写真 © Forward stroke Inc.
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YG

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場所
神奈川
2008

海老名市郊外の西に向かって下がるゆるやかな傾斜地に敷地はある。初めてこの敷地を訪れたとき、ゆるやかな斜面がとても美しいと感じた。予定では敷地はひな壇状に造成されると聞いていたので、すぐにこの斜面はそのままにしてほしいとお願いした。敷地の西側には丹沢山系の美しい山並みの眺めが広がり、北側には隣地の竹林に接している。一方、南側と東側はミニ開発によってつくられた住宅がひしめいている。つまり北および西側は美しい環境に接し、南および東側には隣家と接しているため、敷地に対して南東から北西に向かう空間の方向性を感じた。この斜面と敷地周辺の対角線上に落差のある環境の質の違いを計画に利用することを考えた。

 ほぼ正方形の平面形状の建物を斜面の中央に配置し、隣家が迫っている南および東側の外周部にL字型に壁をたて、眺めの良い北および西については腰壁で囲む。腰壁の高さは北西角に向かって低くなるようにすることにより、内部には南東角が最も閉鎖的で、北西角が最も開放的になるような空間がつくられた。つまり外周の壁の開き方により、内部空間に対角線の方向に開放性のグラデーションが生まれる。奥行きの深い平面形状であるため、中心に小さなコートをつくり、光を取り入れると同時に環状につながる空間の構造をつくる。そのコートのまわりに、斜面の地形をなぞるようにレベル差のある床を配置していった。最後に斜面と同じ方向の片流れの屋根をかけている。建築主からは壁で仕切られた個室をつくることは要望されなかったので、空間は床のレベル差によりゆるやかに分節されながらつながっている。最も開放的な北西のコーナーには奥行きの深いテラスがある。屋根と腰壁で囲まれた限りなく内部に近い外の部屋である。その東側の一段上がったレベルにはダイニング・キッチンがあり北側の竹林の切り取られた眺めを楽しむことができる。一方、南側には西に向かって開いたリビングがあり、丹沢の山並みを眺めることができる。最も奥まった高い位置に寝室がある。この寝室の上部の屋根だけを西に向かって跳ね上げることにより、眺望を確保し屋根のレベルに物干しとして利用できるテラスをつくった。このように、それぞれの場所は外部に対して異なる開き方をしているため、多様な場所が展開している。 

 美しい眺望があるときに、それを唯一の設計の手掛かりとして、例えばすべての場所からその眺望を眺めることができるような断面構成をとることもできる。しかし今回の計画では片流れの屋根により眺望が見える場所を限定し、空間の違いが際立つことを目指した。また内部の平面構成も初期の案は内部には水周りを囲む壁以外は一切壁がないものであったが、最終案では玄関の正面とリビングの北側に壁を設けている。この壁は建築主との会話から生まれたものであるが、内部空間の全体がすぐに認知できてしまうことより、常に奥に次の空間が隠れていて、移動とともにシーンが展開する豊かさを優先した結果である。

コンセプトが明解であること、つまり図式的なわかりやすさや言葉による説明のしやすさよりも、たとえそれが犠牲になっても空間が豊かになることを選択した。

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