吉村靖孝展 マンガアーキテクチャ― 建築家の不在
Yasutaka Yoshimura | 17. 1月 2025
All Photos Neoplus Sixten Inc.
「吉村靖孝展 マンガアーキテクチャ― –建築家の不在」レポート。建築家個人の作家性を「不在」にしたら何が起きるのか?吉村氏の7つのプロジェクトを題材に、7人の漫画家が自由に描き下ろし、建築の新たな解釈の可能性を探る。TOTOギャラリー・間にて2025年3月23日まで開催
Yasutaka Yoshimura: MANGARCHITECTURE―Absence of an Architect
【展覧会コンセプト】
90年代の終わりに大学院を休学してMVRDVという設計事務所で働きはじめたとき、彼らがつくる模型がOMAの模型と似すぎていて驚いたのだが、のちにそれは同じ模型屋の仕事と知り、二度驚いた。模型をつくることが建築家の仕事ではなくなっていることにも、はたまた違う建築家同士が模型のテイストを共有しうることにも驚いたのである。
もはや模型は、建築家を表現するものとは言い切れなくなった。自らの手で図面を引く建築家も今では稀だろう。建築家の作家性というときの「作家性」とはいったい何なのだろうか?
そこでTOTOギャラリー・間での展覧会という、まさに作家の自己表現が問われる舞台で、あえて作家性を消してみることにした。今回注目したのは、模型でも図面でもなく「漫画」というメディアだ。僕が設計した7つのプロジェクトをとりあげ、7人の漫画家に依頼してそれぞれ建築から発想される世界を描いてもらった。
実は僕は2年前に脳出血を発症し、今も後遺症と格闘しているのだが、その病気が治癒する期間とTOTOギャラリー・間の展覧会をつくりあげる期間がぴったり重なってしまったことも、この展示案を後押ししたと言えるだろう。創意を尽くして描かれた漫画が建築家の想像を軽々と超えていくさまを、ぜひとも体験していただきたい。
–吉村靖孝
90年代の終わりに大学院を休学してMVRDVという設計事務所で働きはじめたとき、彼らがつくる模型がOMAの模型と似すぎていて驚いたのだが、のちにそれは同じ模型屋の仕事と知り、二度驚いた。模型をつくることが建築家の仕事ではなくなっていることにも、はたまた違う建築家同士が模型のテイストを共有しうることにも驚いたのである。
もはや模型は、建築家を表現するものとは言い切れなくなった。自らの手で図面を引く建築家も今では稀だろう。建築家の作家性というときの「作家性」とはいったい何なのだろうか?
そこでTOTOギャラリー・間での展覧会という、まさに作家の自己表現が問われる舞台で、あえて作家性を消してみることにした。今回注目したのは、模型でも図面でもなく「漫画」というメディアだ。僕が設計した7つのプロジェクトをとりあげ、7人の漫画家に依頼してそれぞれ建築から発想される世界を描いてもらった。
実は僕は2年前に脳出血を発症し、今も後遺症と格闘しているのだが、その病気が治癒する期間とTOTOギャラリー・間の展覧会をつくりあげる期間がぴったり重なってしまったことも、この展示案を後押ししたと言えるだろう。創意を尽くして描かれた漫画が建築家の想像を軽々と超えていくさまを、ぜひとも体験していただきたい。
–吉村靖孝
3階ギャラリーと4階ギャラリーは同じプラン
3階は実際のマンガが並び、中央にそれぞれの漫画からインスパイアされたインスタレーション。
書棚、読書スペース、奥にリサーチ資料。
3階は実際のマンガが並び、中央にそれぞれの漫画からインスパイアされたインスタレーション。
書棚、読書スペース、奥にリサーチ資料。
4階は漫画の題材となる建築で構成されている。
各作品の図面が並び、中央にそれぞれの模型、書棚、読書スペース、リサーチ資料も同じ配置。
各作品の図面が並び、中央にそれぞれの模型、書棚、読書スペース、リサーチ資料も同じ配置。
