照片 © Hiroyuki Hirai
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子午線ライン明石船客ターミナル

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位置
兵庫
年份
2003

明石海峡大橋という新しい交通インフラの完成後、淡路島と明石を結ぶ船舶の路線はその在り方の見直しを求められている。このターミナルはそうした路線の一つである明淡高速船が建て替えを計画したものであり、淡路島を結ぶ路線を積極的にコミュニティーのための通勤通学の足とすると同時に、新しい旅客、観光を目的として淡路島を訪れようとする人達にとっても魅力的な路線としたいという想いから構想は始まっている。

民間の路線ではあるものの公共性の高い計画であるため、施工までを含んだ一種の事業コンペの形でこの計画は公にされ、当初明石市議会での説明資料として描かれた天文台そのものといった一枚の絵だけが新聞紙上に発表されており、そのイメージを実現することがコンペでは求められていた。

我々の提案はそこにある<明石・子午線・天文台>という提示された概念を直截に引き受けるのではなく、むしろ「象徴的」に受け止めたいと考えて提出したものである。

この建物は機能的にはまったくシンプルなもので、切符売り場やトイレのある待合ホールと切符を渡すゲートまでの通路部分の二つの空間から構成されている。

待合ホールの空間はこの建築の最も主要な部分であり、<明石・子午線・天文台>という与条件を空間化しようと試みた。単純な、閉じた箱である建物には二種類の開口だけがある。一つはいうまでもなく、建物の軸とずれてはいるが、正確に南北軸を表示するよう穿たれた天井の十字形のスリットであり、入ってくる光は日時計として時を刻むと同時に、天井の微かなドーム状の形態と共に、この場所が子午線上にあることを表象している。天井をドーム状としたのは、床や壁に落ちる光がきれいな十字形ではなくノイズのある歪んだものとしたかったためでもあり、それは光が十字架のように象徴的過ぎる形態となるのではなく、あくまでも日時計としてあって欲しいと考えたからだ。

スリット状の開口を生かすため、屋根の構造は基本的に鉄板のモノコックとし、必要な部分のみ型鋼で補強した。そのようにして製作された屋根版は基本的にキャンティレバーとして支えられ、構造的に必要な場所にのみ柱を建てることとした。

建築を一つの「カメラ・オブスキュラ」とし、そこに世界の「模像」を映し出すこと。旅立つことが自己確認を求められることであるなら、その第一歩である待合ホールで唐突に出会う世界の「模像」がその導入になるかもしれない。

この空間のもう一つの開口は水平に長い出窓である。天井からの光を生かすため、この窓からは光が入らないようにすること、同時にこれから自分が向かう方向、海だけを切り取る開口とすること、以上二点から何度も検討しなおしてこの形状を決定した。天井の開口とは違った形で世界を切り取る開口としたいと考えたことの結果が、このピクチュア・ウィンドウである。

このターミナルを構成するもう一つの空間、通路部分は待合ホールとはまったく異なっている。露出した型鋼のフレームに取り付けられたアルミ型材ルーバーと型板ガラスの開口、テントの屋根など、すべてどこかで見たことがあるような既製の工業製品を使用することで、そっけない「即物的」な空間としたかった。外に対して閉じた空間である待合ホールを抜けると、再び通り抜けてきた現実の都市とこれから乗り出して行くはずの「海」とが同時に目に入ること、それも実にあっけなく、というのが設計の意図である。

待合ホールのやや象徴的・抽象的に過ぎる空間体験の後にそれの揺り戻しであるかのような、リアルな空間を対置すること、しかしそんな瞬時の経験こそがまさに「旅立つ」ことなのではないか、と考えているのだ。

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