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Hiroyuki Ito | 22. 1月 2025
All photos Neplus Sixten Inc.
地下鉄麻布十番駅から徒歩10分。1階がテナント、2階から9階が15住戸からなる複合集合住宅。
通常であれば道路斜線で建物の途中から斜めにカットされてしまうが、今回は建物をできるだけ高く天井高を取るために天空率を使った。
天空率を操作し易いよう四隅に柱のない構造とし、その四隅が豊かな外部空間となるようデザインした。
大きく抜く箇所を随所に作り様々な性格の住戸を検討している。
手前は柱梁の様子が分かる構造模型。門型の柱梁を井桁状に組み上げ、四辺は逆梁で腰壁としている。角のバルコニーとなる箇所は逆梁をキャンティレバーで突き出し、片側1本の梁で床を支持している。
(©Hiroyuki Ito Architects)
抜けたり閉じたりしているデザインイメージを施主やチームで共有するために伊藤さんは洛中洛外図を引用した。様々な季節を表す風物や行事が多数描かれ見え隠れする様子を、集合住宅における住み手の多様な活動を一つのフォーマットに収めていくことに繋がるのではという考えだ。
外壁は外断熱ということもあり柔らかな表情を持たせるため櫛引仕上げとした。しかも斜めにうねるように櫛を引き、日の角度や見る角度によって移ろう表情が出るよう試みた。
1階は様々なテナントに対応できるよう天井高4m、前面に3台分の駐車スペースも設けた。
南側 (左) は窓先空地に緑の庭に設え、サクラを植えるなどして店舗からの景色に配慮した。また駐車スペースにアオダモを植え、場合によっては店舗のテラスとして一体的に利用することも可能としている。
前述の門型の柱梁が井桁状に構成されている様子が見える。
エントランスは2層吹き抜け。
右上にキャンティレバーの逆梁が突き出している。上階ではここに床を張ることでバルコニーになっている。(下の白い壁は雑壁)
右奥は駐輪場。
エレベーターホール
梁を意匠のきっかけに利用している。
901号室
麻布十番駅より徒歩10分という利便性の良い人気のエリアであり、グレードも比較的高く賃料も高めのアパートとなる。
コストとグレード感を両立させるため、まず天井を3mと高く設定し、そこから構造や天空率などの検討がはじまった。
梁成は1,100mmで、露出している部分が900mm。壁を構造とせず柱梁だけで固め、住戸によって様々な間取りや開口となる。
井桁状に交差する柱梁。スパンを長くすると梁成がもっと大きくなるので無理をせず梁の中心に柱を落とした。しかしこの柱が各住戸で間取りを豊かにするきっかけともなる。
住戸の外側 (窓側) は逆梁で腰壁とし、高さ約2mの上部が抜ける開放的な窓となる。
最上階の2室は8階と9階のクロスメゾネットで、さらに左の階段を上がるとこの部屋とほぼ同じ広さのルーフテラスもある。
キッチンから。掃き出しのバルコニーが連続することで使い方が広がる
集合住宅では珍しく水回りからバルコニーに出られる。四隅のうち一つは外部階段で、三つの角のどこかしらにバルコニーがあるのだ。
外部階段
腰壁と同じ逆梁を伸ばし、そこに階段が乗るように支持されている。
701号室
この住戸は1フロアを専有しており、井桁の中央にLDを配置し全方向に空間が連続する。
個室が3つある3LDKで、各部屋は全開できるよう折れ戸を採用している。バルコニーも2つあり、東から西へ1日を通して日が当たる。
東側はキッチン、バルコニー、外部吹き抜け。
外部吹き抜けは6階バルコニーの上に当たる。
キッチンからはバルコニー越しに外が見通せる。
キッチン周りは製作。
南西のもう一つのバルコニーは8階・9階を突き抜け真上に空が広がる。
反対側のバルコニーは開いているので、こちらは壁を立て開放的になりすぎないよう差をつけている。
601号室は2LDK。6階5階は1フロアに2住戸ある。
この住戸が一番バルコニーが広く(801・901のルーフテラスを除く)面積の1/3程がバルコニーとなる。
南に向いたバルコニーの3/4は屋根があるので外部空間を楽しみたい住み手にはうってつけだ。
隣の602号室も1LDKだがプランが全く異なる。
柱をきっかけにキッチンやリビングなどが仕切られ、収納なども置くことができる。
東向きの住戸だが、建物の4隅が開放しているのでこれだけの開口が実現できる。
バルコニーはリビングの延長のような使い方も可能だ。
501号室は梁の交点が中心にあり、引戸で細かく仕切られる3LDK。
実は601号室はこの上で同じプランなのだが、一方が全てバルコニーなので気付かなかった。このように同じプランでも全く性格が異なる住戸にデザインされている。
量感のある梁が印象的。
この住戸は居室を優先し、バルコニーは小さめだ。
502号室
602号室同様中心に柱が落ちるプランだが、東面が全面開口となる。
居室を広げることもできるだろうが、奥行きの浅いバルコニーとしながら天高3mのフルハイトの開口がホテルのようで贅沢な演出だ。
「腰壁にプランターを並べたら良さそう。」と伊藤さん
バルコニーは2層吹き抜け。天空率を使った場合ならではのデザインだ。
2階、エントランスの吹き抜けに面した共用部。
201号室は田の字プラン。
引戸を組み替えて様々な性格の部屋に変えることができる。
202号室
2階の2住戸はオフィス利用も想定したレイアウトと仕上げ。
奥から見返すと共用部とも連続するような住戸になっている。


「開放的な井桁状の構造を不定形な外皮で覆うことで様々な居場所を生み出しています。場所柄外国の方も多く住む可能性が高く、日本の都市部の様々な風景を室内に取り込みながら住み手の多様性も内在し、それらが都市に見え隠れするような、そんな雰囲気のアパートにしました。」と伊藤博之さん
Plans
【hanaqumoi】
Hanaqumoi Apartment, Hiroyuki Ito Architects

設計・監理:伊藤博之建築設計事務所
構造:多田脩二構造設計事務所
設備:テーテンス事務所
照明:杉尾篤照明設計事務所
施工:青木工務店
建物用途:共同住宅 (15戸)、テナント
規模:地上9階
構造:RC造
敷地面積:359.87 ㎡
建築面積:199.23 ㎡
延床面積:1310.96 ㎡

Posted by Neoplus Sixten Inc.
 

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