WO house

Yo Yamagata Architects
29. 1月 2020
All photos by Neoplus Sixten Inc.
山縣さんが方形屋根の住宅を作るとは珍しいと思い現地に赴くと、大きな寺院に対峙するように建つ姿を見てその理由が分かった。この周辺環境を無視するのはあまりにも野暮というものだろう。建設中、通りを行く人からお寺に関連したカフェなのかとしばしば聞かれたそうだ。
通り側から。前庭には植栽と生け垣、墨色の壁や焦げ茶の板塀が落ち着いた佇まいを醸し出している。
470m2と広い敷地の北西に76m2のコンパクトな建物を寄せて配置、暫定で砂利敷きとしたが広い庭がL字型に広がる。伸びやかな庇の下にガラス張りの全面開口。
木建ての雨戸を閉めると、寺院の伽藍の一つにも見える。
前庭の緩やかな傾斜に沿った長いアプローチを通って玄関へ。
玄関から。庭に面した開口とトップライトから差し込む光が印象的な空間が現れる。
右に下足入れと納戸、その奥にもう一つの納戸。正面にリビング、左が寝室となる。
ここは男性一人の棲まい。転勤もあったため家をなかなか建てることができずにいたが、定年リタイヤしたことで好きな物に囲まれた理想の棲家をようやく建てることができたそうだ。
左の寝室はカーテンで仕切る。右はライブラリー。
トップライトを中心に持つ方形屋根。中心にライブラリーを配し、周囲に生活動線が巡っている。右には納戸や水回り、左手前にキッチンがあるが天井の伸びやかさを活かすため壁高さは2.1mに留めてある。
柱は2.73mグリッドに4×4の16本。中心の4本は120mm角、その他は90mm角の材を用いた。
リビングに回ると二面の大開口が現れた。軒高さは1.8mに抑え、周囲の景観を水平に切り取り、隣家から視線も遮る。生け垣にはカナメモチを巡らし、庭は時間を掛けて手を加えていくそうだ。
大画面のテレビを据え、映画を見るための空間でもある。
メインの照明は棚の上と、4本の柱の足元にあるアップライトで天井を照らす間接照明。
開口面には透過性のロールカーテンで、白く光る壁が現れたように全く別な表情を見せる。
キッチンから、ダイニング、テラスと連続してシーンを切り替えられる。隣は記念樹が植わる緑豊かな公園。
テラスにも椅子を置いてのんびりできる。
読書が大好きな施主。読書机をちょこんと置き、今まで国内外の旅行先で収集してきた陶器を愛でる棚を巡らした4畳半のライブラリーで、気ままな時間を過ごすことができる籠もり部屋だ。
またライブラリーの外周では水平に広がる視界だが、ライブラリーに入ると棚に囲まれながらも、30cm下げられた床レベルも相まって、四角錐型に4.2mまで昇る天井によって違った空間の楽しみができるのだ。
水廻り。洗面とトイレは上部が抜けているが、浴室だけは中空ポリカーボネート板を張り、光を導きながらも湿気に配慮した。
向かいの山門越しのカット。

「初めて敷地を訪れた際、向かいの寺院の屋根と呼応するような広い敷地に、方形の小さな屋根がぽつんとあるイメージが浮かびました。と同時にシンプルな構成の中に豊かな空間を生み出せるかが設計のテーマとなりました。求心的なトップライトから落ちる光と周囲からバウンドして入ってくる間接光を活かして、季節や天気によって様々に変化する状態を生み出しました。」と山縣洋さん。
【WO】
設計監理:山縣洋建築設計事務所
構造設計:坂根構造デザイン
施工:木村工業
規模:木造1階建て、敷地面積462.92m2、建築面積76.37m2、延床面積71.17m2

Posted by Neoplus Sixten Inc.

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