鎌倉アパートメント

miCo.
20. aprile 2023
All photos by Neoplus Sixten Inc.
鎌倉駅から長谷寺へ続く由比ヶ浜大通り沿い。施主は元々デベロッパーに開発を依頼し、デベロッパーはハウスメーカーに設計を依頼していた。施主が通りの雰囲気を良くする「鎌倉らしいファサードデザイン」を望んだため、デベロッパーからmiCo.に声が掛かりファサードデザインのみ依頼された。しかし進行中の計画案を見た今村さんが「このようにしてはどうか?」と提案したところ、その案で計画を変更することとなり、基本設計、実施設計、監理まで任されることとなった。
変更とはなったが、ハウスメーカーの基本ユニットを使いながらの設計となっている。
当初依頼された肝心のファサードは、銅メッシュで覆われて経年で刻々と色が変わっていくものとなっている。
近くで見るとメッシュは網戸ほどの密度になっており、実際網戸としての機能を持たせて各住戸には網戸サッシュは取り付けていない。
施工直後は銅の地色で輝いていたがすぐに赤茶色に変色し、やがて緑青が吹き始める。通りには銅板葺きの屋根を持つ古い建物が軒を出しており、また鎌倉の大仏も緑青色であることなど、まさに鎌倉らしいファサードと言える。
取材から3ヶ月後の様子。大分色が変わってきているのが分かる。
(Photo: miCo.)
メッシュは陰では内側が透けて見え、、
日が当たると見えにくくなり、一日を通して建物の表情が変化する。
フレームは少しずつずらすことで影を与え、単調な一つの面とならいようにしている。
道路に面して、ケヤキの老木と主馬盛久之頸座という碑が建つ小さな市有地がある。そこに合わせるように建物をセットバックさせ、前庭とベンチを設え、街にゆとりを還元している。
1階は飲食店のテナントで、手前が賃貸住戸エントランスとなり、2階〜3階に計6住戸配置される。建物の名称は「IRON SKY 2」。
西側共用部。敷地の北東部が斜めになっているので、当初案ではその部分を避けて北側の住戸ユニットを西にずらしてL字型に変形させていたが、miCo.では4ユニット全てを少しずつ雁行してずらせば矩形のユニットのまま変形せずに並べられると提案。
約20㎡のワンルームがこのアパートの基本ユニットとなる。内装はハウスメーカーが指定する範囲で仕上げや建具を選定したが、最大の特徴はバルコニーとなる。
雁行して西側共用部の避難経路を必要な幅だけ残して追い込めるので、その分東側のバルコニーが広くなっているのだ。
さらにメッシュ=網戸をバルコニーの外側に付けているので、プラスアルファの “使える” 半屋外空間が現れている。
この部分は1階の飲食店では界壁がなくテラス席とすることもできる。
南側道路に面したの住戸は20㎡のユニットを2つ使った1LDK。
東側のバルコニーは出幅が狭くなるが、、
南側まで連続する長大な半屋外空間が広がる。
「網戸と窓の間に居場所を見いだしたイメージ。」と今村さん。蚊帳で覆われたようなバルコニーに居住者の活動が溢れる様子が想像できる。
(メッシュのフレームに隙間があるが、この後適切な素材で塞がれている)
蚊の出る季節でもこのように開口を全開にできる。
窓台の幅を広くして窓辺に縁側のように座れる居場所を作った。“蚊帳”も相まって、あまり使われることのないアパートのバルコニーの在り方に一石を投じる計画ではないだろうか。
1/200平面・断面図、1/30詳細図 >> PDFダウンロード
今村水紀さんと、担当の河合伸昴さん。
「画一的な商品化住宅に一つのオーダーメイドのパーツを加えることで建築をつくるという試みは、建具同士が不均質であることを肯定しているように感じました。また、潮風の吹くこの地にあって錆びることも肯定し、その変化に時間を内包する銅を使うことは、個々の建具の変化を受け入れているようにも思えます。この建築が、ここで穏やかに多様に変化し続けることを期待しています。」と今村さん。
【鎌倉アパートメント】
設計・監理:miCo. / 今村水紀、河合伸昴、篠原勲
構造設計:アーキコム
ファサード構造設計:yAt構造設計事務所
設備:山崎設備設計
施工:MAKIKOMU
主要用途:共同住宅、飲食店
構造・規模:鉄骨造、地上3階
敷地面積:188.94 ㎡
建築面積:139.76 ㎡
延床面積:386.50 ㎡

Posted by Neoplus Sixten Inc.

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