軽井沢の居場所

Takahiro Endo
12. juli 2023
All photos by Neoplus Sixten Inc.
浅間山の麓、雑木林に囲まれた典型的な軽井沢の別荘地で、敷地は約3,000㎡ある。施主は30年以上前からここに別荘を持っていた。
右手に見えるRC造の躯体は既存建物の一部で、その上から左に掛けて木造2階建ての建物が建っていて、施主家族の父母と兄妹3人は毎年夏になるとここで過ごしていた。やがて兄妹は結婚したが、夏ここで過ごすという伝統はその後も継続し、それぞれ子どもも生まれ、今や4家族14人で利用するようになり、老朽化も相まって建替えることとなった。
つまり施主は4家族ということになる。
圧倒的な自然に囲まれた広大な敷地で、4家族14人が過ごす別荘とはどのようものが良いのか、設計の手掛かりを探していた遠藤さんがヒアリングを進めているうち、ある奥さんが「ここに集まるときは合宿のようなもの。」という言葉が一つヒントになったという。
南西方向から。敷地は西(左)から東に傾斜し、東端で小川が流れる浅い谷に落ちていく。と同時に北に1mほどの段差がある。敷地は有り余るほどあるが、既存の平坦面を利用しつつ一部斜面を均した。
既存建物は南向き、つまり今室外機やガスボンベがある面がファサードであったが、今回遠藤さんは90度向きを変え、東西面をファサードとした南北に長い平屋を提案した。
東面。約30mのファサードで、この谷に広がる森を全身で受け止めるのだ。
北の段差に合わせ濡れ縁も落ち込んでいるのが見える。
北側から。浅間山の山麓である軽井沢の別荘地は「傾斜地の森」という条件が非常に多く、高床にして湿気を避けつつ高い位置から森を眺めるというスタイルが多い。しかしこの施主たちはすぐ下に小川があることなどもあり、積極的に「自然の中に出ていくこと」を習慣としている。
先の「合宿のようなもの」と「自然の中に出ていくこと」がキーワードとなり、施主の経験と、地形との関係を建築に落とし込みながら計画した。
そのためこの1mの高低差を解消すべく高床にするのではなく、内外共に段床を成して地形に合わせていく。こうすることで屋内と屋外がどこからでも等価に連続することとなる。
西面は高低差がないので同一レベルの濡れ縁となる。
玄関ホール。天気が悪いときでも使い勝手の良い半屋外空間だ。
上の三角の開口が、離れ側にも向かい合うように開いている。
玄関を入ると通り土間の収納空間があり、それを抜けると大きな空間が現れる。キッチンやダイニングと続き、奥に白い入れ子状の箱があり、その中に3つの寝室が納まる。
4家族は仲がとてもいいが、ときには個の空間が欲しい、しかしいつでもすぐに一緒に繋がれるような空間になったらいい、という思いが形になっている。
4家族で寝室は4つではないのか?と思うが、1家族は前述の離れで就寝する。1家族だけ離れたいわけではなく、1室離れにしておけば将来的に使い勝手が広がるかも知れないからとのことだ。
中央には薪ストーブを前に囲みで座れるリビング。掘込みの縁に見えるコンクリートや濡れ縁などは基礎と一体となっている。「大自然の中にしっかりとした基礎を打ち、それが建物を支えている」というイメージを視覚的に現すことを意識したという。
白い寝室ボリュームも構造壁となっており、登り梁と一体となって水平力を支えている。
LDK空間に独立柱が1本。棟の中心から伸びていてもばつが悪いが、キッチン、ダイニング、リビングをそれとなくゾーニングする位置を狙ったそうだ。座屈止めとしてステンレスロッドが四方を支えている。
当初座屈止めには木の角材で計画していたが、それでは太くて空間の連続性が損なわれるので、構造家と相談しながらステンレスロッドに切り替えた。

遠藤さんから施主たちへは、1/50の模型で説明を続けていたが、遠藤さんが自身の確認のためにと1/20の模型を制作して覗き込んだ際、座屈止めが角材では太すぎることに気付いた。せっかくなのでこの1/20模型を施主たちにも見せたところ、「ああ、こうなっていたのか!」と全体を明確に理解してもらえたそうだ。建築の専門家ではない施主に大きな模型を見せることで急速に理解が深まるというエピソードだ。
柱の中にはステンレスで製作した金物が埋め込まれており、ロッドと接続している。
長さ4.5m、14人掛けのダイニングテーブル。敷地に生えていた栗の木が大きくなりすぎて、もし倒れると家にも被害を及ぼしそうだったのでやむなく切り倒し、せっかくなのでテーブルとして活用するために遠藤さんがデザインした。
暖房はLDスペースに床暖房と、薪ストーブ。それと各寝室に予備でガスヒーターを置いた。施主が正月に数日過ごした際、薪ストーブの熱が寝室のボリュームを包み込むように空気層を作り十分な暖かさが確保され、ガスヒーターを使わないでも済んだそうだ。
「寒冷地対策としても考えた構成が実証された。」と遠藤さん
ちなみに断熱は、屋根と床下にそれぞれネオマフォームのt90とt66、縁側の引き違い戸が樹脂×アルミのハイブリッドサッシュにアルゴンガス封入Low-Eペアガラス。
「家族の場所」と呼ぶ寝室へ。広縁は25cmずつ下がってゆき1mの高低差がある。
1室の広さは10畳ほどで4人分の布団を並べられるサイズ。
収納は押し入れだと湿気が籠もるので、カーテンで覆うだけにした。中板の高さは72cmで机として使うこともできる。
一番下の部屋は中にも段がある。ここはお父さんお母さんの部屋で折りたたみベッドを使っているようだ。
右手の壁にある扉から2階のロフト収納に上がれる。
内外の縁側と連続する森。広縁と濡れ縁だけでも豊かな居場所になるが、段々がさらに居場所に変化を生んでいる。
ロフトから。せっかくなので設計者としてこの眺めが見られる場所を作りたいだろう。玄関ホールに見えた三角の開口は、30m先の離れの端まで見通せるためのものだった。
遠藤隆洋さん。
「一族4家族14人のための別荘建替計画です。施主一族の膨大な経験に応える『居場所』をつくりました。敷地は傾斜がある広大な林の中にあり隣家は見えません。施主はこれら自然を『眺めるもの』ではなく、『自然の中へ出ていくもの』と考えました。また、この地での過ごし方を『合宿のようなもの』と要約しました。たくさんの段差がある平屋、ポスト柱とアルミサッシで構成した長手面、環境装置となる縁側空間、など全て施主の経験に対する応答として設計しました。住宅でも別荘でも合宿所でもない、施主の経験と、自然と向き合う『居場所』の提案です。」
平面図・断面図 >> PDFダウンロード
【軽井沢の居場所】
設計・監理:遠藤隆洋建築設計事務所
構造設計:Graph Studio
照明設計:杉尾篤照明設計事務所
施工:青木屋

用途:別荘
構造規模:木造 地上2階建
敷地面積:2,982.74 ㎡
延床面積:194.35 ㎡

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