House-M

Kazuhiko Kishimoto
18. 10月 2022
All photos by Neoplus Sixten Inc.
葉山御用邸の近く、大浜海岸まで徒歩1分ほどの敷地は南北に長く、“くの字” に変形し二面接道している。
筆者の背後に大勢の来客に対応した4台分の駐車場がある。駐車場からアプローチを進むと、1階の座敷と庇が建物のボリュームとは角度を変え来訪者を迎えるようこちらを向き、庇下はピロティとなって敷地北側に真っ直ぐ抜けている。
1階座敷は縁側、ピロティ、テラスと屋外へ積極的に連続してる。
この敷地には1930年代竣工の古い木造住宅が建っていて、近所の幼稚園が海岸への中継地点として別棟的に借りていたという。園はほかに施設を設けたことで建物の借り手がなくなり売りに出たことで、この施主が取得し、リタイヤ後の終の棲家とすることとなった。
子どもが大好きな施主は、この場所の雰囲気を引き継ぐように、今後も園児たちが気軽に立ち寄れる開放的な建築を望んだ。
訪れた園児たちが麦茶でも飲みながら寛げるようにテラスと縁側を設え、座敷は休日に都心から孫がやってきて寝泊まりできる客間となる。
ピロティを抜けるとシャワーがあり、浜から帰ってきてまず体を流すことができる。
北側から。高低差のある敷地は既存では同じ位置に階段はあったものの、隣家のように擁壁と柵で囲われていたが、それらを撤去し、丘のような自然なマウンドとし、街に開き、園児がアクセスしやすい建ち姿とした。
右下からは地下室の倉庫に出入りできる。倉庫は園児たちが海で遊ぶモノを収納したり、設置した洗濯機も自由に使ってもらえるようにしているという。
ピロティから玄関へ。左に座敷、右下に地下室、半階上がって寝室2室と水回りとなる。
主寝室。階段室と同系色のモノクロで採光は少なめだ。
2階へ。
モノクロの空間から一転、白木とビビッドな有彩色、ポール・ヘニングセンのペンダントライトにアルネ・ヤコブセンのセブンチェアでミッドセンチュリーの空間へとガラッと雰囲気を変える。
7〜8人が掛けられるダイニング。テーブルはオリジナルで天板はロシアンバーチの合板。
奥には書斎が見える。
二面の開口を持つキッチンは、奥様の「明るいキッチン」という要望に応えた。
上部にスピーカーまである。
書斎からは借景で多くの緑を望むことができる。
スキップで上がると光溢れる明るいリビング。施主が元々持っていたNychair X(フォールディングチェア)に合わせて、オレンジの造り付けソファが囲む。
吊り棚にはパイロットだった施主が乗り継いできた旅客機の模型が並ぶ。
リビングからは掃き出しでバルコニーに連続する。
広いバルコニーはアウターリビングとして活用していく。
そして階段でさらに上へ。
施主からの要望として「海と富士山が見えるようにして欲しい。」とあったため、この屋上によって相模湾とその向こうに富士山を望むことができる。
ヨットにも乗っていた施主はマストをアクセントで取り付けた。
反対側は葉山の街と山並み。
上空には航空路線が通っており、飛行機雲が描かれる。パイロットとして飛んでいた大空に思いをはせることもできるそうだ。
写真をご覧になり複雑な平面で計画されていることに気づかれると思う。ひとが決めた敷地割に合わせるのではなく、周囲の自然や太陽に合わせて細かな調整を重ねた結果だ。
施主の村松さん(左)と、岸本和彦さん。
「敷地を初めて訪れたとき、ここに90年近く建っていた建物と、この土地の雰囲気を継承したものを、建築家として創らなければならいなと思いました。子どもたちが集う賑やかで開放的なこの杉板下見張りの家は、お施主さんのご子息やお孫さんに引き継がれた際にも、なぜこんな家なのかということが伝わっていってもらえたらと思います。」と岸本さん。
【House-M】
設計・監理:岸本和彦/acaa
構造設計 : 諏訪部高広/諏訪部建築事務所
施  工 : 石和建設

用  途 : 個人住宅
構  造 : 木造
規  模 : 地上2階建
敷地面積 : 338.96m²
延床面積 : 115.73m²

Posted by Neoplus Sixten Inc.

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