なっつらぼ

teco + Kosaka Morinaka Architecture
7. 9月 2021
All photos: Morinaka Yasuaki
南側ファサード。緩勾配の切妻の屋根と片流れの屋根が重なる。木造平屋建で、周囲に対して建物高さをできる限り低く抑えている。
⻄側に広がる畑越しに見る。生産量全国1位である落花生の畑のほか、敷地周辺にはこのような田畑が大小広がっている。外壁は砂壁風塗装で、この地域にみられる「八埃(ヤチボコリ)」という強烈な砂埃への対応と、落花生畑の赤土の風景から引き出された。
道路を挟んだ南側には新興住宅地が広がる。
道路側の軒下と全面開口を介して連続する「土間広場」。シルバーに塗装した軒天が室内に入り込む。
道路と主たる機能をおさめるヴォリュームのあいだに差し込まれるように計画された三角形の土間広場。
地域交流スペースとして開放することも想定されたこの土間広場には、奥に地域住⺠も利用できるキッチンを計画した。
二辺を全面開口部とし、できる限り開放できるものとすることで、太陽高度に沿ってさまざまにかたちを変えて入り込んでくる陽の光や、窓を開け放って吹き込んでくる風の流れを迎え入れるような場所となっている。
八埃に対して、室内へ抜ける風を濾すような風除室の役割も担っている。もう一辺は外壁と同様の砂壁風塗装とすることでできる限り外に近い空間として感じられるようにした。
左手は施設利用者の玄関。
散歩をする近隣住⺠、登下校する小学生らの様子がみえる。
玄関から。右手にみえるのはキッチン。手前から食堂、居間と続き、左奥が水回り、右に進むと宿泊室となる。
正面の北側のみ高窓をクリアガラスのアルミサッシとし、アイレベルの風景を切り取る水平連窓の上に、空を切り取る水平連窓が重なる。一部は開閉可能なものとし、手前の土間広場からこの北の高窓へ、重力換気を利用して建物のすみずみへと清浄な空気が流れる。
玄関の両脇には、下足入れと靴を脱履きの利用できるベンチを設けた。
正面は事務室や相談室。
利用者が過ごすメインのスペースである居間・食堂は全面畳敷きで縁なし馬目地とした。
天井高約4.5mの室内には、高窓から取り込んだ光が広がる。吹き抜け部の天井は土間広場の天井に同じくシルバー塗装とし、正面奥にみえる宿泊室に対して外のような空間として位置づけることを考えた。
宿泊室は2、3日泊程度の宿泊を含めたケアにも対応できるよう個室を5室用意。
宿泊室から居間・食堂をみる。低い屋根の切妻のかたちが白い帯状の壁面のなかに現れる。
北側から土間広場まで見通す。
内部建具は木枠を設けず、レールを梁や天井に対して直付けとした。将来的にレールを増やしたり、またカーテンレールをつけたり、といった際に使い手側でも手の入れ方を想定しやすい仕組みをディテールに落とし込むことを考えた。
居間・食堂の一部にはジュートをはめ込んだ引違いの建具を設け、建具を集めて居場所をつくったり、個室化も可能なつくりとした。
夕方、南側の天井の様子。1日の時間の経過を、四方に回した高窓から取り入れる光の移ろいを通して感じ取ることができる。
居間・食堂の北側、一部天井が低い部分。天井の高さの違いや建具の有無の組み合わせにより、シンプルなグリッド状の形式のなかにも雰囲気の異なる居場所をつくることができるようにしている。こちらは開け放ったときの様子。
北側と東側に連続して設けた縁側。
北側の駐車場は敷地奥に配置することで、道路に対して顔を出すような建物配置が可能となっている。
左側は地域の子どもたちも一緒になって農作業体験などができる広場として利用される予定。
稼働時の様子。
オープンで風通しの良い自由な空間が、コロナ禍においても効果的な計画となっている。
日中は、ほぼ照明が必要ない。
共用部に照明が灯されるのは日が沈んだあと。「外のような場所」にふさわしく、中庭を照らす外灯のような壁付の照明が並ぶ。
街灯の少ない通りのなか、高窓からもれる内部の光が街を小さく灯す。
【なっつらぼ】
設計監理:teco + 小坂森中建築(担当:金野千恵・小坂怜・森中康彰・下岡未歩・門脇春佳)
設計協力:アリソン理恵・小倉亮子
構造設計:オーノJAPAN(担当:大野博史・藤田竜平)
設備設計:MCC(担当:田中政弘・中野祐介)
施工:国井建設

主要用途:複合施設(小規模多機能型居宅介護施設、地域の土間)
所在地:千葉県八街市
建主:社会福祉法人生活クラブ風の村

構造:木造1階建て
敷地面積:1263.51㎡
建築面積:332.72㎡
延床面積:290.41㎡

Posted by NeoplusSixten Inc.
 

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