密集市街地の光階段

Araki + Sasaki architects
21. 2月 2023
All photos by Neoplus Sixten Inc.
通りから車一台がようやく通れる細い路地、そこからさらに入った住宅密集地。地域が寄り添うように暮らす閑静な敷地。
敷地面積45㎡に建築面積26㎡のコンパクトな住宅。
二面接道する北側に玄関。白いガルバリウム鋼板張りのボリュームに縦3連の開口がアクセントとなる。
玄関扉を開けるとタイトル通りの「光階段」が現れた。
階段室は3層の吹き抜けで、南側にも天井までの開口が連なり、床は通り土間で南北を貫いた垂直水平に抜ける空間となっている。
これだけ開いていると熱環境が気になるところだが、今回採光と断熱をまず重視した計画となっている。
施主はYKK APに勤めており、自身が担当した玄関扉や自社のサッシュを採用し、実際にどのような断熱効果があるのか試すそうだ。断熱性能をHEAT20のG1〜G2の間を設定し、低炭素建築物の認定を取得した。
1階は左奥に水回りと、ウォークインクローゼット。左手前にはリモートワークできるよう小さいながら書斎を設けた。壁の有孔ボードはハンギング収納用の壁。
通り土間を抜けた南側は、より住宅が密集した環境で、隣家の私有地がモザイクのようにからまりなりながら、共用の路地広場を形作っている。
施主は夏場の日差しを和らげるため全ての開口に庇の設置を望んだ。まつげを付けたような愛らしいファサードとなっている。
2階LDK。オープンな室内は家族が自由に行き来する。
スキップフロアも検討したが床が細かく分断されるので、水平空間が積層するボリュームと垂直に抜けるボリュームとが明快に分かれる構成とした。
3層取るために2階の天高は2.3m、1階と3階は2.1mと抑えめだが、明るい吹き抜けの階段室に開放しているので気にならない。
南側(左)の開口からは借景で桜を眺められるように網無しの防火ガラスを採用。
キッチンはtoolboxでオーダーし設えた。フローリングはマルトクの無垢ナラ材。
壁や階段は淡いグレー。現場にクレーン車が入れないので、階段は二つに分けられて搬入され、滑車で吊り上げながら溶接したが施工できる業者を探すのも苦労したそうだ。
階段室南側の窓は樹脂アルミ複合の防火サッシュで、その最大寸法のものをできるだけ上下の隙間を詰めて3段に積み重ねた。サッシュに合わせた立面なので必ずしも床スラブとは合っていない。しかし外観からは吹き抜けが強調されたデザインとなっているのだ。
左の壁は耐力壁で、窓の間の梁で右の居住ボリュームを支持している。
3階。手前が子どもスペースで、奥が寝室。中央のコアは収納で、その壁は施主家族が思い出になるよう自分たちで塗装するそうだ。上はロフト。
左に造り付けの勉強机で、床に2階と空気の交換をするがらりが見える。
正面はトイレ。
元々トイレは1階のみの計画であったが、途中で3階にも欲しいということになった。ファサードの3連開口意匠は残したい(かつ消防進入口である)ため開口はそののまとし、ブラインドを設置する。
トイレとなる前は階段室に突き出す踊り場のような小さな居場所として計画していた
共同代表の佐々木珠穂さんと、担当の齋藤匠さん
「狭小の密集市街地で最大限の床面積を確保しながらも、南側の少しの空地を手がかりに、十分な日照を得ることを目指しました。環境の増幅器となっている吹き抜け部分にはダイナミックな階段が回り、くるくると生活が展開します。小さな環境の中で、分け合っている空地や庭木、道路にはみ出した植木等のささやかな共有財産に目を向け丁寧に応えていくことで、内部の豊かさも増幅され、周囲にもささやかな貢献ができるのではないかと考えています。」と佐々木さん。
【密集市街地の光階段】
設計・監理:アラキ+ササキアーキテクツ
構造設計:ラケンネ
施工:栄建

敷地面積:45.13 ㎡
建築面積:26.06 ㎡
延床面積:76.16 ㎡
規模:木造3階建(準耐火構造)
用途地域:第一種住居地域
高度地区:第3種高度地区
防火地域:準防火地域

Posted by Neoplus Sixten Inc.

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