蓮沼町のアパートメント

MMAAA
2. 10月 2024
All photos by Neoplus Sixten Inc.
都営三田線 本蓮沼駅から2分、周辺は低層のアパートや戸建て住宅が立ち並ぶ2面に接道する南東の角に敷地はある。
右奥(北側)と左奥(西側)に計画中は建物があったが途中で解体され駐車場になり、竣工した現在は4面全てが見える状態になっている。
住宅密集地における周辺の建物のボリュームに配慮されているのが伺える。分棟したかのようにボリュームを分けることと合わせ、建物の角にテラスを穿つことで大きな塊を削っている。
また “分棟” した棟は南北にずらすことで、東京都建築安全条例で集合住宅に求められる “道路又は窓先空地への避難経路として使用するための窓の設置” をクリアしている。
こちらは2020年にMMAAAが手掛けた〈双葉町のアパートメント〉。施主は近所でこのアパートを目にして設計を依頼してきたそうだ。
(©Yasuhiro Nakayama)
そして施主は、目一杯詰め込んだ収益優先物件ではなく、RC造で快適な住空間としながら、2〜3人が住まうことができる広さ、住人同士がコミュニケーションを取れるような環境にすることを望んだ。
建物は1階を少し掘り下げ4階建てとし、1-2階と3-4階のメゾネットが東西の棟に4住戸ずつ配置され、その間を1住戸が繋ぐ計9住戸からなる。
エントランスはセキュリティ上オートロックのフェンスで囲われているが、デザインは路地から階段が3階へとシームレスに続いていくイメージ。
分棟された空隙が空を切り取っている。
各住戸の玄関は2階と3階にあり、この大階段を中心に振り分けられるので全ての住人はここで顔を合わせる。
そして階段は広めに幅を取り(階段裏の住戸の幅でもある)、住人同士のコミュニケーションが生まれるきっかけとなる共用空間として余裕を持たせた。
3階共用部。屋上へ上がる階段もある。
外階段や空中に掛かる渡り廊下はMMAAAの建築でしばしば現れる。
南北に抜ける空隙の幅は4m、これだけ抜いても容積はほぼ使い切っているそうだ。
屋上階段踊り場から。
ブリッジは地震の際破断しないよう左の棟から延びて、右の棟には乗っているだけで固定されていない。
たっぷりの広さの屋上。ここも共用部なので住人は椅子を持ってくるなどして自由に使える。
このブリッジは生活動線ではないので必ずしも必要ではないが、施主は工事費用が掛かっても豊かな共用空間実現のためにGOを出した。
右奥に見えるのはナショナルトレーニングセンター。
重なる外部空間。
201号室
各住戸共に玄関のあるフロアにキッチンを配置。大小の違いはあるが必ずテラスを設け、3方もしくは4方に開口し街の様々な風景を楽しむことができる。
202号室
2階は中二階ほどの高さに位置するため街がとても近い。
202号室1階
80cmほど地下にあるので目線は通りを行く人より低くなり、より街が近づく。
203号室2階
共用部下の住戸。片側が全面ガラスで、ガラスの外は専有部のテラスで鉄扉が付く。
203号室1階
階段下を利用した斜めの吹き抜けが特徴だ。
204号室1階
大胆に階段が中央にある。アパートではあまり見掛けたことがないレイアウトだ。
204号室1階
204号室のテラスはもはやドライエリアの様相で、このアパートで一番街に近い場所。
外構にはあまり背の高くない植物で植栽される予定。
205号室
テラスインで玄関となる。
2階LDKに大きな口を開ける吹き抜け。
205号室1階。
2階の床面積を減らしてでも吹き抜けによる開放感を優先した。
他の住戸でも多くが吹き抜けを大きく取っている。
301号室3階
302号室
テラスイン玄関の前から
302号室3階
303号室3階
303号室4階
304号室3階
304号室3階
同じレイアウトの住戸がなくそれぞれが異なる個性をもつ。
平面図
三木達郎さん
「隣駅で設計した『双葉町のアパートメント』を通勤途中に見かけたのがきっかけで依頼してくださったのが今回のお施主さんです。敷地はお施主さんが若い頃暮らしたアパートがあった思い入れのある場所で、そこに住人同士が居心地よく暮らせる住宅を求められました。テラスや共用階段、ブリッジ、屋上などの外部空間によってお互いの顔が見える程よい距離感をつくれたと思います。」
【蓮沼町のアパートメント】
Apartment in Hasunuma-cho
設計・監理:三木達郎 + 本橋良介/MMAAA
構造設計:オーノJAPAN
設備設計:アイ設計
施工:白石建設

用途:共同住宅
構造規模:RC造 地上4階建
敷地面積:245.93 ㎡
建築面積:162.51 ㎡
延床面積:475.93 ㎡

Posted by Neoplus Sixten Inc.

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