House with a Nested Room

バルコニーを兼ねた大きなボリュームの庇を既存建物からはみ出させて増築し、その下に離れのような場所を擬似的につくっている。
 
改装前の既存建物は72.04㎡のコンパクトな一戸建てで、そこに夫婦と子供2人と祖母の3世代が住んでいた。離れをつくる発想のきっかけは「祖母の居場所をきちんと確保したい」という夫婦の要望だったが、将来的に家族全員にとってどうすれば使い勝手が良くなるかを加味して考えた。その結果、祖母の居場所としてだけでなく、夫妻の主寝室・客間・思春期の子供部屋にも使えるような独立した個室(Nested Room)を、ひとつだけ明確に設定することにした。
 
個室の独立性を高めるため、周りに隙間(吹き抜け)をつくり、そこに階段とブリッジを掛けている。そのうえで、個室を既存建物からはみ出させるように建築面積の限度まで4.7㎡増築した。
 
階段を上ると、そこは個室を覆う大きなボリュームの庇の上部で、バルコニーと一体化した陽当たりと眺めのよいオープンスペースになっている。さらにその上部は軸組を現した広がりのある空間で、吹き抜けと相まって風や光が建物の奥まで行き渡るようにしてある。個室以外は視線や空気が緩やかに連続する一体的な構成としている。
 
一般的に離れは別棟でつくるものだが、今回は別棟がなく一体になっている。物質的に一体でありながらも、その境目にちょっとした距離感を設けることで、心理的には分離した主屋と離れの関係を作れないかと考えた。核家族向けのコンパクトな既存建物は数多くあるが、時間を経て家族構成や周辺環境が変わったとしても、既存建物を活かしながら長期的に使ってゆくための試みでもある。
場所
神奈川
Year of completion
2015