LEAF COURT PLUS

Studio Terra
7. September 2022
All photos by Neoplus Sixten Inc.
場所は渋谷区幡ヶ谷。1988年竣工の、地下1階・地上5階建て、80住戸。賃貸マンションとホテルの中間のような、いわゆるマンスリーマンションとして運営されていた「リーフコート新都心」を、昨今の社会情勢や利用スタイルの変化に対応した大規模リノベーションを施し、「LEAF COURT PLUS」として生まれ変わらせた。
両開き扉を開けるとエントランスホールの先に緑豊かなコートヤードが現れる。
事業主である荒井商店は、オフィスや賃貸マンション、高齢者住宅などの賃貸・管理事業をしており、今回ここを「緑と共に暮らし、働く賃貸マンション」にしたいとの思いから、ランドスケープデザイナーのスタジオテラに共用部全体のデザイン監修を依頼した。
スタジオテラからは "バイオフィリックデザイン" の考えのもと、どこにいても緑との繋がりを感じることができ、活き活きとした植物によって人の活力を高められるよう、コートヤード、ドライエリア、地下などあらゆる共用部を緑に包まれる環境とし、さらに共用のワークスペース、ジム、カフェも設置するなど、居住者同士のコミュニケーションが生まれる設備も提案・デザインした。
コートヤード。既存では一部にハマヒサカキが植わり、柵に囲われた眺めるだけの庭で、エントランス側からガラス張りのサンルームが少し突き出し、小さなラウンジになっていた。
改修により20人ほどが利用できるベンチ(制作はSixinch、フォームに伸縮性防水コーティング)を設え、新しいコートヤードを象徴するような存在とした。ベンチの周囲には、近くにある東京を代表する緑地、玉川上水緑道と明治神宮に生息する地域環境に根差した植物を中心に構成し、その数は60種類近くに上る。
中庭の奥は段々になったサンクンガーデンで、同じくハマヒサカキと1本エゴノキが植わっていた。シンボルツリーとしてエゴノキは残し、こちらにも多種の植物を配した。
見上げると上階廊下の腰壁にプランターを取り付けられており、ヘデラ(アイビー)が植わる。各階のプランターに潅水装置が付いており、浸透性のプランターであることから、上階から水が雨のように滴る演出とした。
3階からの眺め。
地下共用部。単に緑に包まれた環境を創るだけでなく、 プライベートも仕事も充実した生活環境を提供すべく「+α」のサービスを設けた。会議室3室、左にジム、中央の小上がりはヨガスペース。
ヨガスペースの隣がミニキッチン、奥にワークスペースと続く。天井にはハンギングプランターに10数種類の植物、床にも大型のプランターを複数配した。
1階から見えた、エゴノキが植わる段々のサンクンコート。
ワークスペース。元は食堂だったが、島状の “屋内コートヤード” を創った。
1階のコートヤードや、左のドライエリアなどと植わる植物に明確な違いは持たせず、今後それぞれの庭の条件に合う合わない植物が出てくることを前提に、淘汰されて行く様子をモニタリングしていくそうだ。
スタジオテラとしては初めて手掛けた内装であるため勝手の違うところも多く、実施設計・施工を担当したジークからたくさんの学びがあったプロジェクトだったという。
ドライエリア側のベンチから回り込むとデスクと椅子席に切り替わる。天板やベンチは耐水性の高いメラミン化粧板で仕上げた。
室内の植栽ということもあり、特に気を遣うのが光、湿度、空気の流れだ。植物の育成には最低でも2000ルクス必要だそうだが、空間全体が2000ルクスもあるとオフィスワークをする人間にとって明るすぎるため、LEDのスポットライトを植物に向かって照射している。
日中はご覧のように太陽光に近い白い光。
照明は自動制御されており、月ごとに1日を通して日の出、日没、夜間の照度や色温度を徐々に変化させ自然に近い光環境を再現している。
夜には植物の育成に欠かせない青色・赤色の光を当てる時間や、完全に消灯する時間も設定されている。
遠藤照明の調光システムを利用し制御している。
消灯された時間帯、利用者はランタンを使う。
足元灯は森の中の明かりをイメージし、不整形なリフレクターを使った。これら照明計画はFIG Lighting Designが担当。
植物に風が当たりにくいように空調の吹き出しはベンチ下に設けてある。(一部天井にカセット空調もある)
潅水はセンサーにより土中湿度が低下すると自動で水やりをはじめる。他にミストを備え葉に湿気を補う。
植物のネームプレート。ホテルのようなマンスリーマンションだった頃のルームキーホルダーをオマージュしたデザイン。
スタジオテラからDAILY SUPPLY SSSに声を掛け、ここに棲まう人のライフスタイルをイメージした日用品や雑貨がワークスペースの一角に並べられている。
そのほかDAILY SUPPLY SSSがアーティストに依頼して、この空間に合うドローイングを制作してもらった。地下共用部に何点か掛けられている。
もう一つの「+α」サービスはカフェ。1階エントランスホール横にあった常駐の管理人室をコンバージョンした。朝は(調理の必要のない)軽食やコーヒーを、夜には酒類の提供もある。
最後に住戸を紹介。専有部のデザインは三井デザインテックが担当した。
家具が設置されたモデルルーム。平均26㎡のワンルームで賃料は11万円台〜13万円台。
左からスタジオテラの野田亜木子さん、石井秀幸さん、スタジオテラ担当の渡邊聡美さんと鈴本麻由美さん。FIG Lighting Designの永松冴子さん。

「私たちはこの数年間、感染症等の影響を受け『暮らしの場、働く場に対する本質的な価値とは何か?』と自問自答し、新しいライフスタイルを模索し始めているように思います。本プロジェクトでは、都心における職住一体型のライフスタイルを目指しました。」と石井秀幸さん。
【LEAF COURT PLUS】
共用部総合デザイン監修:スタジオテラ
共用部インテリア実施設計・施工:ジーク
共用部照明計画:FIG Lighting Design
植栽施工:東光園緑化
潅水設備:べルックス
アート・日用品監修:DAILY SUPPLY SSS
専有部設計・施工:三井デザインテック
事業主:荒井商店

敷地面積:1,281.930㎡
建築面積:651.513㎡
延床面積:3,072.758㎡
所在地:東京都渋谷区幡ヶ谷 2-3-4

Posted by Neoplus Sixten Inc.

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