北鎌倉ハウス

Takahiro Endo
10. januari 2020
All photo by Neoplus Sixten Inc.
傾斜地を造成した雛段状の古い住宅地で、敷地の3方を擁壁に囲まれている。擁壁から安息角を取った上で建てるために敷地のほぼ中央に正方形平面の建物となった。手前の角が南になるが、接道面の南東側は2階を全面開口としながらも1階は開口を抑えプライバシーに配慮した。
一方、南西から北西にかけてカーテンウォールの全面開口となっている。ボリュームは2階から1階の高さへ変化しながら、傾きに合わせて方形屋根が掛けられている格好だ。
カーテンウォールを実現しているのは基礎の幅を230mmと厚く打ち、サッシュの内側からさらに土台を105mmセットバックして乗せているためだ。住宅用サッシュながら納まりは出来るだけ薄くスッキリ見えるように工夫したという。
南西面の中央に玄関ポーチがあり、玄関扉は左右に二つ。右がグラフィックデザイナーである奥さまのアトリエ、左が住居部になる。
アトリエ側。土間にデスクを置いて作業スペースとする予定。小上がりに収納などを置き、、中央の小部屋は奥さまの寝室になるが、奥へ回り込むと住居部のキッチンへ通じる。柱が完全に露出した真壁となっているが見える。
反対側の玄関より住居部へ。土間はこちらにも大きく取られており、全面開口により縁側のような雰囲気になっている。
1階は広いLDK。二層吹き抜けにも感じるが、大きく天井が傾斜しているので、吹き抜けとは言えない高さに空間が変化する。2階には光庭が取ってあり、上部からの採光と、2階の気配が間接的に感じられるようになっている。
正方形の平面の中心に寝室や浴室、トイレといったプライベートエリアをコア状に配し、その周囲にパブリックエリアがらせん状に計画されている。外周にパブリックエリアを配したことで比較的街に対してオープンにすることができるため、開かれた街作りへの貢献も目指した。
「揃えすぎないようにした」という各要素。中心がずれていたり、キッチン台や階段が飛び出したりすることで、人の動きや家具配置などを形作るきっかけをつくっている。資材搬入の都合で屋根の一番長い隅木が分割されているという。そのため補強の頬杖が必要となったが、結果空間のアクセントとして効いている。
セットバックした柱梁は完全に構造現しで空間を形作る。構造は動線と共に立体的に体験・体感できることで、建築の知識がないひとでも「この家はこんな形で支えられているんだな」と感覚的に理解できることで気持ちの良い建築になってくれたらな、と遠藤さん。隣地は数メートル下にあるため、この緑の借景を最大限享受する全面開口を採用した。
照明はダイニングテーブルの位置にペンダントが設置されるが、他は軒桁の上から天井を照らす間接照明で賄う。
階段室は共用の図書室。家族がどんなことに興味があるか互いに把握できる。
1階の高かった天井は、階段を上がるにつれ低くなる。
2階はコアの中に、ご主人の寝室と、子どもの寝室、トイレが納まる。明るい窓際に共用のスタディーデスク。
奥から見返す。左は子どもの寝室でベッド1台分のスペース。カーテンで緩く仕切られ、”共有部” とシームレスに連続する。
両寝室に必要な開口面として設けた光庭は、、1階へのハイサイドライトとしても機能し、緑も見え、外内外内とレイヤーが切り替わる。
鎌倉の山並みが一望できる環境。
方形屋根を傾けたことで仕口は複雑な納まりに。プレカット業者の職人が一つ一つ手刻みで対応してくれたそうだ。
計画中に子どもが増えたため、玄関上のフリースペースをもう一つの寝室とすることに。天井はすぼまっているが一番広い寝室。
遠藤隆洋さん。「入れ子状の平面構成と方形屋根を傾けた断面構成による建築です。個人の住宅という閉じがちなプログラムに対していかにその地域・周辺環境との関係性を持つことができるかを考え設計しました。周辺に対して開いてもいい場所・閉じたい場所、広いほうがいい場所・狭くてもいい場所などをひとつひとつ丁寧に設計しました。住宅ではあるけれど周辺との関係性を持ち、ある種の社会性を持つ建築を設計しました。その空間は住民にとっても、その地域に暮らす人々にとっても清々しく、礼儀正しい建築になったと思います。」
【北鎌倉ハウス】
設計・監理:遠藤隆洋建築設計事務所
協力:TS構造設計・ かまくらスタジオ・杉尾篤照明設計事務所
施工:瀬戸建設株式会社
規模:木造2階建て、敷地面積271.72m2、建築面積70.56m2、延床面積106.21m2。

Posted by Neoplus Sixten Inc.

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