春日台センターセンター

Chie Konno / teco
11. 4月 2022
All photos by Neoplus Sixten Inc.

金野千恵/tecoによる神奈川県愛川町の「春日台センターセンター」レポート。高齢者や障がい者向け福祉サービス、寺子屋、コインランドリー等を擁する地域共生文化拠点。[Kasugadai Center Center / Welfare complex facility for elderly, handicapped person, coin laundry, croquette stand and commons room. Kanagawa, Japan]
 

幅約42m、木造の横長の建物に、1階奥からコインランドリー、コロッケスタンド、小規模多機能型居宅介護、放課後デイサービス、認知症グループホーム。2階に寺子屋、コモンズルームと計7つのプログラムを擁する、まさに複合施設だ。
敷地には以前「春日台センター」というスーパーマーケットがあった。左手には公民館、奥には今も他の商店がいくつか残っており、大きなクスノキの周辺はいつも子供たちがはしゃぎ、祭りなども開催されていた地域の中心的な場所であったが、以前より子供も減り、高齢化が進む。
地域の中心であった「春日台センター」をもう一度、街の中心(センター)にしようというコンセプトだ。
かつての「春日台センター」。大庇や建物の色などを継承し人々の記憶を留めた。波形の屋根は、新しいロゴマークに引用している。
(photo: teco)
全ての機能と、周辺を一つに繋ぐ大庇の下は「プロムナードロッジア」と名付けた。
施設の事業主である社会福祉法人愛川舜寿会は介護施設「ミノワホーム」や、「凸凹保育園」などを運営し、金野さんは以前からそれらの設計に携わってきた経緯がある。
2016年閉店した「春日台センター」の敷地を使って地域に何が必要か、何ができるかワークショップなどが始まる。愛川舜寿会と金野さんは「あいかわ暮らすラボ」というコミュニティを立ち上げ、地域交流フェスやトークなどを繰り返していくうちにラボへの参加者が増え、様々なイベントが開催されるようになる。
人々が集まり対話を繰り返していくうちにここに何が必要か、その姿が浮かび上がってきた。そうして生まれたのがこの「春日台センターセンター」なのだ。
縁側に座るのは愛川舜寿会理事長の馬場學郎さん。
 
建物はとにかく引き戸が多く、容易に内部と外部が一続きになる。2つの通り土間が街との接続をも容易なものにしている。
住宅街の路地からそのまま連続し、公民館にも繋がる。背景には丹沢大山がそびえる。
まずは「洗濯文化研究所」と名付けたコインランドリーへ。
布団も洗える大型のランドリーマシンを備える。
セルフ利用のコインランドリーとは別に、カウンターの奥は洗濯代行となる。洗濯物を持ち込み、或いはピックアップしてもらい洗濯と畳みを代行してくれる、あくまでも洗濯代行でクリーニング店ではない。作業台の前に車椅子が見えるが、障がい者の就労支援としても機能させていく予定だそうだ。
「ランドリーをスペース(空間)からプレイス(居場所)へ」がテーマ。飲食もできる寛ぎの場としていきたい。
コインランドリーを居場所として展開するコンセプトは2016年の計画初期からあった。
敷地は緩やかに傾斜しているため、高低差をクッションで補正している。奥のコロッケスタンドはコーヒーの提供もあるので、ここでのんびりと洗濯が終わるのを待つことができる。
施設内には長手方向を一直線に結ぶ通り土間もある。
コロッケスタンド「春日台コロッケ」。かつて「春日台センター」内で人々に愛されていたコロッケ屋さんの記憶を再現した。
オープン前から様子を見に来る地元の方々。その都度自ら施設を説明する金野さん。なかには「何かここで手伝うことはないか?地域のために働きたい。」といきなり履歴書を持って来る方もいたそうだ。
小規模多機能型居宅介護。通所介護のほか訪問介護の拠点。土間+小上がり+縁側と日本人の心を掴む三点セットで、気軽にコミュニケーションを生む場となる。
奥は建具を升目状に設え、必要に応じて様々に仕切られるようにした。短期入所可能な個室も8室ある。
通り土間を挟んで放課後デイサービスと、認知症グループホームへ。
人の往来が自由にできる風通しの良い動線。この施設にはランドリー代行以外「受付」がない。どこから誰にでも声を掛けてもらえば良いという考えだ。
放課後デイサービスのスペース。障がいを持つ小学生から高校生向けのデイサービス。
認知症グループホームは1階に9名、2階にも9名入所できる。
各スペースに設置されているペンダントライトのシェードはtecoのオリジナルで、紙や布、不織布など様々な素材を使って自主製作されたものだ。
通り土間の階段から2階へ。
階段を上がるとバルコニーになっていた。右がグループホームの2階。左がコモンズルーム。
大庇に突き出すようなバルコニー。
グループホームは認知症の高齢者が9名1ユニットでそれぞれ1階と2階で住まう介護サービス。設備も1・2階それぞれにある。
外光や空間を遮らないように壁が天井から離れるよう設計されている。
1階と2階は吹き抜けを介して互いの気配を感じ、2階が分断されないようにした。また1階へのハイサイドライトとしても機能している。
居室は全て外部に面し、内側にはキッチンや水回りを配置。
コモンズルーム。デスクワーク、研修、会合など決まった使い方はないそうだ。左手に3つの個室があり、サテライトオフィスなどとして利用もできる。
この施設に関わる人、利用する人はそれぞれが垣根なしに支え合う。柱から伸びる頬杖も腕を伸ばし支えているように見える。
コモンズルームを抜けると広いテラスへ。
寺子屋。就労支援の活動や、学習支援も行うことができるスペース。テラスは左奥の北テラスにも繋がっている。
オープン前日、準備で忙しくされていたスタッフの方々と金野千恵さん(前列左から2番目)、愛川舜寿会常務理事で施設代表の馬場拓也さん(同3番目)。地域に密着した新しいかたちの福祉施設を目指していく。

「福祉施設は合理的でミニマムに解かなければならない部分がたくさんあるので、内部に強い空間はあまりないのですが、このような大屋根が一枚通ることで、様々なシーンが一気に統合され、外に繋がる劇的なエレメントとなりました。」と金野千恵さん

計画概要・テキスト・平面計画・断面パース(→PDFダウンロード
【春日台センターセンター】
設計・監理:teco/金野千恵、泊絢香、照井飛翔、村部塁(元所員)
構造設計:オーノJAPAN/大野博史、藤田竜平
設備設計:ZO設計室/清水真紀、柿沼雄三
ロゴ・サイン:woolen/福岡南央子
施工:栄港建設/長谷川健二、ムンフバト・シィネバートル
植栽計画:長島緑園土木/長島典正
建築主:社会福祉法人愛川舜寿会

主要用途:認知症グループホーム
     小規模多機能型居宅介護施設
     放課後等デイサービス
     就労継続支援A型+B型
     洗濯代行、コインランドリー、コロッケスタンド          
     寺子屋、コモンズルーム、貸室

所在地:神奈川県愛甲郡愛川町春日台3-6-38
URL:aikawa-shunjukai.jp/kcc

構造・規模:木造/地上2階
敷地面積:1,508.41㎡
建築面積:819.89㎡
延床面積:1130.62㎡
建蔽率:54.35%(許容:70%)
容積率:74.59%(許容:200%)

Posted by Neoplus Sixten Inc.

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