参画した漫画家の一人、座二郎さんは早稲田大学で建築を学んだ吉村さんの後輩で、そこからの紹介で企画に賛同した漫画家が協力してくれた。
作品は20ページ前後の読み切りで、大判に拡大されたものが自由に閲覧できる。
作品は20ページ前後の読み切りで、大判に拡大されたものが自由に閲覧できる。
本展のポスター
コマ割りされているが、漫画の読み順と同じ右上が1コマ目で、左に進み、右下に移動するように1コマ目から7コマ目が各作品番号となる。
コマ割りされているが、漫画の読み順と同じ右上が1コマ目で、左に進み、右下に移動するように1コマ目から7コマ目が各作品番号となる。
お題となる4階の模型。
模型もインスタレーションも上記のコマ割りと同じように並んでいる。
以下より、題材の模型とその漫画、インスタレーションをグルーピングして紹介。
模型もインスタレーションも上記のコマ割りと同じように並んでいる。
以下より、題材の模型とその漫画、インスタレーションをグルーピングして紹介。
1.〈Nowhere but Sajima〉2008、神奈川県横須賀市
海辺に建つ貸別荘
海辺に建つ貸別荘
1. コルシカ 〈Nowhere Man〉
1. 〈時間差のある窓〉
映像によるコマ割で、カメラの前の出来事が2秒ずつずれて表示される。
これら3階のインスタレーションは吉村さんと早稲田大学吉村研の学生たちによる作品だ。
映像によるコマ割で、カメラの前の出来事が2秒ずつずれて表示される。
これら3階のインスタレーションは吉村さんと早稲田大学吉村研の学生たちによる作品だ。
2. 〈Red Light Yokohama〉2010、神奈川県横浜市
店舗・ギャラリー
店舗・ギャラリー
2. 川勝徳重〈緑の光線〉
2. 〈束になった緑〉
ブースに入り30秒ほど緑を眺め、ぱっと振り返ると辺りが赤く(ピンク)見える補色残像効果を体験できる。
成功のコツは緑の濃い部分を瞬きせずに30秒凝視すること。
ブースに入り30秒ほど緑を眺め、ぱっと振り返ると辺りが赤く(ピンク)見える補色残像効果を体験できる。
成功のコツは緑の濃い部分を瞬きせずに30秒凝視すること。
3. 〈窓の家〉2014、神奈川県葉山町
相模湾を望む海辺の週末住宅。
相模湾を望む海辺の週末住宅。
3. 德永 葵〈たまてばこ〉
3. 〈ゆがむ窓の家〉
漫画の中で変形したり動き出したりした〈窓の家〉を立体化した。
漫画の中で変形したり動き出したりした〈窓の家〉を立体化した。
4. 三池画丈〈MONSTRO〉
4. 〈リアル・アトモス〉
漫画に登場する生命体 “アトモス” を建築模型のように立体で表現した。
漫画に登場する生命体 “アトモス” を建築模型のように立体で表現した。
5. 〈ホームトゥーゴー #001〉2019
移動式住居
移動式住居
5. 宇曽川正和〈泡になるまで〉
5. 〈かたちを変える立体〉
漫画に登場したもっちりした生命体がモバイルハウスの中でどのように動くか想像し可視化した。
漫画に登場したもっちりした生命体がモバイルハウスの中でどのように動くか想像し可視化した。
6. 〈滝ヶ原チキンビレッジ〉2021、石川県小松市
鶏小屋
鶏小屋
6. メグマイルランド〈アコとマックス〉
6. 〈大きくて小さいマックス〉
漫画内での大きさを実物大にしてみた。一緒に並んで写真を撮るのも良い。
漫画内での大きさを実物大にしてみた。一緒に並んで写真を撮るのも良い。
7. 〈VERTIPORT〉進行中、三重県
コンテナを使った空飛ぶ車の発着場
コンテナを使った空飛ぶ車の発着場
7. 座二郎〈VERTIPORT〉
7. 〈原画の裏にあるモノ〉
手書きの原稿そのもの。建築模型のように創られた原稿は裏面まで興味深い。
手書きの原稿そのもの。建築模型のように創られた原稿は裏面まで興味深い。
漫画を読むことで、その建築への理解が深まる。
