デイヴィッド・アジャイ展 OUTPUT

David Adjaye
8. 7月 2010
All photos by Neoplus Sixten Inc.
光と都市
「都市にいるという実感を人に抱かせる建築。そういう建築を、私は目指してきた。
私の眼に映る都市は、日々進化している。都市とはそういうものであって、さほど非人間的なシステムでもないだろう。プロジェクトの空間構成を練る際にも、いったん都市に立ち戻ってみたり都市体験の豊かさを思い浮かべたりすると、必ずや重要なヒントが見つかる。といって、構造面での可能性が広がるわけではない。むしろその場所のリアリティに満ちた、空間の物語が紡ぎ出されていくような感覚だろうか。プロジェクトの規模の大小にかかわらず、都市の縮図をつくるという発想はたいへん刺激的だ。
建物の内であれ外であれ、光の果たす役割はとても大きいように思う。建築にもっと光を活用できないかと思案を巡らすたびに、これまでの人生経験が役に立った。アフリカ育ちの私にとって、生まれて初めて目にするイギリスの光は、ただただ驚きであり感動的――まるでほかの惑星に来たような気分――だった。見慣れていた光よりもずっと弱い。あまりに弱いので、光を感じるにはもっと窓を開ける必要があった。 
光に関してやはり貴重な経験をしたのは、留学先の日本でのことだ。留学中に、京都のとある茶室の図面を一式起こしたのも、じつは光を知るためだった。茶室を測量しつつも、そこにどんな素材が使われているかにはあまり意識が向かなかった。茶室といえばよく素材使いの妙が云々されるが、しかし茶室建築の魅力は、光と素材と意匠とが渾然一体となっている点にあるのではないか。
日本を訪れたことをきっかけに、ふと祖国アフリカとその光にまつわる記憶が蘇った。アフリカの光の強さはすさまじく、彼地では建築にしろ空間体験にしろ、光の影響をまともに受ける。しかしその度合いは場所によってまちまちだ。そのことを写真に撮ろうと思い立った私は、アフリカ大陸53首都の行脚を始めた。このアフリカ・プロジェクトが完了したら、その調査結果を設計の仕事にも活かしていきたい。」

デイヴィッド・アジャイ
Light and the City

Creating an architecture that had an explicit relationship with the experience of being in the city was very important to me. The idea of the city, and the richness of city experience, always give the most important clue in terms of how I establish the spatial construction of a project. This is nothing to do with the sum of the constructional possibilities, but is a kind of synthesis of the spatial narrative that informs the reality of a particular place. Whether it is a tiny project or a large one, the idea of making a microcosm of the city is a great stimulus.

In seeking to address different considerations on the outside and the inside of my buildings, light plays a very significant role. In developing the role of light in my architecture, I have been able to draw on experiences that I have had at different times in my life. After being brought up in Africa, I was very surprised by the light when my brothers and I first arrived in England. It was a new phenomenon, a completely different emotional experience: like being on another planet. The luminosity was much lower than we were used to and, because there was so much less of it, there was a requirement to open up more in order to appreciate it.

My next significant experience, in terms of light, was the time that I spent in Japan when I was a student. Whilst I was there, I made a set of drawings of a teahouse in Kyoto but what I was really studying was the light. When I measured that teahouse, it was not about materials: even though teahouses are described in terms of their material-artefact quality, the power of their architecture is in the way that light, materials and geometry come together in an indivisible whole.

One thing that I had not anticipated about Japan was that it would reawaken my memories of Africa and the light there. Africa has an exceptional luminosity and this has an all-pervasive effect on its architecture and the experience of space. But the consequences of the light vary greatly from one place to another and this is something that I have been recording in my photographs of the continent's 53 capital cities. As I come to the end of the Africa project, I am looking forward to using the results of this research in my design work.

David Adjaye
〈シルバーライト〉
ロンドンでは光を吸収するような建物が多いが、これはファサードにアルミパネルを使うことで光を反射する。住人の多様な活動や気分の変化に応ずるべく、屋内には多彩な場面が用意されている。階段はそれらシナリオの選択肢を増やし、同時にここのシナリオをつないでくれる。
〈LNハウス〉(左)と、〈デンバー現代美術館〉(右)。
鉄板の美術館後援者の住まいと、ガラスの美術館が対比する。
〈スクリラ〉
ロンドンに建てられた仮設パヴィリオン。モチーフは人間の眼球。
ヒトの眼球がいかに精巧にできているかを称えるべく、眼球を模した形状をもち、数限りない微妙な差異をも識別する眼球の性能を表徴している。
小さな広場に立つパヴィリオンだが、フレーミングにより、ありふれた場所をまったく違ったものに見せてくれる。
〈アイディア・ストア・ホワイトチャペル〉
カラフルなファサードは周辺の露店のテントに由来する。資料館や教育施設をレイヤー状に積み上げて、相互の行き来を容易にした。
低層と中層の建物が隣り合っているようにも見える。2階の空間構成を介して、館内の各領域は結ばれ館内と屋外がつながっている。
〈アイディア・ストア・クリスプ通り〉
同じくロンドンのショッピングセンターの一角にある資料館・教育施設。2002年ヴェネツィアビエンナーレ国際建築展において「世界を変えるプロジェクト100選」に選出された建築。
〈シャダ・パヴィリオン〉 
住宅街の地域整備事業で造られた広場に設置されたシェルター。この計画の目的は二つ。物寂しい感じがした広場に焦点となるものを置くことで辺り一帯にまとまりを与えること。そして広場を訪れる親子のためのシェルターを提供すること。アーティストのヘナ・ナディームと共同で木漏れ日をデザインした。
〈モスクワ経営管理大学院 SKOLKOVO〉
建設中の最新作。ディスク状の下部に講義室や会議室などの施設が配置され開放性、一体感、非階層性を具現化。ディスクの上部は失われたランドスケープを復元し、フィットネスセンター、管理棟、居住棟が並ぶ。
 
敷地の起伏をディスクの上に表現。ファサードのガラスにはフィルムやジェルコートで色を付ける。
〈ダーティ・ハウス〉
施主は人気若手アーティスト2人。廃屋になった家具工場の外郭を残して内側にアトリエをつくり、外壁に厚みをつけて強度と断熱性を上げた。結果、窓の抱きが深くなり通り側の外観にモニュメンタルな表情が備わった。
「アフリカ、イギリス、日本、光の捉え方は様々であるように。私の建築では光のもつ役割をいつも重視しています。」と話すアジャイさん。 
懇親会で乾杯の音頭をとる隈研吾さん。「デイヴィッドは色々な国で出会うカンファレンス友達。友達ですがコンペで度々戦う非常に手強いライバルです。」
アジャイさん。「日本や日本の文化は私にとって触媒ような、とても刺激を与えてくれる存在です。」
【デイヴィッド・アジャイ展 OUTPUT】
2010年7月8日〜9月18日
TOTO・ギャラリー・間www.toto.co.jp/gallerma/ex100708/index.htm
 
Posted by Neoplus Sixten Inc.

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