TERADA HOUSE

Naoki Terada + Kenichi Hirate
10. ottobre 2021
All photos by Neoplus Sixten Inc.
斜めの壁が縦に貫くということ聞きながら中へ入ろうとすると、それを予見させるように斜壁がアプローチに現れている。
1階(地下)はRC造、2階・3階は木造で外壁はケイミューのソリドで仕上げられている。
玄関前で出迎えてくれるのは何と “HAL 9000” だ。HAL 9000は非常に高度なAIを搭載したコンピューターで、自らの意思で宇宙船をコントロールし、人間と完璧な会話ができ、読唇術までこなしてしまう。
とは、映画 “2001年宇宙の旅” での架空の設定で、映画に出てくるコンピューターの “目” がインターホンのカメラになっているという寺田さんの遊び心だ。
玄関を開けると鮮やかな黄色の斜壁が現れた。1階が寺田さんのご両親の居住部で、手前から父親の部屋、奥にLDKと母親の部屋、水回りと続く。
黄色の部分は2枚の引き戸で部屋を開けた状態。
父親の部屋(兼アトリエ)。美術愛好家で、立て掛けられるのはご自身で描いた絵だそうだ。アプローチに見えたスリットはこの部屋のハイサイドライト。
次にLDKへ。
中庭(ドライエリア)に面したリビングには、安東陽子がデザインしたカーテン越しに光が差し込む。
寺田さんがデザインしたオリジナルのソファが、ハードな印象のインテリアに柔らかさを与えてくれる。
USMモジュラーファニチャーを目一杯使って、収納やギャラリーケースとして設えられている。それもそのはず、寺田さんはUSM代理店のインターオフィスCEOでもある。左がキッチンで、正面を抜けると寝室となる。
既製品だけで見事に隠蔽されたエアコン。
オールステンレスのトヨウラ製特注キッチン。職人が細かいところまで丁寧な仕事をしていることが伺える。
バスルームから玄関方向を見る。引き戸やガラス扉も斜壁に合わせて製作。
数々の階段下収納を拝見してきたが、この開き方は初めて。
子世帯の2階へ。右側は壁に挿入され、左側は1階天井を抱えるような納まりの階段。赤い引き戸に特注の取っ手が付く。
引き戸を開けて子世帯の玄関となる。右の引き戸がトイレで、左がバスルーム。
2階のバスルームはいち面の白いタイルに濃い目地でグリッドの世界。浴室の奥と、、
出入り口に鏡が張ってあるので、グリッドの無限の連続性がかなり強調される不思議な空間。2001年宇宙の旅に出てくる白い部屋が思い出される。
そしてLDKへ。そこは1960年代に人々が思い描いたが「来るはずだったけど来なかった未来」の世界だ。50年代から60年代にデザインされたプロダクトや、オリジナルの家具でコーディネートされている。
斜壁は1階からそのまま棟まで連続する。室の性格に合わせながら床面積を振り分けているのだ。また、二世帯住宅ということもあり、世帯間の繋がりを感じられる象徴としても存在している。
スチール框の大きなガラス引き戸の先にはテラス。室内側に網戸とブラインドも付く。天袋のようにエアコンを隠蔽し、吸い込み用のスリットを完全にインテリアの一部としている。正面壁の横スリットは寺田さんのライフワークとも言える、プラモデルのギャラリー。
振り返ると3階にヴァーナー・パントンがデザインした『リビングタワー』が鎮座し、そこで寛ぐ寺田さん。壁は淡いウォームグレーで塗装され、3階の1面だけビビッドなイエローを効かせている。
1階にもあったオリジナルソファーは、リビングタワーと同じ生地同じ色で製作するというこだわりよう。座面と背もたれに違いはないため、自由に組み合わせてベルトで固定できる。
ラグはナニ・マルキーナ。エットレ・ソットサスの名作タイプライター、オリベッティ『ヴァレンタイン』がこれほど似合うスペースもなかなかないだろう。
エーロ・サーリネンによる『オーバルテーブル』と、『チューリップ チェア』。トム・ディクソンによる『ミラーボール ペンダント』。
コンスタンチン・グルチッチによる『360°コンテナ』と、エリクソンの『エリコフォン』。
幅3.6mの引き戸を開放すと、掃き出しでフロアが連続するテラスで、リビングを拡張するイメージだ。
ハリー・ベルトイアによる『ダイヤモンドアームチェア』が2脚。
料理も大好きな寺田さんこだわりのキッチンは幅が6m近くある。
こちらもトヨウラ製の特注キッチン。なんとワークトップを一段下げ、そのまま水が流せるようになっている。洗浄や鍋に直接水を注ぐために水洗も備わる。
ガスコンロはユニットの組み合わせができるリンナイ製を選んだ。
キッチンキャビネットもUSM。配膳台としても使えるようにコーリアンの天板を載せた。
チンアナゴのオブジェは娘さんが作ったそうだ。
3階へ。ここはファミリースペースと呼び、ごろごろしながら寛ぐ場所。「リビングタワーを家に置くのが夢だった。」と寺田さん。
螺旋階段にはトップライトが丸く覗いているので、3階の奥へ光を導いてくれる。孔には照明も付いているため夜でも光が落ちてくる。
壁を斜めにするだけでその存在や意味合い、印象がまで変わってくる。この家にはテレビがないので、向かいの壁にプロジェクターで映画などを投影した際の観覧席としてもファミリースペースは機能する。
子供室。学習机やベッドはロフトへ。ロフトには小さな開口があり、ファミリースペースと繋がっている。
主寝室。
距離感が掴みにくい程深い青で統一された空間で、夜、完全にoffに切り替えられる。
ベッドスプレッドとカーテンは同じデザインで安東陽子が手掛けた。
寺田尚樹さんと、共同設計の平手健一さん。平手さんは、2003年にテラダデザイン一級建築士事務所を設立した頃からのスタッフで、今年(2021年)より寺田平手設計と改組し取締役社長へ就任した。寺田さんは引き続きインターオフィスのCEOを務めながら寺田平手設計をサポートする。

「『Memory of Future』あるいは『Yesterday’s Tomorrow』という言葉があります。『来るはずだったけど来なかった未来』といった意味合いです。『鉄腕アトム』で描かれた水滴型のエアカーが飛び回る未来都市や『2001年宇宙の旅』に登場する宇宙ステーションのロビー。1960年代はアポロの月面着陸が象徴するように宇宙=未来が明るく輝いていたころ。その時代の家具やプロダクトは新素材のプラスチックが取り入れられ、スペーシーな曲線を用いたフォルムとビビッドな色使いは輝く未来を体現していました。そんな過ぎ去った未来を私は今も信じていて、未だ来ない刺激的でワクワクするような未来。自宅の設計は図らずもそんな未来をイメージしました。」と寺田尚樹さん。
断面図・平面図(→PDFダウンロード
【TERADA HOUSE】
設計・監理:寺田尚樹、平手健一/寺田平手設計
構造設計: LOW FAT STRUCTURE
施工:J HOMES

用途:住宅(2世帯)
構造:木造(軸組)+ 一部RC造
敷地面積:128.46㎡
建築面積:63.80㎡
延床面積: 177.16㎡
階数:地上2階、地下1階

協力
外壁:ケイミュー
キッチン:トヨウラ
テキスタイル:安東陽子デザイン
植栽:TISTOU、長濱香代子庭園設計


Posted by Neoplus Sixten Inc.
 

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