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女川町コンテナ仮設住宅

3月11日の震災と津波により甚大な被害を受けた宮城県女川町。
今回は坂茂氏によるコンテナを利用した多層型の仮設住宅を紹介します。
以下、本作品について坂茂建築設計およびボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(VAN)で、災害復興支援を担当する原野泰典氏にお話しいただいた。
女川町コンテナ仮設住宅 全景
女川町コンテナ仮設住宅 全景
プロジェクトを引き受けることになった経緯についてご説明ください。

震災直後から50箇所以上の避難所で、家族間のプライバシーを確保するための間仕切りを1800ユニット以上提供して来ました。その過程で、十分な平地がなく、仮設住宅が建設できないという問題を女川町の安住宣孝町長(当時)から聞きました。
仮設住宅は本来ならば都道府県知事による発注になりますが、宮城県では市町村の首長も発注できる措置を講じていました。そこで、町に対してコンテナを利用した多層型の仮設住宅を提案したところ、建設の依頼を受けることになりました。
敷地は、町が所有する総合運動場内にある野球場で、二階建て(3棟)、三階建て(6棟)の計9棟189世帯の仮設住宅を建設しました。
コンテナ仮設住宅 内観
コンテナ仮設住宅 内観
今回のプロジェクトの設計プロセス、基本概念についてご説明下さい。

コンテナを一つおきに積んで多層化した災害用の応急仮設住宅です。コンテナの中には、お風呂などの水まわりや子供用の部屋を配置し、コンテナの間には、リビングなど開放的な空間を配置しています。
コンテナを製造する段階で窓などの開口部は、あらかじめ工場で加工し、現地では大工などの専門職が不足するので、コンテナを積み上げるだけで短期間で建設できるように計画しています。
他の仮設住宅を見ると、新しく購入する家具で室内がごった返していました。そこで、このコンテナ仮設住宅にはあらかじめ造り付けの壁面収納を設置していま す。これは坂茂が運営するボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(VAN)に届けられた義援金によって提供され、ボランティアの手で設置しました。
このコンテナ仮設住宅団地は、町内で最後に建設された団地となったのですが、結果として、仮設住宅の抽選に何回も外れてしまった人たちが、さまざな地域か ら集まって住むことなりました。そこで、コミュニティが容易に形成できるように、集会所や、子どもたちが本を読むことが出来たり習い事ができるアトリエ、 簡単な日用品を買うことができるマーケットなども併設しています。マーケットは音楽家の坂本龍一氏、アトリエは日本画家の千住博氏の寄贈によるものです。
コンテナ仮設住宅 建設中の様子
コンテナ仮設住宅 建設中の様子
計画、設計された建築と実際に完成した作品との違いはありましたか?
問題解決するにあたって、困難だった点、工夫された点などがあれば教えて下さい。


前例のない三階建て仮設住宅ということで、関係各所から実際に建設してもいいということになるまでに時間がかかりました。
コンテナの製造は中国で行いましたが、短期間で日本の基準であるシックハウス対策の低アルデヒド 製品(F四つ星) を調達することが難しかったことが挙げられます。
他の地域でも多くの仮設住宅の建設が行われていたため、慢性的な職人不足が発生し、内装を中心とした専門職の確保に苦労しました。
アトリエ 外観
アトリエ 外観
これまでの作品と比較して、今回のプロジェクトはどのような違い、共通点がありますか?

これまで多くの災害支援を行なってきましたが、今回はこれまでになく短期間で大量の住戸を提供する必要がありました。しかしながら、仮設でも恒久的な住宅と同じく、住まい手が気持ちよく住めるデザインを心がけています。公共事業ですが、多くのボランティアが壁面収納の設置やアトリエなどのコミュニティ施設の建設に携わってもらって完成しました。
アトリエ 内観
アトリエ 内観
現代建築の流れの中で、今回のプロジェクトはどのような位置づけとお考えですか?サステイナビリティー、社会、環境、技術などの視点からお答え下さい。

日本における災害後の仮設住宅の供給は、プレハブメーカーなどが中心となって短期で簡易的な住宅の大量生産を行うのが一般的で、建築家が参加する機会がほとんどありませんでした。このコンテナ仮設住宅をはじめ、他の地域でも建築家が仮設住宅建設に関わったことで、被災者の住環境により配慮した仮設住宅支援を行うことへの可能性を広げたと思います。
全体アクソノメトリック配置図
全体アクソノメトリック配置図
今回のプロジェクトから学ばれたことは何ですか。今後の設計活動に活かされること、課題などについてご説明下さい。

首都圏での直下型地震の発生が危惧されていますが、限られた土地を有効に利用しながら仮設住宅を建設するためには多層化することが必要不可欠になります。その中で多層型仮設住宅の一つの前例を示すことができたと思います。
このコンテナ仮設住宅のみならず、今回の震災で建設された一般的なプレハブ型など、仮設住宅の住環境についてきちんと評価を行い、将来の震災に備えて、被災者の視点に立った住環境のあり方について検討し、改善していく必要があると考えます。

聞き手:八木夕菜
アクソノメトリック 
アクソノメトリック 
各住戸タイプ平面図
各住戸タイプ平面図
女川町コンテナ仮設住宅
2011
宮城県牡鹿郡女川町女川浜大原

発注者
女川町

建築設計
坂茂建築設計
東京

設計代表者
坂茂

プロジェクト設計者
坂茂
平賀信孝
松森淳
原野泰典
渡部玲士

共同建築設計
太陽工業 株式会社

構造設計
ARUP

設備エンジニア
TSP太陽工業 株式会社

施工会社
TSP太陽工業

室内造り付け家具の製作および設置
ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(VAN)

室内のテーブル
moreTrees + Louis Vuitton Forrest
より寄贈

室内のカーテン、照明
(株)良品計画より寄贈

団地内のマーケット施設
坂本龍一氏より寄贈

団地内のアトリエ施設
千住博氏より寄贈

敷地面積
12,320 m2

延床面積
5,671 m2

写真
平井広行

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