豊島区役所新庁舎(としまエコミューゼタウン)

豊島区役所新庁舎(としまエコミューゼタウン)の照明デザインを手がけたALG建築照明計画は、これまでも建築と照明の共同プロジェクトに多数関わり、建築と一体となる照明デザイン、いわゆる「建築化照明」を実現しています。今回のプロジェクトの建築設計を担当した隈研吾氏とは、藤屋旅館、長崎県美術館、森/床、など数々の作品で関わり、建築と照明デザインの関係性を長い時間を掛けて培ってきました。
本プロジェクトでは、公共空間における自然と建築、人と建築をつなぐ役割として照明計画を担当。「自然と建築の共存」というコンセプトのもと、環境に配慮した新しい光環境の提案を積極的に行っています。

照明デザインの可能性を探る試みが随所に見られる本プロジェクトについて、代表の小西武志氏にお話を伺いました。
近景 南西面 
プロジェクトの概要を具体的にご説明下さい。

豊島区役所新庁舎と超高層マンションが同居する日本発のマンション一体型本庁舎である。都心の老朽化し分散化していた区役所を集中し、区役所とマンション という新しい手法と共に、建築として、光環境として、新しい区役所への提案がなされた。「自然と建物の共存」をコンセプトに樹木のような建築がイメージされ、1階から10階までの外装は「エコヴェール」と呼ばれる太陽光パネルや日射制御ルーバーやグリーンパネルを組み合わした外装が覆っている。煌びやかな照明演出よりも区民が安心感や安定した心を取り戻すような照明デザインを行い、仄かな落ち着いた光を灯して、里山の自然や風景を再生している。区庁舎とマンションの光の区別をしつつ、光によってビルの景観をまとめ豊島区によって新しい光のあり方を提案する一つの形となった。
西側エントランス

区民広場
設計プロセスの中で特に大切にされた点、もしくは設計の手がかりとされた点は何ですか?

「樹木のような建築」という建築のコンセプトを受けて大自然の中にいるような「光のオアシス」をデザインし、建築に統合するような建築化照明を追求した。
省エネを念頭に置いた照明計画で、安らぎと活動的な光環境を提供すること、区民と町周辺と庁舎が一体となる光の空間を提案した。また、ランドスケープへ緑や自然の美しさを生かす光を提案した。
例えば象徴的である「エコヴェール」に照明を組み込み、ポール灯を出すことをせずに建築化照明で周辺環境への光を提供するといったような取組みがなされた。
エコヴォイド 1階より区役所階を望む
エコヴォイド 1階インフォメーションセンターより望む
今回のプロジェクトを通して、解決するべき課題、特に困難だった点は何ですか?工夫された点、導入した手法などがありましたらご説明下さい。

1階から10階まで続く吹抜空間「エコヴォイド」は建物が呼吸する空気の通り道として、また、建物の中心となるシンボリックな大空間となっている。この大空間な「エコヴォイド」をいかに照明するかというのは課題であった。吹き抜けの起点となる1階の床面を明るく照らすためと吹き抜け空間を全体に包みこむ光を工夫した。1階には天井面に、また床面にアッパーライトとして、線的で面的な照明を配してすっきりとさせている。加えて最上階に補助の照明を視界に入ら ないよう設置することにより、その1階床面からのアッパーライトであたかも頂上部まで照らされているような解放感を感じられる空間となっている。最上階か ら垂らされた蔦の葉も反射光によって照明し、アトリウム全体で落ち着いた安心感のある光空間を実現した。
エコヴォイド 1階を望む

エコヴォイド 最上階を望む
現代建築の流れの中で、今回のプロジェクトはどのような位置づけとお考えですか? サステイナビリティー、社会、環境、技術などの視点からお答え下さい。

今回のプロジェクトは、区庁舎と市民が、新たに作られた森を通じて相互に信頼と安心感で結ばれる新しい形の公共建築である。3.11の震災以来、非常事態が起こることへの不安や緊張感を人々が意識下に抱え、防災に対して敏感になっている。そんな人々にとって調和のシンボルであると共に安心、安全で自然を感 じられるコミュニティとしての役割を担うものとして作られた建築である。照明は連続的な緑を配し緑と統合した建築へ自然の美しさを生かした安らぎを得られる光環境を実現した。地域に包まれた人々の生活と活動を、建築に同化した光により潤いを与え、都市空間の中の光のオアシスとして位置付けた新しい光の提案建築であると考える。
1階 としまセンタースクエア 区民広場方向

1階 アトリウムフロア通路
地下2階 地下鉄メトロエントランス
Eメール インタビュー:Japan-architects.com
豊島区役所新庁舎(としまエコミューゼタウン)
2015
東京

照明デザイン
ALG 建築照明計画株式会社

照明デザイナ-
小西武志・小西美穂

建築設計
日本設計
隈研吾建築都市設計事務所

構造設計
日本設計・大成建設

設備エンジニア
日本設計

ランドスケープデザイン
ランドスケープ・プラス/平賀達也

施工会社
大成建設

照明器具
株式会社EPK、東芝、パナソニック

サインデザイン
テラダデザイン/寺田尚樹・平手健一

敷地面積
8,324.91 ㎡

建築面積
5,319.74 ㎡

延床面積
94,681.84 ㎡

写真
川澄・小林研二写真事務所