CODO

Loftwork + Shuhei Goto
29. 10月 2019
Photo by Neoplus Sixten Inc.
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清水港に隣接する鈴与本社ビルの5階ワンフロアのリニューアルと、左手に見えるシルバーの建物が建て替えた別館。
鈴与は静岡県をベースに事業を展開する鈴与グループの中核として、物流を中心とした地域密着型のグローバル企業で、Jリーグ清水エスパルスも所有している。

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エレベーターで5階に上がると藤井北斗(hokkyok)がデザインした帆のオブジェやサインが出迎える。描かれているのは鈴与のかつての社標で、後ろの壁のレリーフが現在の社標。
「CODO」とはこのフロアが講堂であったことに由来し「CO=共に」+「DO=行動する」という意味を込めた。

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講堂は入社式などの式典や行事などで年に何度かしか使わない、普段はガランとした何もない空間であったが、行事をする機能を残しつつ、フリーアドレスのワーキングスペースとしてリノーベーションした。
既存では吊り天井が張られていたが、1.5mもふかされていたことが判明。撤去することで天井高5mの大空間が現れた。

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鈴木健一郎社長の号令の元、コミュニケーションデザインや空間デザインなどをプロデュースするロフトワークとの協働により働き改革を進めてきた。

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ロフトワークはこの空間をどのようなものにするか、鈴与社長や役員へのヒアリング、社員とのワークショップなどを重ねながらコンセプトや方向性をまとめ、それを後藤さんが形にすべく設計を進めた。

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後藤さんが提案したのは多様な場。大きく南北に二つの島があり、天井が高いことを利用して立体的に家具のようなフロアを積み上げ、床にカーペットやフローリング、畳、ルーバー状にするなど、場を選ぶ楽しみ、目的によって広さや性格が変わっていく場を用意した。

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デスクでもあり床でもある、視点が変われば用途も変わるボックス。天井はグリッド状の梁に合わせた照明が目を引く。

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ブリッジで南北の島が接続している。天井が高くなったことで出来る遊び心。
正面の孔が空いた部分は旧映写室で、天井を撤去することで現れた。

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ブリッジから。二つの島とその奥にもフロアが続く。収納された椅子を出して今まで通りに行事にも対応できる。
床のグラフィックも藤井北斗が担当。数字は島の番号を表し、ラインはカーテンの色に合わせて波をイメージしたグラデーションになっており、活動的な雰囲気を発揚する他、椅子やテーブルを並べた際の目印にもなる。

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ブリッジは構造家によって構造計算がなされたものだ。所々キャンティレバーで突き出した箇所も内装でありながら構造計算をしてもらったという。

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ブリッジを渡って北側の島へ。
手摺が波止場の雰囲気なのは港町にあり海運も手掛ける鈴与のイメージからきている。

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正面ステージ(右)に向かって徐々に低くなる島。天井のプロジェクターは三方向に備わり、ステージの向きを変えたり複数の活動に対応できる。

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ステージから。床レベルを変えることで視線の交錯を和らげる。
椅子は既製のものだが、テーブルやソファーは製作した。四角い島や天井のグリッドに対して丸みのある柔らかいデザインとした。また女性でも容易に移動できるように、脚の一部にキャスターが取り付けてある。

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一角にキッチンカウンターも設えたので、さらに使い方の幅が広がる。

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南の窓際には27mもの一列の場。昼休みお弁当を食べる女子社員には一番人気のスペースだとか。

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カーペットから上は下足を脱いで利用。

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電話ブース。他に段状の島の下は、収納や災害用の備蓄倉庫にもなっている。

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旧映写室は、女性用休憩室へコンバージョン。こういったスペースも働く場改革の一環だ。

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次に本社の南に建て替えた別館。グループの建設会社によって基本設計まで進んでいたが、CODOのデザインを見た鈴木社長が、こちらのデザインもして欲しいとロフトワークと後藤さんに依頼し、基本設計はそのままに外装と内装デザインを手掛けた。
通常、社標のデザインは変えてはいけないが、シャープなデザインの社屋に合うようにと、色とロゴを抜いた社標の提案に対しても鈴木社長は特例でOKを出した。

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CODOでは周囲に島があり、中央にオープンスペースがあったが、こちらでは逆にして、周囲にオープンスペース、中央に島をレイアウトした。
1階はCODOと同様にフリースペースで、社内や取引先との打合せはもちろん、デスクワーク、食事などに使える。

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こちらでも島は立体的で異素材が絡み合う。キッチンカウンターや、収納、電話ブースなどが組み込まれ、視線を遮る効果も持たせている。
床のコンクリートは墨混などではなく、骨材の変色によるもの。

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2階執務フロア。壁際にはシェルフと個人用のボックスが備わる。

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3階。上にいくに従って床や島の色が暗くなっている。

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鈴木健一郎社長。「このような新しいオフィスは東京などの大都市では珍しくはないと思いますが、これを静岡の清水という小さな地方都市でやることに大きな意義があります。働き方改革、ここで働きたいと思って貰えるようなオフィス空間にしていかなくてはならない。そして縦や横の壁を取り除いたコミュニケーションを内外で実践していく必要があると思います。」

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後藤周平さん。「従来の個人スペース中心の働き方から、フレキシブルな共有スペースを有効利用した働き方へのシフトを目指しました。CODO、別館共に、かたちが変化し積み重なりながらドーナツ状に連続するボックス群を配置しました。どちらも家具としては大きく、建築としては小さいスケールで、家具や建築のどちらとも言えるように存在に設計しました。この独特なスケール感によって、ベンチになったりカウンターになったり床になったりと、視点によって見え方も機能も揺れ動くような状態が生まれています。そのことが、固定化されたオフィスの機能だけではなく、使い方も定義もクリエイティブに更新していけるよう機能していきます。この大きなドーナツと小さなドーナツが、オフィスの日常に新しい風景と働き方をもたらすことを期待しています。」

【鈴与本社リニューアルプロジェクト CODO・別館オフィス】
プロデュース/プロジェクトマネジメント/クリエイティブディレクション:ロフトワークLayout Unit
建築監修/内装設計/家具設計:後藤周平建築設計事務所
構造設計:足立徹郎構造設計事務所
木材コーディネーション/家具製作/家具製作ディレクション:飛騨の森でクマは踊る
カーテンデザイン:Studio Akane Moriyama
サインデザイン:hokkyok
施工:鈴与建設

本社講堂:913.10㎡
別館:1497.45㎡、S造、3階建て

鈴与株式会社:静岡市清水区入船町11-1
 
Posted by Neoplus Sixten Inc.

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