東京藝術大学国際交流棟

Kengo Kuma & Associates
21. décembre 2022
All photos by Neoplus Sixten Inc.
敷地は藝大上野キャンパス内音楽学部(音校)側の大学会館の横。
本施設は滝久雄・裕子夫妻の寄附により、デザイン監修を隈研吾建築都市設計事務所、基本設計を東京藝術大学キャンパスグランドデザイン推進室と隈研吾建築都市設計事務所、施工を前田建設工業が担当した。キャンパスグランドデザイン推進室にはヨコミゾマコト、谷章生らが加わっている。
この日は完成記念式典が開催された。
左から、東京工業大学 益一哉学長、東京藝術大学前学長 澤和樹、文部科学省高等教育局 池田貴城局長、東京藝術大学 日比野克彦学長、滝久雄、滝裕子、隈研吾、前田建設工業社長 前田操治、お茶の水女子大学前学長 室伏きみ子の各氏。

滝夫妻は「留学生を大事に。日本と外国の学生は不断に交わり、相互理解を深めよう」との思いから、2019年にお茶の水女子大学、2021年に東京工業大学、そして今回の東京藝大と3つ目の国際交流施設の寄附となる。
建物はというと、まず目を引くのがこのファサードだ。
「共に藝 (う) える」をコンセプトに、学長である日比野克彦が総合ディレクションしたパブリックアートがファサードや内部を彩っている。
ファサードは「変化し続けるパブリックアート」をテーマにしたテンポラリーアート。上部から順に紹介。
〈unclouded globes/建築科〉甲斐貴大
互いが支え合う構造形式を用いて、強度の異なる木材が全体をかたちづくる。
〈g love s/前田建設工業〉綱川隆司、南健太郎、白石矩子、 岩坂照之、上田康浩、笹倉伸晃、 石川理人、若本喜美子
本施設建設中に現場で役目を終えた軍手で、指文字によるメッセージ。
〈hida-hida/東京大学SEKISUI HOUSE - KUMA LAB〉隈研吾、平野利樹、安東慧、秋本寛太、綱川隆司
和紙素材の張り子で作られた一枚の長いリボンで光や風を受け、和紙ならではのゆらぎを生み出す。
〈WORLD PEOPLE CUP/日比野克彦とDOOR〉:DOOR受講生・修了生、藝大学生、大宰府市民、太宰府天満宮参拝者
カタールW杯アジア最終予選に参加した46カ国が、自国の文化を携えて世界に向かう気持ちを粘土で形作り野焼きした。
〈ARTS⇄LOVE⇄WALL ―芸術は壁を越えるー/デザイン科〉橋本和幸、今村亮介、南海宇、大西景太、松山真也、藍にいな、岩瀬香緒里、大西景太、高本夏実、シシヤマザキ、城井文、鉾井喬 、山田知沙
QRコードからWEBにアクセス。学生、卒業生、研究室などが作品を映像媒体で投稿し、国際交流棟内で作品が放映されるしくみを構築する。
>> www.love.geidai.ac.jp
〈Unspecified Landscapes/GEIDAI FACTORY LAB〉諏訪部 佐代子写真のネガポジデータを立体の厚みに変換して3Dプリンターで出力。光が透過することでイメージが浮かび上がる。(※建物内からの方が見えやすい)
〈misfit/共通工房金工機械室〉田中 航
鋳型からはみ出たばり部分も美しいと捉え作品に取り込んだ。我々芸術家もある意味“はみ出し者’’である。
建物へ。敷地は元々少し下がっている場所で、地下に見える部分を1階とし、2階で既存の大学会館(右手)とレベルを揃えた。
1階は大学生協が美校より移転してくる。大庇の下に新しい居場所ができた。
天井スラブ(2階床スラブ)は配筋付製材型枠を採用。コンクリート型枠がそのまま仕上げとなるものだ。
周囲には本交流棟施工の様子がパネル展示されていた。
床はNLTを採用。NLT=Nail-Laminated Timbeはツーバイ材を縦向きに並べ釘で連結させ大面積を作れ、高強度が得られる。建物の軽量化や工期短縮などのメリットがある。国内の大規模案件の床では初の施工事例となるそうだ。
