目白の庭

東京目白の閑静な住宅地にある古家のリノベーションに伴い、若い富士枝垂桜を中心に庭を再構築した。この庭のミッションは、建築家のリクエストでもある枝垂桜をどのようにみせるかということであった。その答えとして桜と絡む風景のディテールを大切に考えた。

黒竹の袖垣によって二つに仕切ることで、実際は小さくなる空間を大きく見せた。一方は枝垂桜を植え、もう一方には既存の常緑樹、白椿を移植した。袖垣下の抜けを意識しながら、高さと幅を繊細に調整し、つながりをもたせることで空間の狭さを和らげた。この仕切りがあることで、リビング、書斎、玄関、エントランスゲートの四方向からの眺めに変化がついた。リビングからは、袖垣を挟んで二つの世界を同時にみることができる。エントランスゲートに立てば垣根越しに桜が覗き、玄関に向かって歩いていくと少しずつその全体が見えてくる仕掛けにもなっている。
リビングからつながる、ゆったりとしたウッドデッキテラスは石積みで囲った。春には日影躑躅、天城躑躅、梅花躑躅など、七種の躑躅が色鮮やかに咲き繋がり、山法師の白い花に彩られながら初夏を迎える。ローメンテナンスを実現するために決して土の部分は多くないが、緑を十分に感じられる植栽になった。
 
枝垂桜が落葉した後は、長い間白砂利の舞台を眺めることになる。しかし像(かたち)の際立つ冬の時期、樹木は自然物ではなく、造形物として目に映るかもしれない。彫刻として捉えるならば、枝のフォルム、剪定や誘引による造形は、あらためて重要だと気づかされる。
枝葉がかぶる庭園灯には、知恵の輪を引っ張りあげたような鉄のオブジェをかぶせた。それはロートアイアンの門扉の装飾を引用したもので、陽が落ちるとその足元にシルエットが浮かび、昼間とは違う表情で亭主を出迎えてくれる。
Landscape Architect
N-tree
Year of completion
2014