井手孝太郎による世田谷の住宅「Path」

Neoplus Sixten Inc.
1. 11月 2018
Photo by Neoplus Sixten Inc.
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車庫。ここまでデザインに力を入れた車庫はなかなかないだろう。ショールームではなく個人住宅だ。

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車1台とバイクや自転車を数台停められるスペース。

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玄関へは、砕石が樹脂舗装された数段のステップを伴うアプローチ。透水性が高く水溜まりが全くできない。
玄関扉は鉄製(亜鉛メッキ+リン酸亜鉛)で建物の迫力に負けないように力強い。

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玄関扉を入ると眼前に立体的な中庭が広がる。山道とも洞窟とも取れるような小径が、段床や階段と同化しながら奥まで続いている。
右手に見えるのは収納や下足入れで、右端が下履き動線で、中央が上履き動線となる。

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振り返るとカーペット敷きの小上がりスペースが。大型のテレビも備わり、子どものゲーム仲間が集まるスペースだとか。玄関のすぐ脇で気兼ねなく遊べる。

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照明を点けると間接照明により違った意匠が浮かび上がる。
この住宅の照明は殆どが間接照明で、動線ではスイッチパネルを設けず人感センサーで点灯する。

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下足入れ側。玄関から動線が並行に二つあるという贅沢なつくり。

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奥まで進んだところで見返す。階段、いや小径は回り込みながら続くが居室はまだ現れない。
右下はガレージへ通じる。

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中庭を囲むようにU字型の建物が建っているのが分かった。そしてここは山であり谷だということも。

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単なる動線ではなく、山を踏みしめながら出来上がった小径 = "Path" なのだ。

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上りきるとキッチンとダイニング。大開口から谷を見渡すことができ、下に玄関からの小径が見える。
不整形なダイニングの平面と合わせるように作り付けられたテーブルは、大判の一枚タイルの天板だ。

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キッチンの奥にはパントリーとエレベーターが備わる。エレベーターは1階から屋上まで4層を結ぶ、家事には重要なショートカットとなる。
この建築の物語を紡ぐ動線は、豊かな居場所の提供と、シーンの変化を生みだすが、それが不合理なもので留まってはならないよう配慮されている。

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段差の付けられた天井は造作ではなくRCの躯体ままだ。段差の縁に付くはスチール(亜鉛メッキ+リン酸亜鉛)のフレームには照明が納まる。
木繊セメント板はコンクリート型枠としてそのまま使ったもので、テクスチャーとしての豊かさはもちろん、吸音や調湿の効果をもたらす。

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ダイニングの奥はリビング。こちらも複雑な段床と岩山を彷彿させるオリジナルのソファ。六角形の部分はオットマン。

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照明を点けると違う空間が現れたようだ。

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リビングの開口2面にのみ外付けブラインドが備わる。

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この建物、中庭に面した内側は複雑な多面で構成されているものの、外側は敷地なりのシンプルな矩形だ。それが感じられないように、角にはエレベーターや洗面室を配し、各所が家具で作り込まれている。

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半階上がって子どものフロアへ。

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子どもフロアは、まず造り付けのデスクと、洗面室とシェルフが並ぶスタディスペース。奥に子どもたちの寝室がある。

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ホテルライクな洗面室。

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スタディスペースを見返す。正面と右手の外壁は直角なのだが、雑壁、建具、家具によって作り込まれ、どこが角なのか全く分からない。

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振り返ると、立体的に配された子ども室が3室。

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6角形や7角形の平面と凹凸のある断面。

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それぞれ形や、開口からの景色が異なる。

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3階へは親の寝室。どこまで上がっても植栽が見える。

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奥さまの寝室。化粧台や、ベッド脇でリラックスしながら読書できるように設えてある。

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ご主人の寝室。可動式のテレビや大容量の収納が設えてある。奥は2階のリビングに通じており、仕事で遅く帰ってきたときなどにも短い動線で部屋に入ることができる。

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半階上がって見返す。そして水回りへ。

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山登りもいよいよ9合目。抜かりなく統一された雰囲気を持つ水回り。

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段床は浴室でも続く。

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カルデバイのホーロー浴槽に浸かりながら、植栽と空を眺められる開放的な浴室。

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露天風呂の雰囲気だ。

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遂に山頂(屋上)へ。
この造形は模型を作らずに全て3DCADのみで検討・設計していくという。

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柱壁が上下フロアで接続していない箇所が多く、「構造計算ができない」と構造家が何度か変わった。

そして施工業者は複雑すぎて施工図が描けない、配筋業者はどこに配筋すればよいか分からない、など全ての関係業者にとってチャレンジだったそうだ。

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屋上にはアウターリビングが設えられた都心のオアシスだ。階段でもエレベーターでもアクセスできる。

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子ども室のあった辺りの外観はこのように。
植栽は30面近くあり、業者による定期的なメンテナンスが当然必要だ。

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井手孝太郎さん。「全てPC上の三次元空間の中で立体で計画します。全体構成を押さえた後は、シーンを紡ぐように、一つ一つの空間を手で掘り進めていくような作業でした。そこに手彫りのpathが残りました。誤解を受けがちですが、PC上では実在模型よりも原寸大でよりプリミティブな作業の集積が出来ます。彫刻家に憧れた時期もありましたが、かなり近い作業を楽しみました。」

【 Path 】
・設計監理:アールテクニック/井手孝太郎
・構造設計:設計直/北山直身+小山内博樹
・施工:和田建築株式会社

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