鉄骨造と木造の混構造。
1・2階は2階に食堂の厨房が入るため全て鉄骨造。3・4階は前半分が木造、後ろが鉄骨造。5階が全て木造。2階の床が配筋付製材型枠、3・4・5階の床がNLTとなる。
3階の前半分が木造だと理解できるカット。
但し、このあとに紹介するが木部は殆どが耐火被覆されている。
階段室。
壁面に〈留学生交流パブリックアート〉日比野克彦、藤原信幸、藤田クレア
留学生及び留学生OBが『共に藝 (う) える』のコンセプトをもとにワークショップ。2D・3Dデータ提出のいずれかの方法でクレアーレ熱海ゆがわら工房とコラボレーションして制作した陶板レリーフ。30カ国約150名が参加し 2年かけて完成するプロジェクト。壁面は別な企画で作品を掛け替えらるようになっている。
1階 大学生協、2階 藝大リビング(食堂)、3階 コミュニティサロン・事務室、4階 コモンスペース・院生室・茶室、5階 教員室
2F 藝大リビング(食堂)。(※撮影時はテーブルが下げられた状態)
藝大をご存じの方にとって音校の食堂は『キャッスル』だが、2021年11月に85年間の歴史に幕を閉じている。なお美校の大浦食堂も2021年2月に閉店している。
既存の大学会館側から見る。小上がりになっている部分に大きなオープンキッチンと配膳カウンターがあった。
左のエントランス側には初代店主福本亘さん、2代目店主福本豊さんがいつも笑顔で食券を売っていた。
3階コミュニティサロン。多用途のフリースペース。
木造部は燃え代設計で現しではなく耐火被覆としている。床のNLTも上にフローリングで仕上げられている。
窓際のブレースのみ木造部が露出しているが、これは耐震ブレースで、火災による損傷があっても建物の倒壊に影響がない部材であるため。
既存の大学会館との接続部は、下の食堂の天井を上げたためレベル差がある。既存の構造が断面のように現れユニークな表情を見せている。
大学会館側から見た様子。
4階 コモンスペース。左に茶室。(展示の準備をしている)
茶室の〈地産地消パブリックアート〉和紙:宮寺雷太、欄間・照明:入沢拓、床柱・炉縁:中内安紀徳
壁面、天井、襖、障子には藝大取手校地の紙漉き工房で漉かれた和紙が貼られてる。欄間と照明は学内公募により選ばれ、かなり前衛的な欄間となっている。
ファサードのキャットウォーク。バルコニーではなく、メンテナンスやパブリックアートの取り付けなどの際に利用される。
2022年4月より学長に就任し、パブリックアートの総合ディレクターを務める日比野克彦氏。
「国際交流棟では、自分の中を自分が駆け巡る体験が生まれる場面が数多く起きることを期待する。」
本施設を寄附した滝久雄・滝裕子夫妻。
「世界共通のコミュニケーションツールであるアートを軸にした交流が、日本と世界のよき関係に繋がっていくことを心から願う。」
デザイン監修の隈研吾氏。
「アートと建築とが 一体となって日本の文化を発信する。藝大の杜に融け合うように、建築の構造の大部分が木造となった。さらに内装や家具にも木をふんだんに使って、温かみのあるアートの杜を目指した。」
【東京藝術大学国際交流棟/Hisao&Hiroko TAKI PLAZA】
基本設計:東京藝術大学キャンパスグランドデザイン推進室(ヨコミゾマコト、谷章生)、施設課、隈研吾建築都市設計事務所
実施設計・監理:東京藝術大学キャンパスグランドデザイン推進室、施設課、前田建設工業
デザイン監修:隈研吾建築都市設計事務所
施工:前田建設工業

構造:鉄骨造+木造
規模:地上5階建て / 18.65m
建築面積:373.24㎡
延床面積:1,494.48㎡

施設詳細:www.geidai.ac.jp/wp-content/uploads/2022/12/20221215_leaf.pdf

Posted by Neoplus Sixten Inc.

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