カクカクカナデル

東京都杉並区
中庭。住宅地に建つ3人家族の住宅。3人はそれぞれ異なる 創作活動があり、3つの活動場所を分棟によって設えた。各 棟が囲む中庭は、娘が試験勉強をしたり夫が脚本を書いたり、 妻がイラストの構成を練ったりと3人が自由に集う場所。

3人家族の全員が創作活動をしている。夫は脚本家、イラストレーターである妻、娘はコンテストやコンサートのために日々ピアノを弾いている。
家の設計にあたり、ひとりひとりの活動場所は、家の中の部屋というよりも、小さな村の中の単体の建物として、ひとり1棟が相応しいと考えた。そこで、創作活動の場所であり、打ち合わせスペースであり、会社でもあるそれぞれの棟と、みんなの棟(リビング、ダイニング、キッチン、寝室、水回り)の計4棟で中庭を囲む配置計画とした。

中庭を囲む4棟は、棟間を2階テラスで連結させて抜けをつくり、中庭への求心性と拡散性、それと中庭の回りに環状に取り巻く屋内外の反復が生まれ、居場所・活動場所選択の多様性を得た。また、各棟に植栽帯をつくり、ひとりひとりが植物を決めたり育てたりすることができるようにした。それは、村や集落において木の1本1本に所有権があることに似ている。
各棟の開口部から入る光や風と共に、そこから見える植物は自分が育てているという従属感が、その植物に群がる鳥や虫にまで及んでより愛着を感じられる。そこに中庭での畑、仕事、勉強などの活動も重なり、生活領域の意識が内外に跨って拡張している。

夫は書く(カク)創作をし、妻は描く(カク)創作をし、娘は奏でる(カナデル)創作をしている。衣食住だけではない活動(カク、カク、カナデル)を、それぞれ
の活動にふさわしい器として室ではなく棟を配置することは、ひとつの家でありながら、村を計画しているようだった。村の全部をひとりの建築家が計画できるものではないが、その性質を獲得しようとしたという点で、これは小さな村なのだ。そして今では、敷地を超えて近隣4件で「ケイザン会」と名を打った交流グループをつくり、家の前でフリーマーケットを開くなど緩い活動をしている。

階数 地上2階 
軒高 5,078mm 最高高さ 8,560mm
敷地面積 160.74m2
建築面積  83.27m2  (建蔽率51.81% 許容60%、角地緩和含む)
延床面積 137.24m2  (容積率87.11% 許容100%)
1階 67.55m2  2階 69.69m2

キッチンからダイニング、リビングを見る。カラマツ材 の登り梁は900mmピッチで架かる。テラスを介してス タジオ棟、書斎棟に繋がる。最高天井高は4,915mm。
左に寝室、右に書斎を見る。中庭には楕円形の花壇を設け、 キャベツやニンジンなど野菜を育てている。各棟はテラスで 繋ぐことで、1階は小さな半屋外空間が点在する。
屋根裏。内部は幅1,830mm、最高高さ2,935mm。
子供部屋から中庭を見る。
アトリエ1F。妻と編集者の打ち合わせスペース。
アトリエ2F。イラストレーターである妻の活動場所。
音楽室。娘がピアノを奏でる。
バレエ練習室。主に娘のバレエの練習のために使われる が、勉強部屋でもある。右壁面にバレエの練習のための鏡を 張った。
東側外観。リビングに設けた木の板窓は前面道路を通る人との交流の窓。
中庭。妻・アトリエ棟の軒先から伸びるフレー ムは、ツル植物のカーテンの手がかりとなる。
西側俯瞰。各棟はそれぞれの活動内容に合わせて異なるヴォリュームとした。
建築家
保坂猛建築都市設計事務所
場所
東京都杉並区
2023
施工
内田産業 内田嘉哉 担当/羽深光 相川豪臣

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