VILLA MKZ

Takeshi Hirobe
24. mars 2022
All photos by NeoplusSixten Inc.
敷地は海に面しており、海岸には隆起し傾斜した地層と草の生い茂る大地、背後には原生林に包まれた山が迫る。この力強い自然環境に負けないような強さを持った建築に見える。
敷地はかなり広いものの、道路沿いに見える所有者が異なる土地が一部入り込み、且つそこに高さが1m以上ある岩盤が露出しているため、それを避けながら建築していくこととなった。
連続する折れ屋根の外観はかなりユニークで、付近のランドマーク的存在になりそうだ。
建物は二棟。手前東側には車2台分のガレージを有する離れと、西側に母屋が建つが、できるだけ高低差の少ない側に離れが建っている。
起伏のある敷地でランドスケープと建築が一体となるようにバランスを見ながら設計を進めた。それは施工中もギリギリまで検討と変更を重ねたそうだ。
緩やかな傾斜の先は土にして、施主が徐々に手入れして行く。敷地形状を利用した長いベンチも設えられており、ゲストとバーベキューなどを楽しむ様子が想像できる。
ギザギザの屋根や多角形の複雑な外壁は、三角形の平面の連続で構成されていることによる。不整形でかつ岩盤を避けながらプランを決めていく難しい敷地であることから、室内の要望に応じて三角形の各頂点を(CAD上で)でつまみながら調整可能な設計手法を取ったためだ。
各三角形に合わせて柱の断面形状も全て異なる。
母屋へ。地面も三角形をモチーフにデザインし、コンクリート洗い出しで仕上げた。
植わっている木は元々生えていたものをそのまま活かした。
玄関ポーチは2階。格子戸は二重にして防犯性を高めてある。框の鍵穴にはカバーがしてあるが、海辺では潮風から鍵穴を守るために必須だそうだ。海辺の住宅をいくつも手掛ける廣部さんの経験によるものだ。
玄関。RCと羽目板の組み合わせが目を引く。
先に進むとピアノが現れ、三角形に近い台形のパネルがパタパタと折れながら奥へ続いている。
その先はLDK。フレックスフォルムのソファでゆったりと大海原を眺められる。
RCの折れ屋根にすることで梁のない天井を実現した。
ダイニングから。2階は建物の長手方向に沿ってバルコニーが設置されている。海辺では窓の清掃やメンテナンスなどにもバルコニーは有用だそうだ。
当然強烈な海風も対策が必要だ。雨戸は光が通るものであるが、格子は太く、ガラスではなく強靱なポリカーボネートをはめ込んだ。
完全にプライベートな展望台。バルコニーはそのまま1階テラスの庇となっている。
弧を描きながら三角形が連続している様子が分かる。それぞれの場で求められる広さに応じて、設計の際三角形の頂点をつまんでフレキシブルに調整した。
ここでは平行や直角といった効率から生まれた造形はなく、それはらを意図的に生み出さないように5cm刻みで微調整を繰り返し、建築の自由さを存分に表現した。
但し「自由にした分、設計には時間を要した。」と廣部さん。
そして敷地北側に露出する岩盤。その間を縫うようにプランニングされている。
キッチン。山側の景色が望める。
キッチンから奥は路地のようにうねり、水回り、階段室、主寝室へと続く。
複雑な平面の水回り。トップライトと浴室の外の小さな坪庭から外光を取り込んでいる。
主寝室からもこの通りの眺め。壁の孔からは夕日が差し込む。
1階へ。毎作品、階段の手摺りデザインにこだわる廣部さん。
階段横にはエレベーターも備わる。
1階はゲストルームと、ゲスト用の水回りが2階と同様にレイアウトされおり、先へ進むとサロンとなる。
奥様のデスクと中央に夫婦二人が趣味の物を置く納戸のようなスペース。
その奥にご主人のデスクとアウトドアリビングと続く。
アウトドアリビング。屋内に見えるが格子戸は吹き抜けており、海風が通り抜けるので夏場でも涼しい。
ここに猫を放すこともあるので格子戸で仕切ったそうだ。
この段差は岩盤の段差をそのまま利用したもの。
次に離れへ。1階が車2台分のガレージで、2階にはワークアウトスペース。
両側に納戸や小さな水回りがあり、奥は和室となる。
母屋とは対照的に離れはシンメトリーにしつつ、三角形の印象を残す。
最後に和室へ。施主自身たちが気分を変えてここで休んだり、ゲストにも使ってもらえるようにした。RCの天井に合うような鉄製の床柱が目を引く。

「複雑な条件の敷地に、踊るような“足跡”を刻んでいく道ゆきでした。今回のように全体を強い幾何学で、内部のアクティビティに合わせて空間のスケールを可変していく手法を『モーダル・プランニング』と名付けました。『モーダル』とはJAZZ用語から連想した言葉で、少し乱暴に定義づけると一つの調性(キー)の上に基本的にメロディーが乗っているのではなく様々なキーに飛んでいく『自由』を担保した先にある可能性を探った手法です。自由平面の三角形が連続する『複雑性』を操ることで、ランドスケープとの関係や各室の必要な面積、空間のボリュームなどのパラメーターを自由に可変させようと試み、結果として内部の自然なスケール感や敷地との親和性が生まれることを目指しました。」と廣部剛司さん。
【VILLA MKZ】
設計・監理:廣部剛司建築研究所
構造設計:エスフォルム
施工:片岡健工務店

用途:週末住宅
構造規模:RC造/地上2階建
敷地面積:1254.11㎡
建築面積:206.70㎡(母屋 144.13㎡、離れ 62.56㎡)
延床面積:371.52㎡(母屋 247.48㎡、離れ 124.04㎡)

Posted by Neoplus Sixten Inc.

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