舟ノ庭

東京
写真 © N-tree
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ランドスケープ アーキテクト
長崎剛志/N-tree
場所
東京
2015

 東京都墨田区に建設された集合住宅、ザ・パークハウス両国レジデンスの中庭をつくるプロジェクト。三菱地所株式会社とのコンセプトつくりから話がはじまり、ここ両国が葛飾北斎ゆかりの地でもあることから、一枚の北斎版画を庭で表現することを提案した。庭の面積は約47㎡。場所はマンション入口、風除室、エントランスホールをぬけ正面に構える。そこを日々通る住人の力の源になるような、エネルギッシュなものを目指そうと思った。
 その版画は「千絵の海 総州銚子」。 荒い波と格闘する漁舟たちを描いた作品である。 この平面絵画という二次元を、庭の空間に置き換える手がかりとして、絵の中のラインの持つ表現に注目した。そして舟や海などにどのような素材を使うのかを考えた。ただ単純に版画の具象性を庭に模写しても面白くないし、北斎の奇抜な人生や画業を考えると、何か新しい表現に挑戦する必要があると思った。それはなるべく抽象化させつつ、ものの構成や方向性の強弱で躍動感を表すことでもあった。

 主人公の舟石は恵那山から30年前にすでに掘り出されていたもので、5トンもあり搬入が困難なため二分割する必要があった。しかし、石の強いインパクトを失いたくなかったので、印象を維持しつつ、重量を減らしていく必要があった。二分割する面を斜に切断し、中央部分を30センチほど削除し、さらに船底も斜めにカットすることで1トンあまり重量を減らした。奥行き3.6m、幅90cm、高さ60cmのその舟石は、二つのパーツを、ズラし、ヒネリながら、く(L)の字に傾け、極端に角度をつけて、波しぶきに見立てた石に乗りあげるように設置した。そして、荒れた海は、青鉄平スレート石を立てて、さざ波のように敷きつめ、白い波しぶきは御影石をのみで叩いて、おうとつに彫り表現した。山の風景は、常緑陰樹フイリサカキ、ヒサカキ、ハマヒサカキ、サルココッカ、フイリアオキなどの混植された低木の刈り込みでつくりつつ、斑入りの植物も使うことで、日照の少ない場所に明るい印象を与えた。

 この庭は縦横上下と、極端な遠近法によって小さい空間を大きく感じさせようとしている。様々なアングルの形、重量感のコントロールによって目線を回し、自然素材の色、形、曲線をつかって、海や山を見立てたその三次元の表現は、鬼才北斎へのオマージュである。

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