堀口珈琲横浜ロースタリー

Akio Takatsuka, Neoplus Sixten Inc.
19. juillet 2019
Photo by Neoplus Sixten Inc.

敷地面積643m2、建築面積385m2、延床面積499m2。S造、2階建て。
当初別な設計図があり、それを元に展開して欲しいとの依頼であったが、それは箱型の2階建てで、いわゆる工場然としたものであり、それを進めるのであればこれはどうかと高塚さんが提案したアイデアで進めることとなった。
2階建てではあるがほぼ平屋で、門型鉄骨ラーメンの上に切妻屋根を被せ、その小屋裏の一部(窓枠4枚分)が2階で梁の上に乗っているような構成。そのため両側の窓枠2枚分は殆どが吹き抜けとなっている。切妻にすることで箱型から壁面積を削減しながら、当初案同等の床面積を確保した。
左の引戸がエントランス、中が倉庫への搬入用、右が搬出用の引戸。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

倉庫街にシンプルな切妻ボリュームは目を引くが、カフェや小売りをする建物ではなく、あくまでも焙煎工場だ。
食品を扱う工場なので、衛生面からも開口は殆ど設けられていないが、両妻面とサイドに1ヶ所採光のためにフィックスの開口がある。
屋根や外壁はガルバリウム鋼板の波板で、継ぎ目や段差の少ない塊感のあるボリューム。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

エントランス。右手の倉庫スペースをできるだけ取るために廊下は狭くなる。そこで接道に向けて開口を設け、圧迫感をなくしている。
壁にはコーヒーかすを練り込んだ窯業系ボード、ケイミューのSOLIDを使った。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

エントランスからクランク状に従業員の動線であると共に、見学通路でもある。
この建物の最優先はコーヒー豆の動線だ。倉庫に運び込まれた生豆は左上のパイプを空気搬送され、、 、

Photo by Neoplus Sixten Inc.

左の生豆保管庫に流れる→保管庫からは別区画の正面焙煎室へ→焙煎された豆は右手の選別室に回され→次に別室の充填包装室へ→そしてさらに別室の梱包室へ→最後に出荷という一筆書きの淀みない動線が求められる。
衛生区画を可能な限りガラス面で仕切り、製造空間と居住空間が視覚的に連続し、空間的広がりを生み出した。

製造工程を一通り見学できたので紹介。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

【生豆保管室】前室に運び込まれた生豆はエアダクトで左上のじょうごに流れてきて、その下の選別機で、異物や不良豆を取り除き、銘柄ごとにケースに収めてラックに並べられる。この部屋は常に25℃程に保たれており、生豆の温度を全て揃えてストックしておく。

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 生豆は焙煎室からの "注文" に応じて、ダクトで吸い込み隣の焙煎機上部のじょうごへ運ばれる。

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【焙煎】生豆は下の炉に落ち、データを用いながら職人の経験と感によって豆の様子を把握しながら焙煎される。目指す焙煎度になった瞬間に手前の冷却槽に取り出し、素早く冷却する。写真は正に焙煎豆が炉から出てきているところ。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

【一時選別】冷却され出来上がった焙煎豆はもう一度選別機に掛け、異物や色づきの悪い物、焦げてしまった物などの不良を除去。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

【二次選別】さらに人の目で選別を行う。機械では除去しにくい虫食い豆や異物を手作業で除去。
その後ブレンド商品を作る場合は、左奥のブレンダーで複数の銘柄を攪拌しながらブレンドする。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

【充填・包装室】衛生レベルのより高い部屋へパスボックスを介して運び入れ、個別包装した後、内容量のチェックと、X線検査機を用いて異物の最終チェックを行い、別なパスボックスから梱包室へ回されようやく出荷となる。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

焙煎機は2台あるが、将来需要が高まった時に備え、右手前にさらに2台分の焙煎機を設置できるスペースを確保している。
前述した2階部分が梁に乗っている様子がよく分かる。L字型の吹き抜け空間は、本来これだけの気積は必要ないが、作業者への快適性を考慮した余剰空間といえる。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

さらに妻面のハイサイドライトから外光が注ぎ、空を見て一息つくこともできるのだ。

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2階へ。左はトイレ、更衣室、休憩室などが並ぶ。右の開口からは1階の作業工程が見える。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

 1階から見えたボリュームはこのゲストルーム。主に海外の生産者を招き、生産工程を見学してもらいながら商談を行うという。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

 反対側にはカッピングルーム。実際にコーヒーを淹れ、品質の確認や、卸の顧客に試飲などをしてもらう。左に並ぶ様々なコーヒーメーカーは顧客の要望に併せて機器のアドバイスを行うため。
 

Photo by Neoplus Sixten Inc.

エイトブランディングデザインでは数年前から堀口珈琲のリブランディングを手掛けており、ブランドロゴや、パッケージ、Webサイトデザインのほか、手前に見える冊子のようにブレンド商品を9種類に整理し、商品の違いをマトリクスで視覚化することなどを行ってきた。この後、工場内への掲示物なども担当していくという。

Photo by Neoplus Sixten Inc.

高塚章夫さん。「モノのためにデザインされる工場ですが、そこで働くヒトのためのデザインを等価に建築化することで、働く空間の居住性が高まり、それに伴って製品の品質向上にも繋がると考えました。切妻のハイサイド窓は柔らかな自然光を建物の奥の方に導くだけでなく、特徴的な外観を生みました。倉庫や工場が集中する殺風景な地域にあって、建物から漏れ出す光が街灯のような役割を担い、そこに少しばかり温かみのある街並みを作り出せたらと願っています。」

【堀口珈琲横浜ロースタリー】
意匠設計:高塚章夫/aaat 高塚章夫建築設計事務所
プロデュース:創造系不動産
サインデザイン:エイトブランディングデザイン
構造設計:小山直丈構造設計事務所
照明設計:岡安泉照明設計事務所
家具デザイン:イノウエインダストリィズ
建築工事:三和建設

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