さんと常山さんは、「Urban Wild Ecology」というキーワードの元、都市に野生を取り戻すリサーチを続けており、二人の自宅兼オフィス〈西大井のあな〉では実生活の中で様々なエコロジカルな試みを続け、そこで得られた知見をプロジェクトに反映させ、或いはプロジェクトで得られた新しいアイデアを〈西大井のあな〉にフィードバックさせながら生活・活動している。
本展もエコロジカルな連環の一つとして捉えられており、端材を使い、リユース可能で、会期後そのまま使え、ゴミを出さないような構成となっている。
会場を訪れたらまずこの黄色「物質循環図」を見ていただきたい。
ギャラ間を連環のハブとして、展覧会の後〈西大井のあな〉や〈小さな地球プロジェクト〉などにそのまま利用できるものばかりとなっている。
また本展のための資材も、様々なプロジェクトで出た廃材や、他の展覧会で制作した模型の廃材なども利用している。
〈西大井のあな〉2017〜
3階ギャラリーでは、能作さんと常山さんの自邸兼オフィスの実践記録がメインとなる。
2017年に築30年の鉄骨造4階建て中古住宅を購入し、1階のオフィスと、2階〜4階の住居部を貫通する穴を開け熱が循環する状態をつくった。配線や配管、鉄骨やスラブがむき出しの状態で生活を始めながらオフィスも含め自身たちで少しずつ仕上げ、環境を整えていった。
その過程で、窓があることの素晴らしさ、断熱材があることの大切さなど普段当たり前のことを身をもって体感し、「あな」を通して様々な人や知識と出会い成長していった、建物と彼らの記録となっている。

>> 西大井のあな レポート記事
壁面の左から右に行くに従って現状態への変遷を見ることができる。
例えば、フローリングを張り、断熱をしたり、建物前部のコンクリートを削って土を露出させ畑を作ったりしている。コンクリートで固められた地面の下は微生物が殆どいない乾いた土であったが、今はミミズも住む活きた土へと生まれ変わった。
展示壁は〈西大井のあな〉の断熱に使用したウッドファイバー。
ウッドファイバーが寝室に使われている様子。型落ちした製品、言わば廃棄物を提供してもらい利用している。
天井には2017年からの活動の様子を物語る写真が無数につり下げられている。
裏にはその写真のキャプションが記される。
〈藍染めの便所〉
会期後オフィスの階段下に設置するトイレで、2017年に東京国立近代美術館で開催の展覧会で制作した、〈斎藤助教授の家〉(設計:清家清)の 原寸大模型のフローリングの廃材で作った。
内部は藍染めを施した。
コンポストトイレは〈小さな地球プロジェクト〉で使用予定。
国立近代美術館での〈斎藤助教授の家〉
常山さんの実家で伐採されたサクラを皮付きのまま脚に使ったテーブルは、この後オフィスで利用する。
奥がストックしていた廃材で、欲しい人は会期後に引き取り可能だそうだ。(メールで予約)
〈土と暮らしのアーバニズム〉
反対側の壁面では二人の教育活動を紹介している。都市の土を考え直すことで建築や都市の在り方が変わってくるのではないかということを学生と共に研究している。
建築というのは姿形だけではなく、小さなプロセスや暮らしのアップデートという編み目の中にあることを示している。
中庭は村のような雰囲気だ。
〈書庵〉
都立大学の能作研究室の学生が伝統工法に挑戦。大工の指導を受けながらノミや手鋸を用いて仕口を作り制作した。会期後は千葉県鴨川市の〈小さな地球プロジェクト〉の敷地に移築される。
ポイントはベタ基礎ではなく、石場建てで縁の下の土中環境に配慮した工法で建てることだ。
中は二畳の書斎で手仕事が随所に見られる。
〈発電パーゴラ〉
都市でもエネルギーを生み出すための実践。太陽光発電パネルや蓄電池、雨水タンクを備える。横には菜園もあり、会期後〈西大井のあな〉の屋上に設置される。
他に太陽熱調理器や、堆肥置場、グリーンカーテンも展示されている。
4階キャットウォークには〈インセクトホテル〉
本展設営で生じた廃材で思いつきで作った虫の越冬場所。
4階ギャラリーでは今までの作品を蔵出しのような状態で展示している。
天井にはそのエリアにある作品のテーマが記されている。
壁面も図面や写真資料でびっしり。全て額に入れてあるのは、会期後保管できたり、嫁ぎ先が見付けられるようにという考えで、欲しい方は連絡してもらいたいとのこと。
〈明野の高床〉2021
〈杭とトンガリ〉2022
>> 杭とトンガリ レポート記事
〈秋谷の木組み〉2023
上記3作共に、基礎を工夫して土中環境を豊かにする建ちかたを実践している。
〈高岡のゲストハウス〉2016
〈不動前ハウス〉2013
〈宇宙の卵〉2019
ヴェネチアビエンナーレ国際美術展での会場構成。
右は〈ひもブレース〉
大小様々な模型が整理され展示されているが、単調ではないので楽しめる構成。とても見応えがあるので時間に余裕を持って訪れて欲しい。
能作文徳さんと、常山未央さん
「我々の住む都市には、空き家や、不要な資材が溢れています。建築家はそれらを分解して再構築してく『きのこ』のような存在です。そして複数種の網目とは人間中心主義の社会でなく、色々な生き物、微生物が絡み合う世界。建築はその網目の一部としてもっと寄り添うように関わり生活できないかと考え、実践していることをこの展覧会でまとました。」と話す二人
本展に合わせてTOTO出版から刊行された「アーバン ワイルド エコロジー」
展覧会の内容がより深く解説されて、会場にも何冊か置いてあるので是非手に取っていただきたい。
ブックデザインは背表紙が無い中とじで、紙は新聞紙に近い紙質で雑誌のような仕上がりだ。また「小さな文字がびっしりだと、読む気にならないだろう。」とのことから、できるだけ大きな文字が印刷されている。
【能作文徳+常山未央展:都市菌(としきのこ)― 複数種の網目としての建築】
Fuminori Nousaku + Mio Tsuneyama: URBAN FUNGUS ― Architecture is a Complex Ⅿesh

会期:2024年1月18日~2024年3月24日
開館時間:11:00~18:00
休館日:月曜・祝日
入場:無料
会場:TOTOギャラリー・間(東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂)
主催:TOTOギャラリー・間
詳細:jp.toto.com/gallerma/ex240118/index.htm


Posted by Neoplus Sixten Inc.

Altri articoli in questa categoria