末光弘和+末光陽子 / SUEP.展 Harvest in Architecture

SUEP.
8. juni 2022
All photos by Neoplus Sixten Inc.
【展覧会コンセプト】
Harvest in Architecture 自然を受け入れるかたち

地球温暖化が進み、大規模な自然災害が世界各地で頻発している現在、我々建築家は、大きなイシューを突きつけられている。それは、モダニズム建築運動以来の全世界で共通する大きな課題である。この先、私達は、この母なる地球とどのように暮らしていくのか。その自然観が問われている。
“HarvestinArchitecture”とは、自然の恵みを持続的に受け入れ、地球とともに生きるための建築の姿を取り戻そうとする概念である。“Harvest”とは、カラフル(多様)であり、ハピネス(喜び)であり、エネルギー(活力)である。それは、農耕のように、自然との関係を耕し、持続的な恵みを得ることで、そこに人が集まり、交流する場が生まれるイメージである。それらを実現するためには、自然と人とのバランスの中で関係を築かなければならない。
本展覧会は、自然の恵みを維持し続けるために、循環する環境の一部として、あるべきこれからの建築の姿を問うものである。
SUEP.では、地球環境を境界を超えた外部とのエネルギーや物質のやり取りが行われる "開放系の循環システム” と捉えていて、建築もその循環の一部に組み込むべきと考えている。
その考えのもと事務所設立以来18年間、自然を受け入れるための研究から、建築デザインに結びつくアイデアの元を発見する “ラボ活動” なる所内研究会を続けてきた。そこで生まれたアイデアを “SEED (種)” と呼び、SUEP.が目指す “開放系” の建築はその “種” を、“LANDFORM” と呼ぶ地球上の循環システムに蒔くことから始まる。
本展の概念図。中央のラボ活動が “SEED (種)” 。
その種を ”LANDFORM” に蒔き、建築が生まれたというのが右側の矢印で、3階の壁沿いの展示を指す。
左下が種から生まれた実物大のパビリオンで、3階中庭の展示。
左上はSUEP.の今後のビジョンとして4階の展示を指している。
3階ギャラリー。フロア中央の展示台がラボ活動で生まれた種で、壁沿いが “LANDFORM" を表現している。
〈01 Market of Ideas〉
ラボ活動では近年、環境に対するデジタルシミュレーションが多くを占め、シミュレーションのためのプログラム開発までするそうだ。
〈木の周りの日射ポテンシャルのかたち〉、〈日陰の恵みを収穫するスラブのかたち〉
通常見えないモノをシミュレーションによって可視化し、ピックアップした自然の要素がどのような隠れた恵みを持っていて、それを建築や人の営みにどのように活かすことが出来るかをリサーチしている様子を展示している。
〈風の恵みを収穫する螺旋のかたち〉
〈地中の恵みを収穫する半地下のかたち〉
これら種が生み出された後も、実際のプロジェクトを進めながら、またリサーチをと繰り返していく。
〈02 Section of the Earth〉
地形と建築の断面模型が連続的に展示されている。平坦で周囲に何もないところでは起きない循環が、太陽、高低差、地下、水の流れ、木々、風といった要素が加わることで循環が起きており、 ”LANDFORM" に蒔かれた種が地球の循環にどのように芽を出し根付いているかを表現している。
〈九州芸文館アネックス1〉2013
〈清里のグラスハウス〉2018
〈03 Shading Dome〉
上記のようにSUEP.では環境をポジティブに捉えて建築を生んでいるが、ギャラ間には屋外の展示空間があるため、実際に体験できる機会を設けることができた。
会期は9月まであるので、これから暑くなるこの中庭を葉陰のような心地よさで覆うパビリオンを設置した。しかしただ日陰の休憩所を作ったわけではない。
TOTOの工場を訪問し、そこで発生する廃棄物に着目。
右の玉は、TOTOの陶器製品の原料である陶石を砕く際に使うアルミナボールで、小さくなってくると廃棄される。アルミナは熱伝導性が高いため触るととても冷たい。これをパビリオンの座面に用いた。実際座るとひんやりとして気持ち良いので是非試していただきたい。
その下は、エコセルベンという陶器の廃材を粉砕したリサイクル素材を混合した塗料をシェード(アルミ材)に塗装し、遮熱の効果を計測している。
エコセルベン混合塗料が塗られたシェード。
パビリオンは九州大学と北九州市立大学とも協働しており、構造や環境のシミュレーションのほか設置にも学生が参加し、会期中にさまざまな測定を行い論文にまとめる予定。
4階〈04 Architecture towards Asia〉
近作や進行中のプロジェクトでアジアに向けた開放系建築のビジョンを展示。環境の一部としての建築の在り方を伝える。
〈百佑オフィス〉進行中
台湾で進行中のオフィスで、敷地の中央に樹齢100年のマンゴーの木がある。このマンゴーのために日射量や風環境、建築形状をシミュレーションするという、人だけでなくマンゴーのための建築となる。
〈SOLSO FARMオフィス〉進行中
敷地条件からあまり地形に負荷をかけない建築とするため、大根を干す大根櫓から着想した構造で、1階部分はほとんど地面のままとなる。
〈ミドリノオカテラス〉2020
「緑と共に暮らす」というビジョンをもとに集まった住人のためのコーポラティブハウス。周辺の植生や生息する昆虫などをリサーチしたうえで、地域に合った植栽計画がなされおり、また雨水を貯蔵し循環させることもできる。
〈レソラ今泉テラス (ライフ天神福岡) 〉2021
福岡市のホテル+複合施設。公園に面する環境を積極的に取り込むため開口を大きくしテラスが設けられている。公園の緑が立ち上がっていくような壁面緑化を実現するために、潅水できる葉脈状のルーバーをファサードに用いた。
〈淡路島の住宅〉2018
年間を通じた太陽や海風の動きをリサーチ。瓦を使って半屋外空間つくったゼロエネルギー住宅。
リサーチ結果を反映してデザインされた瓦は地元の淡路瓦。
末光陽子さんと末光弘和さん。
「建築の難しいことばかりではなく、小学校、中学校の理科や社会で習ったことが、実は自分たちの住む建物や生活にもこのようなかたちで具体的に関わっているということが分かると思います。建築に関係のある方ばかりでなく、子どもを含め様々な方にも見に来て頂けたらと思います。」と末光陽子さん。
【末光弘和+末光陽子 / SUEP.展 Harvest in Architecture 自然を受け入れるかたち】
Hirokazu Suemitsu + Yoko Suemitsu / SUEP. Harvest in Architecture

会期:2022年6月8日(水)~9月11日(日)
開館時間:11:00~18:00
休館日:月曜・祝日・夏期休暇[8月8日(月)~8月15日(月)]
入場料:無料、事前予約制
会場:TOTOギャラリー・間(東京都港区南青山1-24-3)
詳細:jp.toto.com/gallerma/ex220608/index.htm
主催:TOTOギャラリー・間

Posted by Neolus Sixten Inc.
 

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