STITCH

Komada Architects Office | 8. 5月 2025
All photos by Neoplus Sixten Inc.
敷地は西葛西駅北口より徒歩10数分の場所。同じく西葛西に拠点を構える駒田事務所は駅の南口方面で、取材時駒田剛司さんは自転車で現れた。
元々西葛西在住の施主はここに新しく土地を買い求め、自らの住居と、テナントと賃貸アパートの複合住宅を望んだ。
1階に2テナント、2階と3階の一部がオーナー住戸、3・4階が賃貸共同住宅となる。
建物名のSTITCHは文字通り「縫い目」の意味。「人・こと・場所を “縫う”」がコンセプトで、街と、店舗、住戸を縫うように階段がデザインされている。
南東向きファサード側は、建蔽率を使い切らずに建物をセットバックさせ、人々が引き込まれ滞留できる前庭を設けた。
1階右奥に美容院が入り、左にはナカヤパンという荒川を挟んだ江東区の人気パン屋の支店が入る。
駒田事務所のある西葛西アパートメント2には駒田由香さんが誘致したパン屋さんが入っているが、パン屋を起点とした小さな街づくりが成功している様子を施主は以前より知っており、この駅北側にもそういったことができないかと駒田さんたちに相談した。賛同した駒田さんたちは、パン屋やカフェのほか様々な事業者に声をかけ続け、その中で出会ったナカヤパンが支店をだすこととなった。車で数分の場所にある本店でパンを焼き、こちらには商品を並べ奥の小さなカフェスペースでイートインできるスタイル。
取材時は内装工事中だったが既にオープンし、連日行列ができているそうだ。
また将来的に2つのテナントスペースを連続させることもできるように、右手中程の壁が雑壁になっているのが見える。
>>ナカヤパン
3階のアパートへ。
構成は折り返し階段なのだが、曲線を描くことで意思を持っているように感じる。
階段はオーナー住戸も含め、各住戸のバルコニーを繋ぐ。
登りたくなるような階段、通りに面して突き出したバルコニー、両開きの玄関扉と合わせ、住人がちょっとした商いをした場合にも、人が上がってきやすい仕掛けとしているのだ。
301号室
室内も商い利用しやすく、商いスペース、トイレ (左) や個室がセパレートするようなレイアウトになっている。
玄関を見返す。街に対して開放できる両開きの玄関扉。左には階段 (人の動き) が見える窓。
水回りや個室のプライベートエリアはDKの奥に配置。
個室は構造でもある袖壁をうまく利用してDKから中を見えにくくしつつ、ニッチ収納にもなっている。
左にはプライベートなもう一つのバルコニー。
そのバルコニーを跨ぐように4階へ。
4階より上ってきた階段を見下ろす。
401号室
両開きの扉とは別に鉄扉が付く。住人はどちらから出入りしても自由なのだが、301同様商い利用もしやすいようにしている。
建物長手方向一杯の住戸で、玄関の正面(左手)にトイレ、手前に個室、奥にLDKと水回り
キッチンや水回りと、LDは構造壁でうまく仕切られている。
LD側から見る。
棟を挟んで左の天井は北側斜線による傾斜だが、右側もそれに合わせて傾斜させ北側斜線然とした天井を避けた。ファサード側を離れて見ると切妻屋根となっている。
北西の裏側も北側斜線によりボリュームが削られバルコニーがある。
玄関から左の個室。こちらがファサードに突き出すバルコニー。バルコニーは3面あることになる。
いずれの住戸のバルコニーにもプランターを造り付け、予め植栽もしてある。水やりは住人の意思で行うのでファサードの表情と建物を住人と共に育てていくこととなる。
駒田剛司さん
「地域の人と人、さまざまな体験、建築と街、それらを縫い合わせるような集合住宅を目指しました。クライアントとは敷地選定から関わり、西葛西APARTMENTS-2での経験を活かしながら、ハードの計画と並行してグランドレベルの活用方法について一緒に考えました。プログラムはもちろん、地元の事業者とさまざまにつながりながら、パートナーとの出会いを、まさに地域を縫うようにして長い時間とエネルギーを費やし求めてきました。この建築のトータルを考えつくるプロセス自体が、人と人を縫う、つまりコミュニティ形成への布石になったのではないかと考えています。」
【STITCH】
Komada Architects Office
設計・監理:駒田建築設計事務所/駒田剛司・駒田由香・久保田祐基
構造設計:Q & Architecture
施工:栄建
家具工事:正和建装

用途:店舗、共同住宅
構造・規模:RC造、地上4階建て
敷地面積:138.89㎡
建築面積:70.36㎡ (50.65% / 60%)
延床面積:227.83㎡ (164.03% / 300%)

Posted by Neoplus Sixten Inc.

このカテゴリ内の他の記事