ナヤ・ノイエ

北海道
写真 © Koji Sakai
写真 © Koji Sakai
写真 © Koji Sakai
写真 © Koji Sakai
写真 © Koji Sakai
建築家
アカサカシンイチロウアトリエ
場所
北海道
2014

洒脱なご夫婦をクライアントとする小規模な住まいだが、将来的な子供の有無や、自宅の一部をギャラリーや仕事用のミニスタジオとして使用する可能性など、住宅としてはスタート段階での不確定要素が多いプロジェクトであった。こうした条件から我々は、完成された住まいではなく、北海道の気候に耐えうる性能を担保しつつも、変化するライフスタイルを受け入れ、住み手のクリエイティビティを喚起するような、未完の余白を持った住宅を用意すべきだと考えた。

藻岩山中腹にある50坪の敷地周辺は風致地区に指定されており、角地である敷地に面する2本の道路と隣地からそれぞれ3m、2m、1.5mという後退距離、そして法的な高さ制限をクリアすると、配置とボリュームはほぼ自動的に決定された。札幌都心部や石狩湾への眺望を生活に取り込む為に2階床を出来るだけ高く設定する一方で、基礎部分のコンクリート量を抑えコストを下げるため、敷地の傾斜に合わせ1階床に段差を設けている。その結果現れる4m近い天井高を持つ空間に、柱の細長比を満たす横架材が挿入され、その高さは将来的な収納棚の設置に対応できる寸法としている。むき出しのコンクリート基礎は蓄熱体として機能し、しばらくはキャスター付きの可動収納ボックスが簡易的な間仕切りの役割を担う。将来の固定間仕切壁設置はホームセンターで手に入る3×6板ベニヤによるセルフビルドを想定し、その下地となるスパンに柱や照明スイッチスタンドを配置している。アプローチ・玄関周りはギャラリー的使用に対応できるよう段差の無い土間空間とし、トリプルガラスの木製断熱ドアを開け放つと外部とも一体に使用できる、住み手の生活風景が街に染み出る設えとした。こうした1階のフレキシビリティを確保する為、調理・入浴・洗濯といった機能は上階にまとめ、生活シーンと遠望を重ね合わせている。1階と2階の気配を繋ぐ階段や洗面室廻りに用意した二つの吹き抜けは、冷房の無い住宅における通風や、1階コンクリート床暖房をメインとした暖気のスムースな循環確保にも有効であり、その効果をさらに高める為に、空気の煙突としてペントハウスを設けている。この塔は、ナイトパージに有効なだけでなく、敷地内に堆雪スペースが無くフラット屋根に雪を載せたままにする札幌の住宅事情による屋根点検や屋上緑化のメンテナンスにも有効である。
プロジェクトの始動当初、手を加え使い続けられる強度や余白を持った建築として「倉庫」や「納屋」が想起された。彼らの暮らしの変化に合わせ、建物に自分流の手を加え続けることで愛着が増し、将来的に「自分たちの家」となり得る受容性を持った「納屋」のような建築であってほしいと思う。

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