こどもえんつくしダイニングホール棟 forestaカランころ

Keisuke Maeda / UID
19. agosto 2020
Photos by Koji Fujii / TOREAL
1978年に開園した〈こどもえんつくし〉は、地域と共に歴史を刻みながら幾度かの増改築を経てきた。今回増築された中央の〈ダイニングホール棟〉の左手(西側)に既存のメイン棟、ホール棟、手前(南側)にはUIDが2012年に手掛けた乳児棟〈Peanuts〉が建つ。
前田さんは「敷地周辺は山裾に広がる住宅と、古くからの里道や水路、田畑など長閑な風景が広がっている。増改築を繰り返してきた各棟の点在は、統一感のない統一感とでもいうような新旧の混在する在り様が心地良く、昨今の建替えによって刷新されていく園舎とは一線を画している。ここでは既存園舎の形状を踏襲するのではく、様々な年代に建てられた小さなまちのような園舎の物語性をさらに膨らませながら、緩やかな完結しないマスタープランを描きたいと感じました。」と話す。
〈Peanuts〉。前田さんが実子を預けていた縁で設計を依頼された0歳児に特化した乳児棟は、多くの建築賞を受賞した前田さんの代表作の一つ。(Photo: Hiroshi Ueda)
ハイハイや、つかまり立ちでようやく歩ける乳児の目線の高さに植物が植わるのが特徴だ。(Photo: Hiroshi Ueda)
西側の門より。屋上には〈音の花〉と名付けた鐘塔が周辺地域の新たなアイコンとなる。鐘は入園や卒園などの式典、運動会などのイベントで開会や閉会の際などに鳴らされるそうだ。
〈Peanuts〉から連続するように多様な植物が植わる庭は荻野寿也が手掛けた。右手の既存園舎からは渡り廊下で接続される。
エントランス。1階にはダイニングホールのほか厨房、中2階に保育士のためのラウンジ、2階に4・5歳児の保育室がある。
厚みのある門型のエントランスに、つくしをモチーフにした楕円の穴が見える。この中の紐を引くと鐘塔の鐘が鳴る仕掛けだ。
ダイニングホール側を向くと、特徴的な十字柱と、大きくカーブを描く階段が現れる。まずは2階へ。
2階、4歳児と5歳児の保育室の間はギャラリーとした。廊下でもあり遊び場でもある。
保育室。1階で見えた十字柱は2階にも現れる。がらんどうな保育空間ではなく、子どもたちにとって柱の入隅が遊びのスペースや隠れ家となったり、見え隠れするお互いの姿に好奇心を誘発するよう考えた。
中央の丸いボリュームはトイレで、そこを挟んで園児を二グループに分けている。
振り返るとダイニングホールが見える。左、中2階が保育士のラウンジ。
何にでも対応できるような見通しのきく空間ではなく、柱・梁による建築的強度持ったリジットな形式による居場所を考えた。具体的には、3.5mグリッドに45°角度を振った逆末広がりの十字柱・梁を配し、水平・垂直方向への視界深度のグラデーションによって生まれる身体的距離感をつくりだした。
それらを取り巻く家具やランドスケープによって空間同士や、内外を緩やかに接続し、森の中を歩くような自由なシークエンスを形成している。さらに子こどもたちから大人まで移動に伴うアイレベルの変化により空間領域の解像度が変容していく。
メイン棟から元気よく入って来た子どもたち。
おおらかな空間でありながらも、ある秩序と可変性をもつ空間体験がこどもたちに対して日常とは異なる創造性を与えつつ、その中にも好奇心や愉しさを与えてくれる特別な空間となることを目指した。
階段は柱へ取り付くように設え、空間のアクセントとなるよう演出した。
子供スケールに抑えたの小窓から厨房が見える。
ダイニングホールを奥へ進むとテラスへ出られる。
平面形状がそら豆の形をした〈そらまめテラス〉。水を張って水遊びもできるほか、夏場、南面からの涼風を取り込む装置としても機能する。
柱梁は枝を広げた木々が茂る森の様相だ。
子どもに木や草花、石、土、水といった自然に近い状態をできるだけ感じて欲しいという思いから造られた園庭は、けもの道のような小径が巡る。左手はダイニングホールへアクセスする子どもスケールのサブエントランス。
「こどもえんつくしは私たちのアトリエから徒歩5分の距離にあります。現代のこどもたちを取り巻く状況が大きく変わっていく中で、地域で育まれる園児たちに対してどのような環境が大切なのか問い続けながら、今後もこの保育園の豊かな空間づくりに関わっていきたいと思います。」と前田圭介さん。
Plan (Copyright: UID)
Detail (Copyright: UID)
【こどもえんつくし ダイニングホール棟 forestaカランころ】
設計監理 : 前田圭介/UID
構造:小西泰孝建築構造設計
造園:荻野寿也景観設計
モニュメント:アトリエ木朴
施工:大和建設 株式会社

主構造:S造
用途:認定こども園
規模:地上2階
敷地面積:923.57 m2  
建築面積:545.61 m2  
延床面積:782.05 m2
 
Posted: by Neoplus Sixten Inc.

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