SENDAGAYA TERRACE

CAt | 29. 5月 2025
All photos by Neoplus Sixten Inc.
敷地は副都心線北参道駅から数分の住宅密集地。両脇に2〜3階建ての住宅が並ぶ路地の突き当たりは、工事車両が横付けできずかなりの難工事だったそうで、木造或いは鉄骨造用の長尺の資材が搬入できないことから必然的にRC造になった。
敷地はさらに東に奥まっており、RC造3階建ての立面を一望することはできない。
1・2階が賃貸事務所でそれぞれ3室ずつの計6室、3階が2住戸の長屋となる。
事業主は2020年に手掛けた「ROPPONGI TERRACE」と同じシマダアセットパートナーズ。
アプローチは奥にいくに従って狭くなり、そこに面して各テナントの間口は両開きの鉄扉が付く。
ファサードは控え目なRCの庇が横一線意匠的に突き出しているほか、大開口のサッシュとエキスパンドメタルなど金属とガラスで覆われ、一見するとS造に見える。
エキスパンドメタルの部分は中央縦方向のPS、横方向のテラス (バルコニー) に用いられている。
1F平面図
一番奥の103号室
概ね各室共通の構成として 、床が2種類に切り替わり、外壁に面した壁は断熱材と共に打ち込んだ木毛セメント板、内側の壁はRC打ち放し、天井はRC打ち放しと上部が外部に面する部分は木毛セメント板、そして上階で小上がりになっている部分がデッキプレートとなって天高が上がっている。
断面図
北側 (右) は隣地の擁壁がありがけ条例に掛かってくる。そのため1階北側にはハイサイドライトしか設けられないため薄暗い。そこで南側を逆梁として天高を上げ、外光と開放感を得ようとした。結果、上階では小上がりが生まれゾーニングにも活用されることになる。
そして各室にフルハイトのFIX窓がある。隣地の建物が迫っているものの、隣は視線を隠すフェンスを立ててくれているので、こちらは大きく開口を取れる。
梁を貫通する照明が見えるが、梁に孔が開けられる位置を考慮して照明が計画されている。
壁柱を利用したユニークなレイアウトのキッチンで両側から使える。またその周囲は2つの引戸で様々に仕切ることができる。
スタイリング家具によって住居にみえるが、浴室のないあくまでも事務所となる。
照明を消すとハイサイドライトから光が地層のような壁にグラデーションをつくり地下にいる雰囲気になる。
この壁については次で説明する。
外部階段で2階・3階へ。
南・東・西が3階建ての建物と、北は高低差による3mの擁壁と塀に囲われている。この階段はボリュームが大きくなりすぎない分棟のようにしながらも、地面が裂けその先に青空と樹木が覗くような風景に見える。
あたかも地下に埋もれているようなこの建物であるが、厳しい条件の中でどれだけ抜けや開放感を生み出すか各所で建築家の意地を感じる。
まだ手摺りが1本未施工で、完成すると長屋用2経路、事務所用1経路の階段となる。
階段横にはインターホンと “301” と穿たれた鉄扉がある。
扉を開けると301号室専用のエレベータが現れる。一面がスモークの鏡張りで特別感を演出。
(Photo: CAt)
硬化遅延シートを使って洗い出した外壁は、先の103号室の壁と同じ表現。
RC部は外壁の洗い出しと、室内ではOSB、針葉樹合板、浮造り杉板の型枠を用いて表情豊かに仕上げられている。
2階事務所へ。
床や階段は下が室となるので全面デッキ張りとした。
三角の窓は、103号室のハイサイドライト。間接照明が共用部を照らすアクセントにもなっている。
右手 (北側) が3mの擁壁とさらにコンクリート塀を持つ隣地。企業の研修施設で豊かな植栽があるものの人の出入りが殆どない。
2F平面図
203号室
先に紹介した103号室の上の室で、2/3ほどが土間で南側に小上がりのフローリングスペースとなる。
建具は内装用ラーチ合板に薄いグレー塗装仕上げ。
右上の天袋にエアコンが納まる。
反対側は1階同様大きなFIX窓。隣の窓がない箇所を狙って開口させ、かつ白一色なので自分の壁にも見えるうえに反射光で明るくなる。
折れ戸を全開にできるので緑が近い。(手摺工事未完了)
202号室
こちらは小上がりがL字型。右奥はトイレで、左奥はエレベーターシャフト。
2階ではこの室のみテラス (バルコニー) が備わり、折れ戸で全開にできる。
3階で大階段を見下ろすと、地下から地上に登ってきたようにも見える。
3階平面図
302号室
3階の2室は住居で、ルーフテラスが備わる。
住居ということもあり、下の203号室とは反対に土間が狭く、小上がりが広くなっている。
301号室
事務所2室分を使う広い住居。
北側隣地の植栽を借景として最大限利用。訪問時はハナミズキが満開だった。
右手の階段はルーフテラスへ。
壁柱の裏側にトイレを配した回遊型プランで、壁柱を境に引戸で3つの空間に仕切ることもできる。
テラス (バルコニー) ももちろん折れ戸で全開にできる。
反対側はインナーテラスとして設え内外が連続する。
エレベーターで上がるとここに出てくる。
ルーフテラスから
明治通りに面して高層ビルが並ぶが、手前の3階建て住宅の多くが屋上を利用していることがわかる。つまりこの建物も含めそれぞれの建物のファサードが街並みをつくっているのではなく、地上10mのここが地上で街並みとして現れ、その地下に建物本体がある。そのように感じ取られる。
赤松佳珠子さんをはさんで、大村真也さん (右)と、担当の町田純一さん (左) 

「クレバスのように切り開いた外部階段やアプローチは、わずかに敷地に接続した路地と人の営みが表出するようなテラスや土間空間を連続させ、光や風が通り抜ける。現代の資本主義経済が生み出した台地に、風通しのよい人間のための空間を獲得しようとした試みです。」
【SENDAGAYA TERRACE】

建築設計:CAt / 赤松佳珠子・大村真也・町田純一・小野晃央 (元所員)
設計協力:池村潤 / M+2 一級建築士事務所
設計監理:CAt / 赤松佳珠子・大村真也・町田純一
構造設計:構造計画研究所
設備設計:Y.M.O.
施工:TH-1
構造:壁式RC造
規模:地上3階
敷地面積:187.70 ㎡
建築面積:125.61 ㎡
延床面積:310.02 ㎡

Posted by Neoplus Sixten Inc.
 

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