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復興のデザイン

岩手県の陸前高田市は、今年3月に発生した東日本大震災による大津波によって都市機能のほとんどを失い、壊滅的な被害を受けました。陸前高田市のオートキャンプ場に建てられた仮設住宅は、隣接する住田町にある住田住宅産業が地元の木材と長年の大工としての伝統を活かして設計・建設された木造の戸建て仮設住宅です。
建築家の原田勝之氏と菅原大輔氏は、震災に直面した今、建築家として何ができるかを模索し、本プロジェクトで住田住宅産業に協力する形でインフラと配置計画を行いました。
 
震災後、多くの建築家が復興のため様々な活動や提案をしている中で、「建築家の役割」をあらためて問い直す、両氏の取り組みについてお話いただきました。
今回のプロジェクトに協力することになった経緯についてお話ください。

菅原:    震災後、建築に関わる者として何ができるかを話し合いリサーチする中で、住田町と住田住宅産業の木造仮設住宅の取り組みを知りました。瓦礫撤去のボランティアとして現地に向かった際に、住田住宅産業を訪ね、仮設住宅や震災に関する様々な話を伺うことができました。その後、住田住宅産業が陸前高田市の仮設住宅建設の一部を担当することになり、住田住宅産業の依頼によりインフラと配置計画を協力することになりました。
マスタープランはどのように進められたのでしょうか?

原田:    今回建設地として選ばれたのは陸前高田市の東側にあるオートキャンプ場で、スロープ状の構内は細かく区画が分かれ、道路が走り、植栽があります。仮設住宅を建設し、かつ、周囲の自然環境を保全するために、新しくインフラを敷設するのではなく既存設備のうち、利用可能なものを選別する方法が模索されました。
 
住宅を機能させるためには上下水道や電力、通信手段の供給が要求されます。構内の既存設備を利用できるものとそうではないもの。「仮設集落」に要求されるインフラを取捨選択しつつ、工期も短く、原状への復旧を見据えた計画を提案しました。
配置計画はどのように進められたのでしょうか?
 
菅原:    住田住宅産業の仮設住宅はユニットとして形が決まっています。そこで、その配置計画によって隣接住宅や環境と関係を調停する集落的な建ち方を創り出せないかと考えました。実際には各住居の視線が交錯しないよう角度を振り、同時にまとまった外部空間を作りました。これによって、庭を介した住民同士の交流と同時に、適度なプライバシーが成立すると考えています。また、この建ち方は、インフラの敷設距離短縮、既存樹木や設備との干渉回避など、機能面でも非常に機能しています。
 
復興にあたり建築家が役に立つのは住宅の量の供給ではなく、当たり前の様な操作によって生活の質を向上させることだと考えており、震災発生直後から仮設住宅の配置計画に注目していました。当たり前の様な操作で生まれた今回の「集落的佇まい」は、そういう意味では職能を上手く活かせたと思います。
 
集落で大事なことは、各要素が鳥瞰図的に計画されものではなく、理にかなって集い定着することだと思っています。宅地開発のように、多くの人が住んでいても、隣り合っている個々の住宅が無関係に計画されていればそれは集落とは言えません。集落は農村でも漁村でもその集まり方に理由があります。環境に適応するように一軒目の住宅が建つ。次の人はこれに適応するように建てる。また次の人は環境と二軒に邪魔にならないように建てる。その時影響している、何かしらの理を積み上げて初めて、集落的な集まり方と環境-人、人-人のコミュニケーションが作り上げられると思います。このような美しい関係の構築ができたので、本計画に集落的な佇まいが表れているのだと思います。
> マスタープラン
> マスタープラン
今回のプロジェクトにおける地域の活性化や繋がりのデザイン、という視点は非常時以外の建築活動においても考えられているのでしょうか。

原田: 人と人との繋がりが新しい価値や空間を生み出すきっかけになればよいと考えています。グローバルに規格化された生産システムでエネルギーを大量に消費するのではなく、よりコンパクトに空間をつくる方法論を再考する時期に差し掛かっているのではないでしょうか。