3階〈漫画建築史年表〉
漫画史の始まりはクロマニョン人が描いた洞窟壁画からはじまる。
3階と4階にある吉村さんの蔵書が架かる本棚。
〈Nowhere but Sajima〉に造り付けられた本棚の向きを回転させた。4階の模型の中でも表現されている。
〈Nowhere but Sajima〉に造り付けられた本棚の向きを回転させた。4階の模型の中でも表現されている。
3階中庭〈スケールフィギュアの庭〉
吉村さんが関わったり手掛けた建築のパースなどに登場した人物添景を実物大に拡大したもの。
学生時代のものから順に並んでおり、スケールフィギュアも時代によって変遷を遂げるていることわかる。
これらは建築資料でありながらマンガ的要素でもあり、3階と4階の間を繋ぐようなものとして表現した。
吉村さんが関わったり手掛けた建築のパースなどに登場した人物添景を実物大に拡大したもの。
学生時代のものから順に並んでおり、スケールフィギュアも時代によって変遷を遂げるていることわかる。
これらは建築資料でありながらマンガ的要素でもあり、3階と4階の間を繋ぐようなものとして表現した。
4階の図書閲覧コーナー
〈Nowhere but Sajima〉や〈窓の家〉を彷彿させる佇まいがテーブルと椅子だけで再現されている。
〈Nowhere but Sajima〉や〈窓の家〉を彷彿させる佇まいがテーブルと椅子だけで再現されている。
〈半動産建築年表〉
20世紀以降の半動産建築を集めその特徴を10のカテゴリーに分けた。カテゴリーは「止まらない家」など「~ない」で統一し、一般的な住宅との違いを明確にしている。主要なもののスケールを揃えモデリングすることで、一口に半動産といっても多様な現れがあることが明らかにした。
20世紀以降の半動産建築を集めその特徴を10のカテゴリーに分けた。カテゴリーは「止まらない家」など「~ない」で統一し、一般的な住宅との違いを明確にしている。主要なもののスケールを揃えモデリングすることで、一口に半動産といっても多様な現れがあることが明らかにした。
吉村靖孝さん
「ちょうど2年前脳出血を発症してしまい、その治療のため『建築家が不在』のまま展示の企画を進めることとなり、そこで漫画家という別の作家が介在して建築の姿を表現することで、どのようなことが起きるのかという問いでもありましたが、漫画家の皆さんが描いてくれた作品は自分の想像を遥かに超えたものができあがり本当に驚いています。」
「ちょうど2年前脳出血を発症してしまい、その治療のため『建築家が不在』のまま展示の企画を進めることとなり、そこで漫画家という別の作家が介在して建築の姿を表現することで、どのようなことが起きるのかという問いでもありましたが、漫画家の皆さんが描いてくれた作品は自分の想像を遥かに超えたものができあがり本当に驚いています。」
【吉村靖孝展 マンガアーキテクチャ― 建築家の不在】
Yasutaka Yoshimura: MANGARCHITECTURE―Absence of an Architect
会期:2025年1月16日~3月23日
開館時間:11:00~18:00
休館日:月曜・祝日、但し2月23日は開館
会場:TOTOギャラリー・間
詳細:jp.toto.com/gallerma/ex250116/index.htm
Posted by Neoplus Sixten Inc.
Yasutaka Yoshimura: MANGARCHITECTURE―Absence of an Architect
会期:2025年1月16日~3月23日
開館時間:11:00~18:00
休館日:月曜・祝日、但し2月23日は開館
会場:TOTOギャラリー・間
詳細:jp.toto.com/gallerma/ex250116/index.htm
Posted by Neoplus Sixten Inc.