STEALTH

Satoshi Kurosaki / APOLLO | 1. 7月 2025
Photos by Neoplus Sixten Inc. + Masao Nishikawa
地下1階。地上3階+ルーフバルコニーで、間口は約16m。御影石の一種ウェーブグレーを纏ったクローズドファサードで内部の様子を伺うことはできない。
豪邸の多いこの地に相応しい重厚で洗練された表情だ。
1階部分の仕上げは溶融亜鉛メッキリン酸処理のスチール。上部とは切り離す表情で重くなりすぎないようにしている。
玄関ホールは2層吹き抜け。背の高い階段室の壁を利用して山口歴のアートが飾られる。
(Photo: Masao Nishikawa)
玄関ホールから右手に車8台が納まる大きなガレージが見える。
(Photo: Masao Nishikawa)
中央に100角の無垢鉄柱が1本だけの空間を実現した。壁のない箇所にも少し細い無垢柱が落ちるが、その位置は上階の空間取りにも影響してくるので慎重に検討した。
車に美しい曲線が映り込むライン照明を採用している。
(Photo: Masao Nishikawa)
施主からガレージにも自然光が欲しいとの要望で、北側を地下から3階までの外部吹き抜けのライトウェルを通した。1階では半分はテラスにしてプランターを設置できるようにしている。
(Photo: Masao Nishikawa)
ゆったりとした回り階段は、地下から塔屋まで5層を繋ぐ。
エレベーターもあるが階段で3階へ。
(Photo: Masao Nishikawa)
3階リビングダイニング。
南北両側に全面開口し、南側にはテラスとプール。北側は地下のドライエリアまで通じる4層の吹き抜けとなる。
テーマは「都心のシークレットヴィラ」。
南側は3枚引戸を開放し、リビングがテラスまで延長される。さらにインフィニティプールで植栽まで連続しリゾートホテルの趣だ。
テラスの奥行きは2.7mで同じ出幅の庇が夏の日差しや雨を遮り、屋外での楽しみを広げてくれる。プールは2.7m×12m、1/3は水盤となっている。視線を遮りながらもリゾート感を演出する植栽はSOLSOによる。
袖壁はファサードと同じウェーブグレーストーン。床はセラミックタイルを選んだ。テラスは水勾配を取らず水平にして、透かし目地から排水する。
夕景。
テラスにはPaola Lentiの屋外チェアを選び、よりリゾート感を演出している。
APOLLOでは初めて採用したリブ天井に、間接照明が美しいグラデーションを描いている。
(Photo: Masao Nishikawa)
北側は隣家からの視線をコントロールできるスチール製のルーバーを設えた。正面からは遠くの高層ビルまで見通せるが、横側からは近隣の視線を遮る。ルーバーの傾斜は北側斜線による角度。
LDKはキャビネット (リネア・タラーラ製作) で緩くゾーニングされる。ダイニングはテーブル・椅子共にAtelier OiがデザインしたLOUIS VUITTON、ソファはMolrteni。
施主が用意したLOUIS VUITTONのハンギングチェア「コクーン」が吊り下がる。このブルーが決まっていたので、インテリアの色味はあまりダークにせず、青みのある少し明るめでカジュアルなカラー構成としている。
西側を見る。
左奥にセミクローズドのキッチン、階段とエレベーターが並び、右奥はトイレとなる。
キッチンはMolrteniのアイランドで、チェポストーンの天板を選んだ。
奥の引戸はパントリーへ。
キッチンからはリビング・ダイニングの気配も感じられながら、プールや植栽全てを眺められる特等席。
2階は水回りや寝室などのプライベートエリア。
3階とは異なり、南は閉じて北側のライトウェルに対して全室が向いて開いている。
(Photo: Masao Nishikawa)
浴室もリゾートホテルの雰囲気。
(Photo: Masao Nishikawa)
浴室は主寝室に面したバルコニーや、ワードローブ (リネア・タラーラ) に通じ、そこから主寝室へと、これらを回遊できる動線となっている。
(Photo: Masao Nishikawa)
南西の角には書斎。ちょっとした居場所になるよう坪庭も備えてある。右下は玄関ホール。
(Photo: Masao Nishikawa)
廊下には収納のほか、ウォークインクローゼットがもう1室、それとトイレ。上部がプールのため天高は抑えられている。
(Photo: Masao Nishikawa)
子ども室 (大学生) は約50㎡あり、ワードローブ、デスク、キングサイズベッド、リビング、バルコニーが連続するホテルの一室のようだ。
(Photo: Masao Nishikawa)
反対側のワードローブ。
(Photo: Masao Nishikawa)
地下はアクティビティエリア。ドライエリアに面してジムとゴルフレンジ、カラオケルームもある。
(Photo: Masao Nishikawa)
たっぷりのグリーンで地下とは思えないドライエリア。
カラオケルームは5〜6人で楽しめる広さで、DJブースもある。
(Photo: Masao Nishikawa)
屋上。全面人工芝を敷いた愛犬のためのドッグランとなっている。
黒崎敏さん
「8台の車を収納でき、都心でもリゾート気分が味わえるようにというのが施主からの大きな要望でした。インフィニティプールや多くの植栽、そして南北で光を効果的に導きそれを実現しました。ホテルと住宅の中間に位置する『スモールラグジュアリーハウス』と言えるでしょう。」

黒崎さんの前に置いてある本はAPOLLOの25周年記念となる3冊目のモノグラフ「TIMELESS」で、FRAMEから出版された。
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“黒崎敏が東京においてAPOLLOを創設したのは2000年のこと。そこから四半世紀にわたって、200棟を超える建築を日本、そして世界中で手がけてきました。

各場所のそれぞれが有する記憶やストーリーを独自の解釈で建築に組み込むことや、徹底的に引き算を重ねることで現出されるラグジュアリネスなど、常にAPOLLOだからこそ実現できる、唯一無二の解を提示し続けてきました。

この本では、APOLLOのこれまでの足跡、そして私たちが共有する重要な理念を紹介します。事例として掲載する14の住宅それぞれに込められた物語や、体現したアイデアをひもとくことで見えてくる独自の矜恃。また、10のキーワードを読み解くことで感じられる強固な哲学。これまでに手がけてきた一つひとつの点がつながり線となってゆくことで、APOLLOの考え方や歴史、さらにはこれから続いてゆく未来までをも感じ取っていただけるはずです。

この一冊を通して、私たちAPOLLOを、世界中の皆さまに体感いただければ幸いです。”

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