「オスカー・ニーマイヤー展」レポート/会場構成 SANAA

Neoplus Sixten Inc.
21. 7月 2015
Photo by Neoplus Sixten Inc.

本展は、2016年のリオデジャネイロオリンピック開催を目前に控えた、日本とブラジルの外交樹立120周年記念事業の一つ。世界遺産をつくった巨匠オスカー・ニーマイヤーの日本初の大回顧展となる。
 

2012年に104歳で亡くなる直前まで、精力的に設計を手がけていたニーマイヤーの建築デザイン活動を、10点のマスターピースを中心に、図面、模型、写真、映像などを用い紹介する。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

〈プロローグ〉
愛したリオの写真。曲線が重要な要素であるニーマイヤーの作品としてロッキングチェアーも展示。このコーナーにある映像ではUFO(ニテロイ現代美術館)から降り立つニーマイヤーが見られる。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

20代から89歳までのニーマイヤー。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

160cmと小柄な等身大ニーマイヤーの前で解説をする東京都現代美術館チーフキュレーター長谷川祐子さん。
 

「いま人々が求めている建築は何か、と考えた時、ニーマイヤーの人間性を感じることができる建築ではないかという考えに辿り着きました。」

Photo by Neoplus Sixten Inc.

会場構成を担当した西沢立衛さん(SANAA)によるプレスツアーでのコメントを中心に紹介していく。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

1/10〜1/200という多彩なスケールで、その有機的でダイナミックな曲線とモダニズムの幾何学の調和を特徴とするデザインをフィジカルに感じることができる。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

〈パンプーリャ・コンプレックス/Pampulha Complex〉の3作品
 

これらはニーマイヤーらしさは勿論のこと、そのスケールの大きさを感じてもらうために選ばれた。

40年代のニーマイヤー初期の作品ながら、既にやりたい事やスタイルがほぼ確立されており、モダニズムの新しい可能性を発掘している。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

〈サン・フランシスコ・デ・アシス教会/Church of St. Francis of Assisi〉
ニーマイヤー作品はアーティストとのコラボレーションも重要なポイントだ。
タイルの模様が中外で連続している大胆な意匠とフリーハンドの魅力。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

〈ダンスホール/Dance Hall〉

Photo by Neoplus Sixten Inc.

パンプーリャ・ヨットクラブ/Pampulha Yacht Club〉
プールで泳ぎながらいつの間にか建築の中に入ってしまう。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

本展の模型はすべて野口直人建築設計事務所が担当した。野口さんの模型制作技術はSANAA勤務時代から突出していたそう。
 

図面がほとんど現存してないことから、余程のバランス感覚や直感力がないとニーマイヤー展覧会を開催することは難しいとされている。そんな中、様々なアプローチを経て今回この完成度に持っていった。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

〈カノアスの邸宅/Casa das Canoas〉自邸/House of the Architect
 

ミースへのオマージュで溢れている。

人工地盤で敷地の地形を変えてしまっている。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

壁面には影がある美しさを捉えたホンマタカシの写真。
 

本展は様々な写真家によるニーマイヤー作品が展示されているのも魅力の一つだ。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

〈国連本部ビル/United Nations Headquarters〉
ル・ コルビュジエとの共同設計。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

〈ブラジリア建設プロセス1956-1960/Brasilia Construction Process〉
ブラジリア首都計画の主要な建物設計に携わったニーマイヤー。荒涼とした土地に創造性豊かなひとつの都市をつくりあげ、ブラジルのイメージを一新することに貢献した。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

〈ブラジリア大聖堂/Cathedral of Brasilia〉

ブラジリアの建築計画の中でも特に象徴的。残念ながら模型の中には入れない。

壁面にはLeonardo Finottiや二川幸夫の写真。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

 未開の大地に身一つで乗り込んだニーマイヤーは現場でも設計を進めた。
 

先住民とのふれあいを持ちながら完成されていく様子なども。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

〈国会議事堂/National Congress〉
自転車競技のバンクのような内側の配筋作業。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

〈アウヴォラーダ宮/Alvorada Palace〉大統領官邸の柱
ブラジル大使の強い勧めにより、特徴のある柱をフィーチャー。
柱一本がなんとも言えないモニュメンタルになっているのがニーマイヤーらしい。

Photo by Neoplus Sixten Inc.
Photo by Neoplus Sixten Inc.

Iwan Baanによる壮大なブラジリアのバードビュー写真。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

ブラジリア建設の詳細なドキュメント映画は60分。時間に余裕を持って出かけたい。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

〈ニテロイ現代美術館/Niteroi Contemporary Art  Museum〉
本展では最も最近(1996年)のプロジェクトとして展示されている。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

花をイメージしており、岩の上に立つ時に意外と地形に合っているという不思議さがある。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

〈コンスタンティーヌ大学/University of Constantine〉
1969年アルジェリアに竣工。西沢さんが雑誌で最初に見たニーマイヤー作品だそうだ。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

敷地にゆったりと配置された建築群。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

〈イビラプエラ公園/Ibirapuera Park〉
約500m2のアトリウム全面を使った本展目玉のインスタレーション。1/30模型の世界を靴を脱いで自由に歩きながら、イビラプエラ公園を五感で感じることができる。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

巨大なカーペットにgoogleマップをほぼそのまま印刷した。 
小さい人型は2000人。木は500本植えてあり、植物公園としての多様性も再現している。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

〈産業館 - シッシロ・マタラッツォ・パビリオン/Pavilion of Industry - Ciccillo Matarazzo Pavilion〉
実物は幅250m。模型は1/30でも8mある。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

屈んで見ると違った風景が見えてくる。 
「ニーマイヤー展の依頼があったとき、一番好きなイビラプエラ公園が真っ先に浮かびました。ここでは特に彼の度量の大きさを感じさせる。雨漏りするなどデザイン的に問題があるところもありますが、『そんな細かいことはいいでしょ』とでも言うかのような寛容さのある建築だと思う。」と西沢さん。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

 〈アフロ ブラジル博物館/ Afro Brazil Museum〉

Photo by Neoplus Sixten Inc.

座ったり、寝転がったり、実際の公園のように思い思いの時間を過ごして欲しい。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

〈エピローグ〉
ニーマイヤーが2001年に描いた16mの直筆ドローイングが展示されている。
あらためて彼のドローイングがいかに自由か、またドローイングと建築の近さ(ドローイング情報がそのまま現実になるという)を感じることが出来る。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

西沢立衛さん。「僕らが尊敬しているニーマイヤーらしいものを並べました。最後の部屋にあるドローイングは今日初めて見ましたが、描かれているものが、偶然にも展示している作品とかぶっていて、ファンとして幸せです。」

【オスカー・ニーマイヤー展】
会期:2015年7月18日 〜 10月12日
会場:東京都現代美術館
詳細:www.mot-art-museum.jp/exhibition/oscar-niemeyer.html

このカテゴリ内の他の記事