Second home in Azabu – A second home between the ordinary and the extraordinary

麻布の別邸

Yukio Asari / Love Architecture
5. september 2020
Photos by Masao Nishikawa, Neoplus Sixten Inc.
浅利さんは今回、建物の外観からインテリア、家具、ファブリックまでをボーダレス且つ等価に扱いデザインすることで新たな環境表現を試みたという。
コンクリート打放しの壁面や金属製の手摺は、まるで布のように密度のある表情。玄関門扉、玄関建具など全てトータルなデザインが施されている。
編み込みバスケットに着想を得てデザインされたバルコニーの手摺り。ステンレスフラットバーを様々な幅にレーザーカットしたものを編み込み、表面を目荒らした上で、フッ素樹脂塗装吹付。その後、更にその表面をブラシ等で荒らして完成。試行錯誤を繰り返して開発したオリジナル素材。
外壁は拡大してみるとこのように。型枠の内側に粗目の角材を不均等に打ち付け、型枠解体後凸面になった部分を研ぎ出し、撥水剤塗布で仕上げた。
玄関ポーチ。バルコニーと同様にステンレスの編み込みで格子状に作られた門扉と、なぐりかんなで表情をつけた玄関扉。
エントランス。右手に大きなシューズクローゼット。奥はガレージに通じ、中央にエレベーターが備わる。まずは2階へ。
2階、パーティースペース。この建物で施主からの要望は「自宅とは別に、自宅にないもの、足りないものをモダンな空間で構成してほしい。」であった。
施主は日頃から世界中を旅し、上質なものや空間に触れているため造詣が深く、要求のレベルは非常に高かったそうだ。その要求に応えるため、浅利さんが解釈するモダンを「徹底的にどこまでできるかチャレンジした」という。そのためインテリアコーディネーターやテキスタイルデザイナー、照明デザイナーなどに頼らず、全て自分でデザインしたそうだ。
南側の壁は巨大な一つの作品のようだ。日中はトップライトより垂直方向の自然光、夕方からはバルコニーの大開口から横方向の自然光、夜には人工の間接光が当たり、時間帯によって刻々と表情を変化させる、光をテクスチャーとセットで美しく映し出す装置のような役割を果たす。
その壁はポーターズペイントと共に試行錯誤しながら開発したオリジナルの左官仕上げで、複雑な工程を経ている。
① プライマー
② 凹凸を付けて下塗り
③ シーラー 
④ ②の凹凸を消すように中塗り 
⑤ ④が半乾きの時に平らになるように上塗り
⑥ ⑤が半乾きの時にコテで押さえ磨く。こての動きは全て縦塗り
ローテーブルに見えるのは囲炉裏で、アルフレックスのGALEが囲む。
十和田石でできた囲炉裏はソファに座りながら炉端焼きができるようにテーブル型とし、排煙装置も付く。
広いスペースはちょっとした演奏会などが開けるようにした。
床はMARAZZIのタイル。天井はウォールナットの不燃突板。
長いカウンターテーブルの天板はセラミックで、蓋を開けると水栓と、奥に鉄板焼き用にグリドルが現れる。パーティでは様々な料理人を呼び、寿司や鉄板料理など用途に合わせて対応できるようになっている。
右奥には日本酒セラーやワインセラーが並ぶ。
キッチン。キッチンの壁扉、冷蔵庫扉はフッコーのモラート サンドペーパー仕上げで、前面のカウンターテーブルやアイランドの背景になるように意図されている。アイランドの天板はクォーツストーン、IHとフラットレンジフードが備わるが、奥にガスコンロも。
キッチンの奥ではオリジナルの濃紺タイルが視線を受け止める。タイルは多治見のケラモスアートで製作した。ほかキッチン周りや囲炉裏も含めリネア タラーラによる製作だ。
バルコニー。向かいには借景の緑があるのでワイン片手にこちらでも楽しめる。
トイレも様々な素材が絡み合いながら調和している。ゲストがパウダールームとしても使えるようにスツールが置かれる。
1階、ラウンジ。棚にはオーナーの趣味である車や、時計、カメラ関係のコレクションで並ぶ。
