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風に染まる家

相模湾に面し海を一望する崖地に建つ住宅。既存の自然豊かな景観への影響を最小限とするため、高さを抑え、等高線に沿った立体構成となるように設計された。また、可能な限り透けた建物となるように、アプローチのある2階部分は周囲をガラスと格子で囲われている。
道路側からの外観。格子と和紙スクリーン越しに光りが透ける。
道路側からの外観。格子と和紙スクリーン越しに光りが透ける。
2階のリビングから続くテラスは階段状になっており、外部と内部は列柱によって緩やかに隔てられ、深い庇が日本特有の「縁側」のような空間を創出している。テラスの段差によって視界から手すりの存在が排除され、階段を下りることでさらに、風景との一体感が感じられる。開放的な2階とは対照的に、1階は上部のテラスの傾斜を活かして、開口を低く抑え、包み込むような落ち着いた空間となっている。フロアによる空間の違いは、ガラスやコンクリート石、和紙を通して取り込まれる光など様々な素材によっても演出されている
海側の階段状デッキ夕景。レベル差によって風景が変化する。
海側の階段状デッキ夕景。レベル差によって風景が変化する。
プロジェクトを引き受けることになった経緯についてご説明下さい。

House in YugawaraとRSH:3 (共に2006年竣工)を誌面にてご覧いただいたことが依頼をいただく直接的なきっかけと聞いています。いずれも都市から離れた環境に建つ建築であり、風景に対して開くことと閉じることの両義性について深く考えた経緯は、今回のプロジェクトへと引き継がれることになりました。
深い軒、床の段差、列柱による空間の分節を見る。外気に満たされた透明な空間
深い軒、床の段差、列柱による空間の分節を見る。外気に満たされた透明な空間
断面図
断面図
今回のプロジェクトの設計プロセス、基本概念についてご説明下さい。

敷地固有の風土性を反映する建築を考える際に、影と透過性、素材とプロポーションが重要である。その結果として空間は、重さと軽さ、ウエットとドライという質感の差異として反映される。この建築では高低差のある敷地から生まれる複数のフロアを上記のような異なる質感で割り振り、一方で建築形状と統合された動線計画でそれらを繋いでいく計画である。それぞれの空間に割り振られた特有の質感は、あくまで近接する環境の特性から導き出されるべきであり、今回の敷地はその意味で多様性に満ちた環境を建築に提供してくれた。
1階リビング。天井によって低く抑えた開口部から豊かな樹木の風景が飛び込む。壁に囲まれた白く静かな空間
1階リビング。天井によって低く抑えた開口部から豊かな樹木の風景が飛び込む。壁に囲まれた白く静かな空間
2F平面図
2F平面図
計画、設計された建築と実際に完成した作品との相違点はありましたか? また、問題を解決するにあたり、困難だった点、工夫された点などについてご説明下さい。

最上階はフィーレンデール梁(Vierendeel )構造を採用することで外周部から筋交いと耐力壁を排除している。主要柱である鉄骨無垢柱75*75の柱脚を固定するガセットプレートをコンクリートスラブに高精度で設置、建方を行うのは困難であった。最上階の透過性と遮蔽性を左右する格子とアクリル板のコンビネーションについて、仕上がりは計画通り良好であったが、アクリル板の熱膨張を吸収するための枠ディテールを現場で些細に再検討し施工した点は重要であった。
ダイアグラム
ダイアグラム
現代建築の流れの中で、社会、環境、技術などの視点から今回のプロジェクトはどのような位置づけとお考えですか?

建築の価値について考えた時に、例えば住宅は個人の所有物である以前に社会の産物であることを忘れてはならない。よって持続可能性とはテクノロジーの支配する領域であると同時に公的な存在価値のことでもある。その両面をバランスすることがこの計画では重要であった。さらに公的なデザインとクライアント固有のデザインを統合するためのバナキュラーな(あるいは日本の伝統的)手法はこの建築ではスタディー当初から用いられていた。

聞き手:町田夕子


風に染まる家
2011
神奈川

建築設計
岸本和彦/ acaa
神奈川

プロジェクトメンバー
越田三奈未

構造設計
諏訪部高広/諏訪部建築設計事務所 

施工
株式会社佐藤秀

建設管理
馬場章郎 

敷地面積
454㎡

延床面積
260㎡

写真
上田宏

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