加藤邸
根市拓+石村大輔+橋本光秀による横浜市の住宅「加藤邸」。若い夫婦と小さな子どものために、若い3人の建築家がユニットを組んで設計を手掛けた、各々にとってのデビュー作だ。
[Kato House by Taku Neichi + Daisuke Isimura + Mitsuhide Hashimoto]
(取材・撮影は2019年3月)
隣地との距離もあり、角地、カーブの外側、坂を下った場所という “目立つ” 立地、そしてすぐ近くに緑地を望める。ある意味特別な条件を備えた敷地にあってどのような家であるべきか、かつ周辺に並ぶプレファブ住宅の中に於いて、異質な存在にならないようにするにはどうすべきかを検討し続けた。
建蔽率23%とかなりゆとりを持って敷地のほぼ中央に建つ。右手コンクリート面も敷地だが、歩道を拡張するような雰囲気で街に開いた。
正面と同じく、1階は4面とも中央、2階は隅に開口を持つ。そのため竪樋は隅になく壁面を沿うよう設置されている。
玄関を開けると施主の息子さんが出迎えてくれた。カワサキGPz1100はご主人の愛車で、このバイクをいじるためにもガレージ兼の玄関土間とした。
正面にガラス引戸の玄関土間と、すぐに家の中央に明るい階段室。街に対してとてもオープンであることが分かる。
階段室を見上げると幾つもの開口を持つシルバーの吹き抜けだった。
壁は構造用合板だが、サンダーで出来るだけ平滑にした上で塗装してあるため、空を映し込み外と一体となるような不思議な吹き抜けとなっている。
1階は鴨居や敷居が確認できるように、通常は建具で複数の個室を作って使う9グリッドの平面を持つ。(撮影用に建具を外した状態)
気持ちのいい風が抜ける様子がよく分かるカット。光も四方+上からも注ぐ明るい1階。
手前が主寝室、右がウォークインクローゼット、正面に収納で分けた子供室2室、右奥が水回り。壁で仕切らずに、子どもの成長や家族の価値観によってフレキシブルに変化させていくことができる。
トイレは2枚引戸。出入り側でない方を開けると収納が現れた。手前は洗面兼脱衣室。
2階は階段室をコアとした回遊型の平面。
コアの周りにそれぞれ異なるエリアを振り分け、奥からダイニング、リビング、スタディ、キッチンと回る。
コアの上部無塗装の部分は開口、右上は収納、その下がトイレ。
垂木は軒桁に対して角度を付けて風車のように配し、動きのある平面に対して構造も動きのあるものとした。
2階の開口が四隅にあるのは、ちょうどその四方向に抜けが得られるためだった。
南の角からは緑地も望める。隣接住宅は幸い開口が少なく、リビングが1階にあることから大胆な開口と、薄めのカーテンで軽やかさを強調した。カーテンレールは軒桁に直接溝を刻んで取り付けてある。
一面は端から端までキッチン天板。奥さんの “専有部” だ。
スタディスペース。
コアの中にあるトイレ。吹き抜けの開口から光を取り込める。
階段室は1階と2階の日常を繋ぐ非日常的な空間。トップライトに注ぐ光が拡散しながら各室に届けられる。
この後日射をコントロールするスライド式の天幕が付けられたそうだ。
石村大輔さん(後ろ)、左から橋本光秀さん、根市拓さん、施主ご家族。
「周辺はゆとりのある敷地を持つ住宅が多く、隣地との距離もあり、庭や駐車場もある。日照やプライバシーの確保に関しても比較的条件が良いはずですが、そういった周辺環境に関係なく設計されたハウスメーカーの提供した住宅が建ち並んでいます。私たちはこういった状況に対して、ただ快適な住まいとしての家だけではなくて、おおらかな周辺環境をもつ郊外住宅とは何かを考え、どこから見ても街に開き、街も家も明るくする住宅を提案しました。」
設計・監理:根市拓+石村大輔+橋本光秀
構造設計:中原英隆
施工:仲野工務店
家具(キッチン):石川製作所
主構造:木造
規模:敷地面積255m2、建築面積59m2、延床面積114m2。2階建て
Posted by Neoplus Sixten Inc.