モトハウス
Ryosuke Motihashi | 24. 6月 2025
All photos by Neoplus Sixten Inc.
本橋良介 (MMAAA) による世田谷区の自邸「モトハウス」。分筆が進む住宅地で祖父から受け継いだ土地の記憶を残すように、2方向にある路地を恒久的な空地として捉え空地を繋ぐ道を家の中に通した。竣工1年後の取材となる。
Moto House, Tokyo, Ryosuke Motohashi / MMAAA
敷地は駒沢公園にほど近い住宅地。この東側と反対の北側に2本のアプローチがある。
ここには元々本橋さんの妻の祖父が戦後に移り住み、隣の土地にまたがる大きな家を建てて住んでいた。
ここには元々本橋さんの妻の祖父が戦後に移り住み、隣の土地にまたがる大きな家を建てて住んでいた。
祖父母が亡くなったあと、その家は本橋一家が譲り受け9年ほど住んでいたが、相続分で半分を親戚、もう半分を自分たちの土地とすることとなり、その際、均等分けを前提としながら本橋家が分筆ラインを決めることができたので、南北に分け2方向アプローチがある南側の土地を選択した。親戚は土地を売却したため新しい方が家を建てた。
ファサード上部に凹型の造形が見える。実際はソーラーパネル設置のための勾配屋根が見えるのだが、次の北側からの写真にあるように、段々の構成となっているため陸屋根に見えるよう看板建築的に意匠を調整したもの。
ファサード上部に凹型の造形が見える。実際はソーラーパネル設置のための勾配屋根が見えるのだが、次の北側からの写真にあるように、段々の構成となっているため陸屋根に見えるよう看板建築的に意匠を調整したもの。
庭からはテラスを介して室内に掃き出しで連続し、反対側まで抜けている。
既存ではこの開口分の幅に庭があり、同じように反対側に通り抜けることができた。そのときの記憶を継承するようなかたちだ。
庭いじりが大好きな本橋さん。ミントやレモンバーム、ディルなどのハーブのほか、季節に合わせて野菜を育てている。また庭で食事やBBQをしたりと使い倒しているようだ。
既存ではこの開口分の幅に庭があり、同じように反対側に通り抜けることができた。そのときの記憶を継承するようなかたちだ。
庭いじりが大好きな本橋さん。ミントやレモンバーム、ディルなどのハーブのほか、季節に合わせて野菜を育てている。また庭で食事やBBQをしたりと使い倒しているようだ。
北側。こちらは60mほどの区道の突き当たりで、東と北2面が突き当たりになるという珍しい敷地だ。
実は右手 (西) の土地も祖父が所有していたが数十年前に分筆されており、手前の未整地の部分も含めて1つの土地だった。現在は、隣接する3軒で共同管理する私道として協定を結んでおり、今後この部分をどのように整えるか話し合いながら決めるそうだ。
実は右手 (西) の土地も祖父が所有していたが数十年前に分筆されており、手前の未整地の部分も含めて1つの土地だった。現在は、隣接する3軒で共同管理する私道として協定を結んでおり、今後この部分をどのように整えるか話し合いながら決めるそうだ。
ピロティには普段車が停まっている。ピロティから木框のガラス引戸を開け放つと、庭まで通り土間で連続する。
床には指向性のない6角形のタイルを選んだ。
床には指向性のない6角形のタイルを選んだ。
ピロティで見返すと視線はかなり先まで抜ける。
玄関が2つあるような恰好だが、用途によってどちらも使い分けていて、子どもたちの友達も来やすい方から自由に入ってくるそうだ。
玄関が2つあるような恰好だが、用途によってどちらも使い分けていて、子どもたちの友達も来やすい方から自由に入ってくるそうだ。
爽やかな風が抜ける通り土間。本橋さんはパッサージュとも説明している。
左手は水回り、左奥がキッチン。壁の仕上げは白ラワンを選んだ。
左手は水回り、左奥がキッチン。壁の仕上げは白ラワンを選んだ。
中央は吹き抜けで、2階とはおおらかに繋がるワンルーム空間だ。2階に上がるとスタディスペースで、その奥が子どもスペースとなる。
テレビに正対してソファが階段下に少し窮屈に収まっているが、本来 “道” なのでここには何もなく、テレビやソファは2階に置く計画だったが、3人の子どもたちのオペレーションからやむを得ず設置しているそうだ。
テレビ横の古いスピーカーは本橋さんの東工大の師である坂本一成さんから譲り受けたもの。
テレビに正対してソファが階段下に少し窮屈に収まっているが、本来 “道” なのでここには何もなく、テレビやソファは2階に置く計画だったが、3人の子どもたちのオペレーションからやむを得ず設置しているそうだ。