菅原: 私は東京をベースに活動していますが、地方や海外の仕事を多くかかえています。その場合、「地産地消」を考えることは一つのキーワードとなります。その地方や国での技術レベル、材料、制度、構造、環境、法律を熟慮し設計すること。それが建築全体の質を大きく左右します。東京で当たり前のような最先端の材料や物凄い精度の施工を地方や他国で設計しても魂の抜けた、質の悪いものしかできない。その土地の良さを宝探しのように発見し、それを消費しながら作っていく。それでこそ初めて地元に融合し、その魅力を引き出すデザインになると思います。

日本が元気になるためには、東京や大阪だけではだめ。やはり、異なる魅力を持った地方が、モザイクのように集積する国になる必要があります。それは建築に限らず、全ての「地産地消」が注目される理由だと思います。
> 計画時マスタープラン
> 計画時マスタープラン
復興支援を通して「建築家の役割」とは何とお考えですか?
 
菅原:    「建築家の役割」とは、美しい関係を構築することだと思っています。つまり、総合的な環境を読み取り、デザインのスタイルだけでなくその対象も変化させ、具現化していくこと。そう考えると、震災後の現状に美しい関係を築こうとしていない建築家が多い気がします。建築家の特徴が表れるものを作ったり、東京から最先端を持って行ったり…。震災への支援、復興が叫ばれる今、建築家は所謂「建築デザイン」をすべきではないと思います。
 
地方には素晴らしいもの、人、技術、情報が散在しています。これを適切につなぎ合わせ、震災と人、被災地と都市、復旧と復興の美しい関係を構築する。これが、総合的な視点をもつ「建築家」に求められているものであり、できることだと思っています。今回、私達建築家が行ったのはインフラ設計と各住居の配置計画。一個一個の住宅は、住田住宅産業が最高のものを開発されていたので、私達は小都市計画を行ったといえます。
>ダイヤグラム
>ダイヤグラム
復興支援のためのこれからの課題について教えて下さい。
 
原田:    今はまだ防潮堤建設や市街地の盛土造成を前に、被災した市街中心部は土地がそのままの状態で残されていますが、これからは住宅の高台移転や産業基盤の整備が始まろうとしています。
 
その一方で長期的に見て重要なのは、この地域には旧伊達藩の文化が(現在では忘れられながらも)残されているという事実です。昔はこの土地で取れた金が神社仏閣の築造に利用されてきました。また、今もなお、気仙大工の残した民家をまだそこかしこに見ることができます。それゆえにこそ一層、土地の持つ固有性や場所性がこの津波によってより一層失われかけようとしていることにも注意を払っておく必要があります。そのような過去の風景はこの町の将来を見据える上での立脚点になるのではないか。大文字のマスタープランでは汲み取ることのできない何かしらの記憶や声をすくいとり、再構築してゆくことが、今この町に求められていることなのではないかと考えています。
 
 
菅原:    木造仮設という点に絞って課題を挙げるなら、地元の工務店と都市部の建築家が臨機応変に支えあえるシステムを構築することが求められます。私たちの国、日本は台風と地震の国。その被害と上手く付き合うことが求められます。
 
そんなときに必要なのが仮設。そして、仮設といえば一般的にプレハブメーカーです。しかし、それだけでは被災地の経済活動とは結びつきません。地場の工務店が動けば、材料、職人、人材、流通を活かしながら、仮設を建てられます。プレハブメーカーが持っているノウハウを都市の建築家が提供できれば地場の仮設は可能です。天災の国、日本では地場×都市のネットワークが必至だと考えるようになりました。
 
 
聞き手:八木夕菜
陸前高田市 小友町獺沢第2仮設団地

建築家
菅原大輔(SUGAWARADAISUKE)
原田勝之(ARCHITECT LOUNGE)

プロジェクトチーム
SUGAWARADAISUKE +
ARCHITECT LOUNGE

住宅ユニット設計・施工
住田住宅産業 株式会社

敷地面積
18571.76 ㎡

建築面積
1788.60 ㎡   

写真
太田拓実

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