手前はハンス・ウェグナーによるHIKEのチェア、アントニオ・チッテリオによるB&Bのテーブル、そして栗又崇信によるオリジナルのスツールと作り手が異なりながらも整合性をもたせた。
施主は、愛車を眺め、好きなものに囲まれながらワインを飲むこのラウンジ空間を第一に求めたという。
眺める愛車はマクラーレン。何台ものマクラーレンを所有しており、ここには3台気分によって並べ替えるそうだ。
先鋭的なデザインのマクラーレンの背景となるように、ガレージはラスティックは雰囲気に仕上げられている。
地下、プレイスペース。卓球やVRゲーム、ダーツ、カラオケなど楽しむ。部屋の周囲にワインケーブや小空間が設けられている。
海外製も含めの既製の卓球台を探したが、どれも機能がそのまま形になったものばかりで、この空間に合うエレガントなデザインが見つからなかったため、浅利さんがデザインし、リネア タラーラで製作してもらった世界に一台だけの卓球台。
天板の大きさやデザイン、球のバウンドも全て国際規格に準じた仕様。ステンレスの脚はバイブレーション仕上げに皮紐巻き。人造石で化粧された小口は、上下で対極的な表現を繋ぐ役割をしている。
壁や天井の仕上げもキッチン同様モラートによる左官仕上げ。右に見える出っ張りはSRCの柱梁が入っているためだが、あえて意匠に見えるように曲面同士がぶつかる難しい手仕事が施されている。
カラオケ室。
6〜7人がゆったりと楽しめる空間。ソファの背後から自然光が入る。
ワインケーブ。ステンレスと帯状の照明がサイバーな雰囲気だが、床にクラシカルなイタリア製磁器質タイルを用いて、ここでも対極的な表現をギリギリのところで調和させている。
レギュラー、マグナム、ジェロボアム等異なるサイズのワインボトル約2000本を合理的に収納できるマトリクスになっている。
建築と一体化したインテリア或いは家具。
「日常をより新鮮に=終わらない非日常」を目指した。これらは建築設計とほぼ同時進行で行う必要があるインテリアデザインであり、まさに建築とインテリアのヒエラルキーをなくして等価に扱っている。
階段室は上下を貫く壁柱に沿って地下1階から、3階までを繋ぐ。
他の空間が幾多の素材を積み重ねることによって、"空間 < マテリアル" になっているのに対して唯一、階段室だけが無垢な仕上げで "空間 > マテリアル”になっている。他の空間でのマテリアル同士、或いはマテリアルと人のインタラクティブで複雑な関係をリセットする役割を担っている。
3階クロゼットスペース。旅好きな施主夫婦の旅支度をここでじっくりと楽しみながら行うことができる。
手前がご主人、奥が奥さま用のスペース。右が水回りとなる。
中央のカウンターやスツールは二人に合わせてそれぞれデザインされたオリジナル。
クロゼットのガラス扉にはフィルムが貼ってあり、収納された服を適度に遮蔽しつつ、クロゼット内部を発光させることで部屋全体を包み込む照明にもなっている。
スツールによって空間に差し色を配している。
壁のほとんどが収納であるためブラインド付きのトップライトを設け効果的に採光。
水回り。ドレッサーカウンターを中心にシャワールームとトイレとなる。
浅利幸男さんと、この建築の担当を最後に退所し独立した石毛正弘さん。
「この建物は一般的な意味での住宅=日常とも、別荘=非日常とも異なります。それは日常と非日常の間にある住宅であり、日常を拡張し、あるいは新鮮に見せる、そういった効果を狙っています。形態と多用される素材、エクステリアとインテリアを等価に扱い、そこで動く人や自然光とのインタラクティブな関係の中で、無数のシーンを体験させることで、日常でありながら終わることのない非日常を建築で成立させました。」と浅利さん。
【麻布の別邸】
設計監理:浅利幸男、石毛正弘/ラブアーキテクチャー一級建築士事務所
施工:前澤工務店(施工協力 佐藤秀)

主要用途:別荘
規模:地下1階、地上3階、RC造+一部SRC造
建築面積:118.65㎡
延床面積:404.01㎡

Posted by Neoplus Sixten Inc.

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