黒土と六角錘の庭

神奈川
写真 © N-tree
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ランドスケープ アーキテクト
長崎剛志/N-tree
2007

遠浅の海と砂浜が広がる自然豊かな神奈川県大磯町。住宅開発が進み、庭が取り壊されていく中で、緑豊かな大磯らしい佇まいを取り戻したいという住人の想いからこのプロジェクトは生まれた。

この庭は仕様の異なった3辺の回遊路でつながり、それを囲むようにして4つの鋭角スペースとガレージ、ガーデンハウスが配置されているため、立つ場所によって見え方が変わる。この鋭角スペースが庭に不思議な遠近感、奥行きを感じさせている。これは、このプロジェクトが庭と建築との両面から進められた設計であることの作用である。

周囲の小山と起伏が連なっている六角錐ガレージの屋根。プロジェクトのタイトルにもなっている六角錐は、この屋根の形が庭に派生したものである。早春には、ガーデンハウスの六角に切りとられた窓から広重構図の枝垂白梅を楽しむことができる。その窓と同じサイズの水景オブジェは、大磯の浜辺で見た波打ち際の一瞬の表情を海の記憶として写し取った景色である。

六角形と同様に、この庭で繰り返し使われている要素が杉板である。庭を囲む焼杉板塀、焼杉板で化粧をしたコンクリート塀、その壁に刻印された杉板のコンクリートオブジェ、その型枠を使った版木画など様々なかたちで板目を印象づけることにより、それぞれの景色の記憶をつなげた。

潮風や温暖化の影響で、樹木が根づくのに時間がかかったが、管理に手をかけ、樹木が環境に適応してきたことで黒土との関係がうまく回り出した。その結果、緑に囲まれた暮らしを営む目的は達成されたかもしれない。しかしただ自然な緑があるだけではなく、角度やラインの関係から生まれる躍動感や要素の反復により、人々に堆積された感覚の層を呼び起こす空間になったのではないかと思う。

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