テレビ横の古いスピーカーは本橋さんの東工大の師である坂本一成さんから譲り受けたもの。
吹き抜けを見返す。
東京都の省エネ住宅普及のための「東京ゼロエミ住宅」の助成金を得られるようソーラーパネル・蓄電池の設置と断熱性能を上げた。基礎はスタイロで外断熱し、壁は高性能グラスウール24Kを100mm、屋根は300mmを張り込んでいる。その断熱性能は高く、夏でも2階の右上にあるエアコン1台(+扇風機)で家全体の冷房を賄うことができ、1階は床暖房なしだが、冬はファンヒターを点ければ大丈夫だそうだ。
東京都の省エネ住宅普及のための「東京ゼロエミ住宅」の助成金を得られるようソーラーパネル・蓄電池の設置と断熱性能を上げた。基礎はスタイロで外断熱し、壁は高性能グラスウール24Kを100mm、屋根は300mmを張り込んでいる。その断熱性能は高く、夏でも2階の右上にあるエアコン1台(+扇風機)で家全体の冷房を賄うことができ、1階は床暖房なしだが、冬はファンヒターを点ければ大丈夫だそうだ。
キッチンは2面採光でとても明るい。ほかは設計者のこだわりが強いが、ここだけは奥さま主導の設計となっている。
勝手口からはハーブを摘んだり、洗濯干しで頻繁に出入りする。
勝手口からはハーブを摘んだり、洗濯干しで頻繁に出入りする。
2階スタディスペース。夫妻には撮影は気にせず普段通りに仕事をしてもらった。奥さまは主にこちらで、3人の子どものプリントやメールチェック、ドリルの採点などをするという。
中央の吹き抜け。大きなワンルーム空間に間仕切りでなく必要な床を配置した構成が良く分かる。
カーテンも付けずあらゆる方向に抜けがある広々とした子どもスペース。「男の子3人が散らかすので普段はこんなに片付いてませんよ」と笑う奥さま。
左奥は庭に突き出したバルコニーで、主に布団干しに使う。右奥は南東に面した出窓。
左奥は庭に突き出したバルコニーで、主に布団干しに使う。右奥は南東に面した出窓。
出窓は駐車場や私道の抜けを狙った位置でちょうど寝転がれるサイズ。
ラワンは全て透かし目地。出窓と勾配の合わせ目など丁寧な大工仕事が見える。
ラワンは全て透かし目地。出窓と勾配の合わせ目など丁寧な大工仕事が見える。
友達がよく遊びにくるそうだが、児童館のような雰囲気でそれもうなずける。
向かいの奥が主寝室。
向かいの奥が主寝室。
スタディスペースは中二階のような位置にある。北側斜線に掛かり桁が下がるので、天高を取るために床レベルを下げたが、それをスタディスペースの下の水回りを60cmほど掘り下げてクリアしている。
2階床レベルの狭間に収納が生まれている。その上はトイレ。
主寝室。ここだけは奥さまの強い要望で引戸の間仕切りとカーテンがつく。
腰壁に囲われたエリアはファミリークローゼット。
腰壁に囲われたエリアはファミリークローゼット。
1階水回り。右手に見えるドアノブは既存の家からのもので、引戸の取っ手などいくつか流用している。
本橋良介さん。MMAAAは三木達郎さんと共同主宰の事務所だが、この自邸はスタッフの手を借りず一人で手掛けたプロジェクトだそうだ。
「周辺の『敷地』では次々に住宅が建て変わり、この住宅にとっては将来的に不安定な環境ですが、『道』は将来に渡って安定的に空地としての環境が担保されます。表通りから奥まった、通過交通のないどん詰まりの道をポジティブな空地として評価して、道の突き当たりに正面に構えた住宅です。」
「周辺の『敷地』では次々に住宅が建て変わり、この住宅にとっては将来的に不安定な環境ですが、『道』は将来に渡って安定的に空地としての環境が担保されます。表通りから奥まった、通過交通のないどん詰まりの道をポジティブな空地として評価して、道の突き当たりに正面に構えた住宅です。」
【モトハウス】
Moto House, Ryosuke Morohashi / MMAAA
設計・監理:本橋良介/MMAAA
構造設計:金箱構造設計事務所
施工:本間建設
規模・構造:木造2階建て
敷地面積:145.03 ㎡
建築面積:71.89 ㎡
延床面積:104.74 ㎡
Posted by Neoplus Sixten Inc.
Moto House, Ryosuke Morohashi / MMAAA
設計・監理:本橋良介/MMAAA
構造設計:金箱構造設計事務所
施工:本間建設
規模・構造:木造2階建て
敷地面積:145.03 ㎡
建築面積:71.89 ㎡
延床面積:104.74 ㎡
Posted by Neoplus Sixten Inc.