フランク・ゲーリー展 "I Have an Idea" レポート

Neoplus Sixten Inc.
16. 10月 2015
Photo by Neoplus Sixten Inc.

本展は、世界的に活躍するフランク・ゲーリーの「アイデア」に注目し、その実現にいたるプロセスをひもとく展覧会である。100点を超えるプロセスの模型やオブジェのほか、代表作の建築空間を映像で体感できるプロジェクションや、建築家の素顔に触れられる「ゲーリールーム」などで構成。"建築展"ではなく、"建築家の展覧会"として、ゲーリーのアイデアを多角的に紹介するというもの。

展覧会ディレクターに田根剛(DGT.)を起用し、巨匠の建築家の展示を、新進気鋭の建築家がいかに読み解き紐解くのかというゲーリーとの対話が見所だ(会場の建物を設計したゲーリーの長年の友人である安藤忠雄との対話でもある)。

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フランク・ゲーリー氏と田根剛氏。
 

展覧会ディレクションを手掛けた田根剛(DGT.)の他にも、チームメンバーに企画協力に瀧口範子、技術監修に遠藤豊(LUFTZUG)等が名を連ねる。

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展覧会のコンセプトは、2013年12月、田根氏がはじめてゲーリー氏に面会した際に決まったという。

「ゲーリー建築の中に世界を変えることのできる"アイデアの力"を見出しました。生命力があり、喜びを与え、そして居心地が良い建築はどのように生まれるのかという経緯と、ゲーリー氏がどのような人かについても紹介したいと思いました。これからはアイデアの時代がやって来ます。本展を通じて、これからアイデアの力が未来を作るというその可能性を感じてもらえればと思います」

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<ルイ・ヴィトン財団(フランス・パリ、2014)>

エントランスには2014年10月にオープンしたゲーリー最新作の美術館1/50模型。

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複雑に重なり合うガラスの外壁は、帆船をイメージしてつくられた。

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<ゲーリーのマスターピース>

3つの代表作の撮りおろし映像が安藤建築の壁面にプロジェクションされている。

「ゲーリー建築のスケール感を体感できるものにしました」と遠藤豊さん。

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ギャラリー1【ゲーリールーム】

ゲーリー事務所にあるミーティングルームに着想を得て構成している。ゲーリー自邸の模型、映像、ゲーリー自身のアイデアの原石となるようなオブジェ、そして仕事とはまったく関係のない様々なものを通じて86歳のひとりの人間としてのゲーリーに触れる。

壁面に映し出されているのは、2003年にウォルト・ディズニー・コンサートホール竣工の際に発表されたマニフェストを、再びゲーリー自身が読み上げる様子を本展のために撮りおろしたもの。

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<ゲーリー自邸>(アメリカ・ロサンゼルス、1979)

安価な素材を組み合わせて築60年の中古住宅をリノベーションした。

「彼の自邸を訪れたときに感じた、見た目に反してウェルカムで包み込まれるような温かさは、ゲーリー建築の本質だと感じました」と田根氏。

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発想の源である素材の塊。

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壁面には、かつて選手としてならしたアイスホッケーのユニフォームや写真、絵画、書籍、スケッチなど。

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<ウイグル・サイド・チェア>、<ウイグル・スツール>には座ることもできる。

完成した会場を初めて見るゲーリーは、当然のようにウイグル・サイド・チェアに腰掛け、会場を見渡し思わず “Wow!” と感嘆していた。

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壁面や展示台の至るところに、心の内を語る言葉が並べられている。

※Dezeenでも大きく取りあげられていたこの言葉は記憶に新しい。

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ギャラリー2 
<アイデアグラム>
アイディアとダイアグラムを合わせた造語。
田根氏によって「建築」「人」「技術」に分けて整理されたゲーリーのあたまの中身。

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ゲーリー事務所では、日々膨大な模型が制作される。ここでは6つのプロジェクトから、90点近くの模型と竣工写真、スケッチを展示。アイデアを試し、壊し、ときに捨てながら、アイデアが形になっていくプロセスを紹介する。

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箱が積まれた島が5つあり、それぞれ作品が完成するまでのプロセスを辿ることができる。

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<UTS/シドニー工科大学>

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<ル・ルボ脳研究所>

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<エイト・スプルース・ストリート>

マンハッタンに建つ76階建ての超高層マンション。保育園、小学校、オフィスと900ユニットの住居を含む複合施設。

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<メイク・イット・ライト>

2005年のハリケーン・カトリーナ後、ブラッド・ピットが設立したメイク・イット・ライト財団による被災した住宅を対象とした再建プロジェクト。150軒の実現(現在100軒まで完了)を目指し、その中の1軒をゲーリーも設計した。

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<ルマ財団>

フランス・アルルの中心にある工場群を改造して作られるアート研究と実験のためのキャンパスと公園。2018年完成予定。

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この密度。

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<Facebook本社 西キャンパス> 右

依頼を受けてわずか3年で延べ床40,000m2の建築を竣工させた。

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幅6mのロサンゼルスにあるゲーリー事務所の写真。広大な空間に安価な木材を利用してつくられたデスクや本棚が並び、その上には無数の模型が並べられている。

photos: Andrew Prokos

外壁素材のバリエーション。ゲーリーにとって外壁とは建物の内部機能を柔らかく覆うものを指し、決して外側だけの飾りを指すものではない。

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実際に使われた発色チタンのサンプル(新日鉄住金製)

<ゲーリー・テクノロジー>

ゲーリー事務所では二次元図面ではなく、初めから模型で思考を進めるという。90年代にコンピューターを利用すれば複雑な形状の建築を建設関係者などにデザインを正確に伝えられることを発見した。初めは戦闘機の設計に利用されていたソフトを使いながら、その後専門家を雇いソフトを洗練させていき、今では設計プロセス全てをコンピューターデータで関係者全員と共有する。

ゲーリー建築は高額な工費に見られがちだが、これらのテクノロジーでコストを制御し、必ず予算内に収めるという。

その手法は会場奥のスクリーンで田根氏のナレーションと映像で解説しているが、撮影禁止のため是非会場で。

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しかしゲーリーはこのように言う。

また「コンピューターの図面は私の気を削いでしまうので、余り見る気にならない」とも。

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最後の展示室、<ゲーリーのシークレット>

ゲーリーの描いた魚のスケッチと模型、彼自身が撮った数々の工場の写真を展示。これまで語られたことのない、ゲーリーのアイデアの秘密に迫る。

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フランク・ゲーリー氏を迎えたQ&Aセッションは100人以上が参加し大盛況。

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ゲーリー氏の今後について聞かれた質問に対して、

「I'm addicted to making buildings」と仕事を楽しむ現役感を漂わせつつも、息子さんが建築家になることを決めたことや、現在生後一ヶ月の孫がいることなど、顔を綻ばせながら語った。

【建築家 フランク・ゲーリー展 "I Have an Idea" 】
会期:2015年10月16日〜2016年2月7日
会場:21_21 DESIGN SIGHT(東京ミッドタウン)
詳細:http://www.2121designsight.jp/program/frank_gehry/

 
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